2013 Fiscal Year Research-status Report
船舶からの大気汚染物質放出規制海域の効果と評価に関する研究
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24710052
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
岡田 啓 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (40450762)
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Keywords | 海運 / 大気汚染物質 / 大気汚染物質創出規制海域 / 定量分析 |
Research Abstract |
本研究は、船舶起因の大気汚染物質を削減するため日本が大気汚染物質放出規制海域(Emission Control Area、ECA)を設定した場合における効果と影響を分析し、どのように日本にECAを設定すべきなのかという政策インプリケーションを導き出すことを目的としている。なお、本研究は定性的な分析よりも、ECAのモデル化を行い、数値シミュレーションを開発することで、ECAの効果について分析を行うことを試みている。 上記の目標を達成するために2013年度は、ECAの簡易的な理論モデルを構築し、精査を行った。そのモデルに基づき、ECAの最適範囲に関する条件を導出した。その範囲の最適条件とはECAの範囲を限界的に拡大した際の限界便益と限界費用が一致するところがその範囲であるというものである この簡易モデルの数値シミュレーションを実施するべく、シミュレーションの2つのパートの構築を行った。第一のパートは船舶から排出される大気汚染物質の拡散に関するシミュレーションである。ECAの簡易モデルの中ではこの大気汚染物質の拡散に関する関数が概念的に使用されている。これを明確にするべく、プルームモデルを利用した大気汚染物質の偏微分方程式数値シミュレーションを作成した。この数値シミュレーションにより、大気汚染物質の挙動が明瞭に理解できるようになっている。第二のパートは船舶の動きに関するシミュレーションである。現在は船舶の動きをマルチエージェントシミュレーションにてシミュレートすることを模索している。このマルチエージェントシミュレーションについては現在も開発途中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、次に示す3つのテーマについて研究を行い、定量的な視点からどのような制度にてECAを日本に設定すべきなのかを分析することとしている。3つのテーマとは①大気汚染物質の削減政策に関する既存文献のサーベイ、②最適なECA設定範囲と日本経済への影響に関する定量分析、③大気汚染物質排出の少ない船舶へのシフトを促す政策の定量分析である。 2013年度は主に②を中心に研究を行った。簡易的な理論モデルの精査を行った。そしてその理論モデルを数値シミュレーションに移行する部分において現在試行錯誤を続けている。大気汚染物質の数値シミュレーションについては多くの既存研究等が存在するのでそちらを参考に作成をしている。他方、船舶のシミュレーションに関しては、技術的な問題点がいくつか存在しており、それを解決するべく他分野の調査やシミュレーション言語の習熟などを行っており、それらに時間を要してしまっている。この点において、当初の研究計画よりも進行は遅れていると言える。だが、シミュレーションに関して見通しがたっている部分もあるため、今年度の展開によりこの遅れを取り戻すことは可能であると期待できる。そして、③に関連しそうな既存文献などを集め、現在読み込んでいる最中である。なお、①については2012年度中に終了させている。 研究発表の実績としては、2013年7月にブラジルのリオデジャネイロで開催された第13回世界交通学会にて、研究成果を発表した。学会報告用の論文は、査読による評価によってSelected-paperに選定された。
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Strategy for Future Research Activity |
前述にもある通り、本研究は大きく3つの事を行う予定であるが、本年度は②最適なECA設定範囲と日本経済への影響に関する定量分析、特に数値シミュレーションを完成させ、そのまとめを中心に行う。まず、簡易モデルのシミュレーションをマルチエージェントシミュレーションにて行いECAの効果について定量的な評価を実施する。このシミュレーションを実施することにより理論モデルで導出された条件が、実際ではどの程度の距離に相当するのか把握することができる。これにより、現在世界のいくつかの地域で実施されているECAの設定範囲が適切であるのか否かの評価尺度を作成できうると考えている。同時に、ECA設定範囲の変更により船舶がどのような行動を取るのかについても分析することができるようになる。シミュレーションの結果を論文としてまとめ、日本の学会にて発表を行うことを予定している。発表する学会は日本交通学会か日本海運経済学会を検討している。これらの学会で発表することにより研究内容について他の研究者より意見を頂き、不足部分の情報を交換することで、よりよい論文を執筆する基礎情報とする。その後、海外のジャーナルに投稿するようにする。 続いて、ECA導入による日本経済への影響に関する定量的な分析のための準備も再度開始する。ECAを日本の海域に設定することにより、船舶事業者は対応策をとり、輸送サービスへの価格転嫁などを検討すると考えられる。このようにECAが日本の物流コスト、ひいては日本経済に(大きいとは思われないが)どの程度の影響を与えるのかを試算する。この研究も日本の学会にて発表を行うように努力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の支出計画よりも旅費等が少額で済んだ。そして物品費が増えたものの、最終的に若干の差が生じた。 2014年度も引き続き、ECAの効果を定量的に把握するためにコンピュータシミュレーションを実施する。昨年度、エージェントベースシミュレーションのソフトウェアは購入済みであるので、今年度はそのシミュレーションを行うコンピュータを購入する予定である。さらに、理論モデルの数理的側面を支えるための数学関連ソフトウェアの購入を行う予定である。同時に、シミュレーションを含め研究に関する文献(論文・書籍)等が必要となる。これら文献に関する複写代や書籍代が必要となる。 本年度のシミュレーション結果を中心にまとめ日本の学会にて発表を行うことを、前述のように予定している。そこで、学会に参加するための旅費が必要となる。最後に、今年度実施した研究を英語で論文としてまとめ、来年度発表することを検討している。そこで、その論文の英語のチェック等に費用が生じる。
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Research Products
(1 results)