2013 Fiscal Year Research-status Report
家畜伝染病防除のための消石灰散布が生態系に及ぼす影響
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24710034
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
森 美穂 近畿大学, 農学部, 講師 (70581031)
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Keywords | 消石灰による殺菌効果 |
Research Abstract |
消石灰の土壌細菌への影響を明らかにするために、in vitroにおける消石灰の殺菌試験法の構築を試みた。殺菌試験でよく用いられる一般細菌4株(Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Bacillus subtilisおよびStaphylococcus aureus)を飽和消石灰溶液で0~10分間反応後、リン酸緩衝液(pH 7.0)で中和と希釈を行った。その後、SCD寒天培地上に100 μL塗抹し、28℃で24時間培養後に出現したコロニー数を計測した。また、土壌細菌群を用いた殺菌試験は、殺菌対象として土壌1 gを使用し、培養にLB培地を用いたこと以外は上記と同様の方法で実施した。一般細菌を用いた試験で、処理後の中和が完全に行われていることが確認でき、結果の再現性が得られたことから消石灰の殺菌試験法が構築できたと判断した。最も殺菌効果がみられた菌株はE. coliであり、1分以内に4 Log以上の菌数減少がみられ、S. aureusでは殺菌効果はみられなかった。土壌細菌群の試験では、用いた土壌により殺菌効果が異なっており、約1 Log程度菌数が減少する傾向がみられた。土壌のpH、水分含量と殺菌効果には相関は認められなかった。土壌細菌群を用いた殺菌試験から得られた各土壌の優占菌上位3種(消石灰により10分間殺菌された土壌から得られた菌と、未殺菌土壌より得られた菌)を16S rDNA塩基配列に基づいて同定した結果、殺菌前後で菌叢が大きく変化していることが確認できた。また、昨年度に引き続き、屋外に消石灰を1回もしくは複数回散布した土壌のpHと生菌数の変化を調査した結果、それぞれ約15ヶ月と約3ヶ月経過後も未散布土壌と比較して高い値を示し、生菌数に差異は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度予定していたin vitroにおける消石灰の殺菌試験では、方法の構築と土壌を用いた評価を実施することができた。これまでの消石灰の殺菌濃度に関する報告は、実験室レベルで、対象とする菌も口腔内細菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌などの病原性菌しか検討されておらず、土壌細菌に対する影響に関する報告例は存在していない。本研究により、土壌細菌群と単離した土壌細菌に対する消石灰の殺菌効果を検証することで、消石灰により環境土壌中の菌叢が変化している可能性を示すことができた。屋外における消石灰散布による影響調査では、pHや生菌数測定を引き続き行い、長期間経過後の影響を評価することができたが、土壌菌叢変化の実験で、効率の良いDNA抽出法の確立には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は土壌の性質と殺菌効果の関係性を明らかにするために、検討する土壌の種類を増やして消石灰による殺菌試験を実施する予定である。また、屋外土壌での消石灰散布実験では長期間経過後もpHが高いままであることから、引き続き調査が必要であると思われる。年度の前半で土壌からの効率の良いDNA抽出法を確立し、後半で新たな屋外土壌に消石灰を散布して、PCR-DGGEを用いた菌叢解析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年1月22日に出産したため、産後休暇と育児休暇(平成25年3月20日から)取得した。そのため、当初の研究計画で予定していたPCR-DGGEによる菌叢解析に関する実験を遂行することができなかった。 消石灰散布による土壌中の菌叢解析で、経時的にサンプリングした土壌からDNAを抽出するためのキットや試薬を購入する。また、16S rDNAや18S rDNA塩基配列の決定の効率をあげるため、DNAシーケンス分析を委託する予定である。
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Research Products
(2 results)