2012 Fiscal Year Research-status Report
エージェントベースモデルによる統合的なエネルギー需給・資源の将来シミュレーション
Project/Area Number |
24710046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
松本 健一 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (00534570)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エージェントベースモデル / エネルギー資源 / エネルギー需給 / シナリオ分析 / 化石燃料 |
Research Abstract |
本研究の目的は、エージェントベースモデルであるACEGES(Agent-based Computational Economics of the Global Energy System)モデルを用いて、将来にわたっての地球規模のエネルギー需給・資源量のシミュレーション分析を行うことである。平成24年度は、まずこれまで実施してきた研究のより詳細な分析を行った。具体的には、石油資源を対象として、石油市場において影響力を持つ国の分析(特に各国の石油生産量と輸出量の側面に着目して)や将来の市場支配力の変化などである。また、天然ガスについても同様の分析を行った。 次に、ACEGESモデルへの非在来型エネルギー資源の組み込みを行った。近年、在来型資源の枯渇にともない、非在来型資源の重要性が増してきている(例えば、カナダのオイルサンドやアメリカのシェールガス)。このような非在来型資源がエネルギー市場(石油や天然ガス)に供給されることにより、将来の世界のエネルギー需給がどのように変化するのかを明らかにした。また、非在来型資源は在来型資源と同様に偏在性がある。そこで、非在来型資源が生産されることにより、エネルギー市場における各国の影響力がどのように変化するのかについて明らかにした。 ACEGESモデルでは、エネルギー需要に関しては国際エネルギー機関などが発表している既存のシナリオに大きく依存してきた。そこで、年度の終盤より、モデルへのエネルギー価格情報の明示的な組み込みを行なっており、エネルギー価格とエネルギー需要の関係の精緻化に取り組んでいる。平成25年度は引き続きこの課題に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書における平成24年度の研究計画は、(1)石炭など未着手の在来型エネルギー資源の分析、および(2)非在来型エネルギー資源のモデルへの組み込み、の2点であった。 これまで行なってきた研究成果を学術雑誌などで発表した際に、査読者などから上記の(2)および、エネルギー価格のACEGESモデルへの反映が特に重要であるとの指摘を受けた。そのため、上記の(1)の研究を取り組む前に(2)の研究ならびに価格情報の反映を行った。 したがって、当初の予定にあった(1)については未着手である。その一方で、申請書では平成25年度に計画していたエネルギー価格に関する研究を実施しているため、全体としてはおおむね順調に研究が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的を達成するために、申請書において平成25年度の計画に示した研究、および平成24年度の当初計画において実施しなかった研究に取り組む。 まずは、現在取り組んでいる、モデルへのエネルギー価格情報の組み込みに基づく、個別エネルギーモデルにおける各国の需給両面の意思決定の精緻化である。具体的には、(a)需要:エネルギーや関連する政策・技術の動向、エネルギー価格・資源量・供給可能性などとエネルギー需要の関係の調査とそのモデル化、(b)供給:(a)で検討した諸要素と各国のエネルギー資源の供給・輸出に関する戦略と意思決定方法の関係の調査とそのモデル化、(c)需要と供給の相互作用の検討とそのモデル化およびシミュレーション分析、である。これの研究については、統計資料や文献・ヒアリング調査などから検討を進め、順次モデルの中に組み込んでいく予定である。 次に、石炭などの未着手の在来型エネルギー資源のモデル化・分析である。これは、既に完成している石油や天然ガスの個別モデルに基づいて構築していく。 そして、完成した個別モデルの結合による統合的なエネルギー資源の分析を実施する。具体的には、(a)エネルギー間の代替関係の整理、(b)各エネルギー資源のコスト変化の整理、を行い、統合的なシミュレーション分析につなげる。 以上の手順は申請書に記載した当初の研究計画とは異なるものであるが、研究目的を達成するために優先順位の高いものから(当初の想定から変更した)順番で実施していくための変更である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、まず研究推進に必要な統計データなどの整備を引き続き進めていく。 8月には2~3週間の予定でイギリス・ロンドンのロンドンメトロポリタン大学を訪問する。ここでは、研究協力をしているVlasios Voudouris氏らとの打ち合わせや研究情報の収集などを行う。 また、これまでの研究成果の国内外の学会発表や論文投稿を予定している(国内発表については、エネルギー・資源学会での発表が決定しており、また別途論文も投稿準備中である)。
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Research Products
(8 results)