2013 Fiscal Year Research-status Report
国際自然保護区の共同管理を対象とした自然保護ガバナンスの発展的研究
Project/Area Number |
24710041
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 俊徳 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任助教 (30612452)
|
Keywords | 国際自然保護区 (TBPA) / 自然保護ガバナンス / ネットワーク型TBPA / ユネスコエコパークネットワーク / ラムサール条約登録湿地関係市町村会議 / Micronesia Challenge / EAAFP (渡り鳥ネットワーク) |
Research Abstract |
本年は「ネットワーク型TBPA」に焦点を当て、文献収集と現地調査(利害関係者に対する聞取り調査及び参与観察、巡検)を行った。ネットワーク型TBPAについては、一年目の成果から「地理的に近接してはいないが、同様のテーマを有する保護区のネットワークやパートナーシップ」と定義したが、本年はさらに踏み込み、① 国際的な制度に基づく保護区のネットワーク、② 渡り鳥や越境性動植物の保護を目的としたネットワーク、の二つに分類し、前者に関しては、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議とユネスコ生物圏保存地域の国内ネットワーク(J-BRnet)を、後者については、渡り鳥の保護区ネットワーク(EAAFP)を対象に、その統治構造の現地調査を行った。 とりわけ、「ラムサール条約登録湿地関係市町村会議」や「ユネスコエコパークネットワーク」(J-BRnet)については、事務局機能(人員、予算、実施事業)をはじめ、役割分担やコストの負担方法等について詳細なデータを入手することができ、日本生態学会で口頭発表を行い、学会誌への掲載も決定するなど一定の成果を収めることができた。 時間の制約から、当初予定していたワッデン海(ドイツ)への現地調査を行うことができなかった一方、国内レベルのネットワーク型TBPAの実態について詳細に調査することができた点は大きな成果であった。 また、国際コモンズ学会、日本公共政策学会において、自然保護ガバナンスの理論的な側面について口頭発表を行い、有益なコメントや示唆を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は時間の制約から、「地理的に近接した保護区」(従来型のTBPA)の事例として想定していたワッデン海(ドイツ)の現地調査を行えなかったことが悔やまれるが、一方で、ネットワーク型TBPAの調査は大きく進展した。 例えば、渡り鳥ネットワークとして知られるEAAFPや北太平洋における島嶼の保護区ネットワークであるMicronesia Challenge、また、ラムサール条約やユネスコ生物圏保存地域の国内レベルにおけるネットワークの統治構造について現地調査からデータを入手することができた。これらネットワークの統治構造は図書や論文等には記載されておらず、人員や予算、実施事業等について詳細に情報収集できたことは、大きな成果だったと考える。 本調査結果は、「ネットワークを統御する:国際自然保護規範を対象とした重層的環境ガバナンスの比較研究」と題して、日本生態学会(広島国際会議場)で口頭発表を行い、『日本生態学会誌』への掲載も決定している。また、国際コモンズ学会と日本公共政策学会において、自然保護ガバナンスの理論的側面に関する口頭発表を行い、有益なコメントや示唆を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究とりまとめとなる本年は、成果発表に主眼を置く。すでに『日本生態学会誌』への掲載が決定しているネットワーク型TBPAの分析論文に加え、TBPAの事例研究についてまとめた論文を国内外の学会誌に1-2本発表することを想定する。 また、本研究から得られた自然保護ガバナンスの発展的な成果については、2014年11月にオーストラリア・シドニーで開催される世界最大規模の自然保護会議であるWorld Parks Congressにて口頭発表することを目標とする。また、必要に応じて、学会やセミナー、ワークショップなどで研究成果を発表し、研究者等からのコメントを得る機会を増やす。その際、国際自然保護区が世論としても注目に値する仕組みであることから、研究者のみならず、メディアや市民も対象に研究成果の発表を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ワッデン海(ドイツ)への現地調査を予定していたが、日程が合わずに断念したため次年度使用額が生じた。 最終年度であるため、これまで蓄積してきたネットワーク型TBPAにおけるガバナンスを核とした研究計画に変更し、国内事例を中心に現地調査を増加させる。また、海外での成果発表も視野に研究計画を増強する。
|