2013 Fiscal Year Research-status Report
大気および大気液相中におけるメチル水銀濃度の測定と濃度変動要因の解明
Project/Area Number |
24710026
|
Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
丸本 幸治 国立水俣病総合研究センター, 環境・疫学研究部, 主任研究員 (90371369)
|
Keywords | メチル水銀 / 水銀 / 降水 / 分割採水 / 光化学反応 |
Research Abstract |
降水を介した地表面へのメチル水銀の沈着過程を調べるため、降水を降り始めから降り終わりまで3~5段階に分けて採水する一降雨分割採水を実施し、得られた試料中のメチル水銀濃度をジチゾン抽出-エチル化ホウ素ナトリウム誘導体化-ガスクロマトグラフ-原子蛍光法にて定量した。なお、本分析法による検出限界濃度(3σ)は0.94 pg/L(試料量200 ml)であり、分析に使用する試薬や容器の徹底的な洗浄などにより従来の値5 pg/L(試料量400 ml)に比べて大幅に改善した。そのため、数十 mlから100 ml程度の降水試料しか得られなくても低濃度のメチル水銀を定量できるようになった。降水時のメチル水銀の濃度変動は、降水の初期に濃度が高く、中期に低くなる傾向がみられた。降水の後期には再び濃度が上昇することもあったが、天気図や地上風向の変化などから初期から中期に降水をもたらす低気圧(前線)とは別の低気圧(前線)が通過したことによるものと考えられた。一方、降水時の総水銀の濃度変動はメチル水銀とは異なり、一定の傾向は見い出せなかった。一方、降水を模擬した溶液(塩酸にてpH 4に調整)にメチル水銀を500 pg/Lとなるように添加し、野外にて日射(光)を当ててその濃度変動を調べた。その結果、8~17%ほど濃度が低下したことから、日射によるメチル水銀の消失を確認した。また、酢酸と塩化水銀をそれぞれ10 mg/L、10 ng/Lとなるように模擬溶液に添加し、野外にて日射(光)を当てた試料についてメチル水銀を分析した結果、数 pg/Lのメチル水銀が検出された。しかしながら、検出限界濃度に近いため、再実験が必要である。今後、他の化学物質を共存させるなど実験条件を検討しながら、メチル水銀の消失過程について調べるとともに、無機水銀のメチル化反応についても検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
霧水サンプラー2台によるサンプリングを数回試したが、得られる試料が少なく、化学成分の分析ができなかった。また、昨年度は霧の発生回数も少なく、充分な検討が行えなかった。メチル水銀の生成・消失過程を調べる実験についても今後さらにデータを蓄積する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、一降雨分割採水により降水中メチル水銀の降雨時の濃度変動に関するデータを蓄積し、大気中メチル水銀の降水への取り込み過程と降水中におけるメチル水銀の生成過程に関する知見を得る。また、霧や露についてもサンプリング地点の変更とサンプリング方法の見直しを行い、メチル水銀濃度のデータを得る。一方、降水を模擬した溶液に有機酸等の化学物質と無機水銀を共存させて光照射実験を行うことによりメチル水銀の光生成反応に関する知見を得る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分析装置が順調に稼働し、装置の維持に必要な消耗品を購入する必要がなかったため メチル水銀および水銀のメチル化に寄与する可能性のある有機物の分析に必要な試薬および試料保存容器、並びに実験器具を購入するために200,000円を使用する。また、次年度使用額194,950円が生じたため、分析装置の維持に必要な消耗品に使用する。メチル水銀等の分析にあたっては実験器具の洗浄作業および分析作業に多大な労力を要するため、実験助手1名の賃金(5,000円/日×10日間/月×12ヶ月= 600,000円)を計上する。研究協力者である広島大学の佐久川弘博士と竹田一彦博士の元で実験および研究打合せを行うためと、研究成果を学会等で発表するために旅費として100,000円を使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)