2012 Fiscal Year Research-status Report
海洋「微生物ループ」への有機物供給メカニズム:名脇役はだれ?
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24710005
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大林 由美子 横浜国立大学, 工学研究院, 研究教員 (60380284)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 微生物ループ / 物質循環 / 海洋微生物生態系 / 生物間相互作用 / 有機物 / 海洋細菌群集 / 細胞外酵素 / 原生生物 |
Research Abstract |
海洋の「微生物ループ」は、地球表層の物質循環経路の一つとして、物質循環研究の視点からも生態系解析の視点からも重要性が認識されているにもかかわらず、その実態には把握されていない部分が多い。本研究は、「微生物ループの燃料となる有機物の供給において、細菌群集だけでなく、その捕食者なども含めた微生物ループ全体で、有機物を“細菌が利用できる形”に変換し、細菌を養っているのではないか」という仮説をたて、微生物ループへの有機物供給に対して“細菌群集”、“細菌以外の生物”、“生物間相互作用”がどのように寄与しているかを示すことを目指している。 そこで、海水中の微生物群集によるタンパク質分解を追跡する実験を行った。大型粒子を採水時に除去したのみの未濾過海水および濾過により細菌以外の生物(原生生物など)を取り除いた海水のそれぞれに、有機物の固まりである微生物遺骸を分解基質として添加したマイクロコズムを作成して暗所に置き、添加した微生物遺骸由来のタンパク質が分解される様子を経時的に追跡した。その結果、原生生物も細菌群集も含む未濾過海水の系では、10日目以降、検出されるタンパク質が激減したのに対し、原生生物を取り除いた海水(細菌群集は含む)を用いた系では、検出されるタンパク質は減少するものの30日目においてもかなりのタンパク質が残存していた。このことは、一般に有機物分解者と考えられている細菌群集だけでなく、原生生物なども、なんらかのかたちで海水中のタンパク質分解に多分に貢献している、という可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
必要備品として購入したマイクロプレートリーダーの機種の選定および関連の予備実験に予定よりもやや時間を要したため。ただし、今後の研究の推進に大きな影響を及ぼす程の遅れではない。
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Strategy for Future Research Activity |
海洋の微生物生態系における、細菌群集の持つ有機物分解・変換能力と、有機物分解・変換過程への原生生物の貢献を、それぞれ評価することを目指す。細菌群集の有機物分解能力については、天然海水中の細菌群集に対して抗生物質を適用した調査を行う。また、海洋から分離した細菌株の有機物分解特性の調査も併行して行う。原生生物については、分離株を用いた実験を中心とし、細胞外への有機物分解酵素放出の有無、および、その栄養環境や成長段階との関係を調べる。さらに、細菌群集を含む海水に原生生物の分離株を添加した実験系を作って水中の有機物分解酵素活性・特性の変化を調べることにより、有機物分解過程と生物間相互作用の関連についての情報も得る。 原生生物株を用いた実験については、愛媛大学および福井県立大学の研究者に協力を得て実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(4 results)