2014 Fiscal Year Research-status Report
南極の海洋生態系の保全のための国際協力:制度間の相互作用とその調整
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24710050
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大久保 彩子 東海大学, 海洋学部, 講師 (40466868)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際制度 / 南極条約体制 / 資源管理 / 環境保全 / 制度間の相互作用 / 国連海洋法条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、南極地域を対象とした諸制度で構成される南極条約体制(ATS)と、国連海洋法条約(UNCLOS)を中心としたグローバルな国際制度との間の相互作用を特定・分析した。また、南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)と、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)や他の漁業資源管理機関(RFMO) との間の相互作用が制度の有効性にもたらした影響について分析した。 ATSとUNCLOSの相互作用に関しては、1970年代から80年代初頭にかけての第三次国連海洋法会議における南極海の位置づけを巡る議論、および、国連総会におけるATSの排他性への指摘と国連にて南極問題を扱うべきとする議論が、ATSの主要メンバー国によるATSの堅持と安定化をめざす行動を促進したといえる。また、CCAMLRの主要対象種であるマジェランアイナメの資源水準の悪化を受けて、CITESにおいて同魚種の附属書II掲載が提案されたことが、CCAMLRにおける規制強化の動きを促進したと考えられる。こうした分析結果の一部は本年度8月に開催された国際学会において発表した。 上記のような事例と、平成25年度に実施したIMOの事例分析の結果をあわせて考えると、ATS以外の国際制度のもとで南極の諸問題への対応の必要性が提起されることにより、ATSにおいて同制度の正当性を強化する必要性が認識されるとともに、ATSと他制度との間の管轄領域の明確化が促進されるという効果が複数の事例で観察可能である。 このように複数の国際制度間の相互作用の結果として規制の強化が促進されたり、制度間のいわば「棲み分け」が明確化される過程についての理論的枠組みとしては、既存の制度間相互作用の概念枠組みを基礎としつつ更なる改良を加えていくことが必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度10月以降は健康上の理由により外国出張を実施できなかったため、予定していたインタビュー調査は延期することとなった。一方で、複数の国際制度間の相互連関のマッピングについては議事録や二次文献の分析から一定の進捗を達成することができ、また8月には国際学会での発表を行うことができた。以上のことを踏まえ、達成度について、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
制度間の相互作用がもたらす国際制度の管轄領域の明確化(棲み分け)について説明するための理論枠組みの改良を行っていく。同時に、米国およびオーストラリアをはじめとする南極条約体制の主要メンバー国、南極条約体制に対する批判的態度を転換したマレーシア等、近年南極条約体制へのコミットメントを強化しつつある中国など各アクターの行動について精査し、相互作用の過程を精査していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度10月以降、健康上の理由により飛行機移動を伴う国外出張ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国外における資料収集とインタビュー調査を次年度以降に実施することを計画している。
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Remarks |
本年度8月に実施した国際学会での発表については平成25年度の研究実施状況報告書に「発表確定」として登録済みである。
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