2013 Fiscal Year Research-status Report
生物多様性第ニの危機の全国評価-耕作放棄地の拡大に注目して-
Project/Area Number |
24710038
|
Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
大澤 剛士 独立行政法人農業環境技術研究所, 農業環境インベントリーセンター, 任期付研究員 (40554332)
|
Keywords | 耕作放棄地 / レッドデータブック / レッドリスト / 自然史資料 |
Research Abstract |
昨年度までに整備した地域2次メッシュ(約10km四方)ごとの理論的な耕作放棄面積地図と、35都道府県以上でレッドデータブック、レッドリストにリストされている”元”普通種(23種)の地域2次メッシュ単位分布データを重ね合わせ、定量的な解析を実施したところ、”元”普通種の分布記録が存在するメッシュの耕作放棄面積は、全国平均に比較して統計的に有意に大きいことが示された。この傾向は、全農地面積を考慮しても有意であったことから、”元”普通種の分布域と耕作放棄地が広がっている地域は重複していることが示唆された。さらに選定された”元”普通種23種の環境要求性について、入手済みのレッドデータブックおよび図艦等を利用した調査を行ったところ、これらの多くは湿地や水路といった湿潤な環境を好むことが明らかになった。耕作放棄地の広がりは、絶滅危惧植物の分布に何らかの関係を持っていることは確実と考えられる。ただし、現状では時系列の変化を追うことはできていないため、放棄が広がったことによって対象種が負の影響を受け、絶滅危惧となったのか、逆に正の影響を受け、生息範囲が広がってきたのかを切り分けることはできなかった。 放棄が絶滅危惧植物に及ぼす影響について、さらに詳細な解析を進めるため、都道府県の博物館において行った標本調査のうち、特にレコード数が多かった数県に絞り、”元”普通種6種について、1kmメッシュ(約1km四方)の分布データの作成に取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当所の予想どおり、全国規模で耕作放棄地と絶滅危惧植物の分布域が重複していることを示し、それを学会発表および査読付き論文として公表することができた。ただし、放棄によって絶滅危惧植物が正の影響を受けているのか負の影響を受けているのか切り分けられないという課題が見つかったため、当初予定にはなかった1km単位での解析に取り組むここととなった。この解析は計画を遂行した上での発展課題であり、予定以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
耕作放棄地の地図については、公開に向けたクオリティコントロールを実施し、予定どおり利用性の高い形で公表する。生物については、10km単位での自然史資料のリソースはおおむね収集でき、解析用データも整備できたが、1kmメッシュでの解析に向けてウエイトは下げつつも、自然史資料の収集は継続する。それら追加で入手したデータを利用し、放棄地が絶滅危惧植物に対して正の影響を及ぼす場合と、負の影響を及ぼす場合の切り分けに取り組む。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PCおよび専用ソフトの高額機器を購入しなかった為。 該当機器を購入予定
|
Research Products
(3 results)