2013 Fiscal Year Annual Research Report
陸域炭酸塩中の炭素安定同位体による環境情報保存のオンサイトでの解明
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24710011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
栗崎 弘輔 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70507839)
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Keywords | 古環境情報 / 炭素安定同位体比 / 同位体平衡 / 石筍 / 古植生 / 古気温 / 大気汚染 / 絶対年代 |
Research Abstract |
洞内に生成する石筍は鍾乳石の一種で、数十~数万年という長い時間をかけて生成する陸域の炭酸塩である。成長した間に周囲の環境由来の成分が含まれており、年代と共に成分分析をすることで、歴史にない過去の情報を復元することが可能である。炭酸塩の主成分である炭素安定同位体は地表の植生に大きく依存する。しかしながら情報保存のメカニズムは明らかとなっていなかった。そこで本研究では過去の地表の植生(森林、草原)を石筍から読み取るため、情報保存のメカニズムを炭素安定同位体比の同位体平衡を、実際に洞内で沈殿生成実験、あるいはコンピュータシミュレーションを用いて解明を試みた。 研究の結果、地表の有機物質・二酸化炭素の炭素安定同位体比は地表の植生を反映しており、天水由来の地下水を通って地下の洞内まで伝わるメカニズムを明らかとすることができた。また酸素安定同位体比など、同位体比は生成当時の気温に依存することが知られているが、炭素安定同位体比の場合植生変化による変動は気温、PCP(Prior Calcite Precipitation)の変動による影響よりも十分大きく、植生変化復元の素材として有用であることが確かめられた。また石筍保存時の同位体平衡定数を解明することができ、過去数十~数万年の植生変化を石筍から読み取ることが可能となった。秋吉台(山口県美祢市)の他、沖縄県、岩手県、国外の試料についても検証を行い、本研究で明らかとなった過去の植生復元の手法がほぼすべての地域で適用できることを明らかとした。そのため石筍の植生情報保存のメカニズム、および情報復元のスキームを科学的に確立できた。
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