2013 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類動物細胞の生理機能を利用した鉄鋼資材の環境負荷度評価
Project/Area Number |
24710035
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
小川 亜希子 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (90455139)
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Keywords | 影響評価手法 / 鉄鋼 / 生体金属 |
Research Abstract |
鉄鋼には、亜鉛やニッケルといった生体機能維持に重要な金属(生体金属)が多数使用されており、鉄鋼からの生体金属類が環境に及ぼす影響が懸念されている。しかし、それらの有効な評価法は確立されていない。本研究では、哺乳動物細胞の生理機能を用いて鉄鋼資材のための簡便な環境負荷評価法の構築を行った。平成24年度には、評価法で使用する細胞と細胞機能の選定を行い、チャイニーズハムスター肺由来細胞V79の細胞増殖を指標とした評価系を構築した。平成25年度には、前年度に構築した評価系を用いて鉄鋼資材の環境負荷度を評価した。 鉄鋼試料としてSUS304、SPCCおよびSK4を使用し、対照として鉄板を使用した。まず各々の試料をV79の培養液に入れて共培養を行った。培養後、細胞は回収して細胞増殖を計測し、培養液中の金属濃度をICP-AESで測定した。また、鉄鋼試料については、蛍光X線分析装置で表面組成を計測し、レーザー顕微鏡で表面状態を観察した。結果、増殖抑制効果はSK4とSPCCが顕著であり、SUS304は鉄板よりも少なかった。この時の鉄鋼試料表面の形状は、培養前と比較すると、SK4、鉄板およびSPCCでは表面の凹凸が大きくなっており、腐食が進行していたと考えられる。一方、SUS304はほとんど腐食していなかった。また、いずれの鉄鋼試料についても、培養前後の表面元素組成変動は1%未満であった。以上のことから、V79の増殖抑制は、鉄鋼の腐食が進行するにつれて大きくなり、腐食に伴って鉄鋼(表面)から培養液中に溶出される金属が影響を与えていることが分かった。また、溶出した金属の中で、マンガン溶出量が多いと細胞増殖抑制作用が高い傾向にあることが分かった。
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