2013 Fiscal Year Research-status Report
南極の海洋生態系の保全のための国際協力:制度間の相互作用とその調整
Project/Area Number |
24710050
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大久保 彩子 東海大学, 海洋学部, 講師 (40466868)
|
Keywords | 国際制度 / 南極海 / 海洋環境 / 海洋生物資源 / 海洋政策 / 制度間相互作用 |
Research Abstract |
本研究では、南極条約協議国会合(ATCM)、南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)、国際海事機関(IMO)などの諸制度の間で生じてきた相互作用を特定するとともに、制度間の相乗効果を強化し、悪影響を回避・軽減するためにどのような対応がとられたのか、相互作用が制度の有効性にどのような影響を及ぼしたのかを分析した。 ATCMとIMOとの間では、南極海の環境保護と海洋安全の確保を目的とした極域航行指針の策定にあたって、両制度の管轄範囲が重複していることから制度間で競合が生じた。しかし、指針の策定過程を経てIMOの専門性や適格性がATCMにより学習されることで、制度間の調整が図られたことが分かった。その後の重油規制ではIMOの規制権限がATCMにより明示的に認められたが、これは過去の経験を基礎とした制度間関係の安定化として評価できる。ともに南極条約体制の一部をなすATCMとCCAMLRとの間では、特別保護海域の設定に関して、両者の権限の範囲を詳細化・明確化する形で調整が図られた。海洋管理においてはこれまで統合的管理の考え方が重要視されてきたが、上記のような事例では、統合的な視点からの政策の策定よりも、むしろ、各機関の権限の詳細化・明確化という、いわば制度間の「棲み分け」が進んでいることが指摘できる。また、国際的な海洋生物資源管理の先駆的事例とされるCCAMLRの有効性は、他の地域漁業管理機関で構築された科学的知見や政策手法の学習により強化されてきたことが分かった。 国際制度間の調整に関する理論枠組みとしては、現在のところオーバーチュアが提唱したInterplay Managementの分析枠組みが有用であるが、上記のような国際制度間の「棲み分け」や、相互作用が制度の有効性に及ぼす影響を分析するためには、改良の余地がある。 こうした成果の一部は、学術論文誌および学会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IMOの極域航行規則に関しては、ATCMとIMOとの間の相互作用の調整プロセスを詳細に検討した。また、従来のCCAMLRの国際交渉(年次会合等)に出席してきた専門家や非政府組織メンバー等を対象としたインタビュー調査を実施した。これらの結果と前年度までに得られた知見をもとに、学術誌に論文を発表することができた。この点は、当初の計画以上に進展しているといえる。 一方で、理論枠組みについては、先行研究のレビューにもとづき、現時点で最も汎用性が高いと思われるオーバーチュアの枠組みを援用したが、さらに改良した枠組みを構築するまでには至らなかった。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、対象制度間の相互作用を詳細なプロセストレーシングにより特定し、相互作用の特徴とアクターによる調整行動を分析する。南極条約における南極大陸の領土権に関する規定内容と国連海洋法条約における沿岸国の権利義務の規定内容の双方に対応していくための国レベルの調整行動にも着目する。 海洋生物資源の管理に関しては、これまで対象としてきたCCAMLRと国際捕鯨委員会(IWC)に加え、ワシントン条約(CITES)における付属書掲載提案がCCAMLRの保全管理措置の交渉にどのような影響を及ぼしたのか、という点にも着目していく。 また、研究の中間的な成果を学会等で発表し、意見交換を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、CCAMLRの国際交渉に関してオーストラリアでのインタビュー調査を行う予定であったが、米国のワシントンDCを拠点とする非政府組織等の専門家および科学者に対するインタビュー調査と米国国立公文書館での資料収集を同時期に実施することできた。 一方で、研究成果の中間とりまとめの発表として、2014年8月にドイツ・フランクフルトにて開催予定のFourth Global International Studies Conferenceにおける発表申し込みが受理された。 以上から、当初計画のオーストラリア出張は行わず、次年度における研究成果の発表のための出張旅費にあてることとした。 次年度使用額は、2014年8月にドイツ・フランクフルトにて開催予定のFourth Global International Studies Conferenceでの研究発表のための旅費として使用する計画である。
|
Research Products
(4 results)