2012 Fiscal Year Research-status Report
気候変動で頻発している集中豪雨による都市域脆弱性評価と適応策
Project/Area Number |
24710053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
尾崎 平 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (40351499)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 気候変動 / 内水氾濫 / CSO / 適応策 |
Research Abstract |
本研究は、2050年を目標年次とし、都市域への水害影響、水質汚濁影響を評価する(脆弱性評価)プロセスモデルを構築することを目的としている。本年度が初年度であるため、2年目以降も活用する都市水害モデルの高度化ならびに、適応策の評価指標について収集・整理を行った。 1. 都市水害モデルの高度化について;2011年に発生した大阪市北区を中心とした都市水害を対象にモデルの構築・検証を行っていた(従来モデル)。しかしながら、従来モデルでは、複数の一部エリアにおいて、解析結果と実績浸水深の差が大きい箇所があった。そのため、1)道路形状や擁壁、中央分離帯等の道路構造物をより詳細に考慮、2)一部エリアの再開発に伴う下水道の雨水排除能力増大分の考慮、3)対象範囲内に対する一様降雨分布から、複数の雨量観測データを活用しティーセン分割法に基づくエリア別降雨分布を用いた上で、下水道ネットワークと地表面の氾濫解析を一体的に執り行った。その結果、以前よりも浸水実績と解析結果の関係が良好となり、解析精度の向上を確認した。また、被害額の算定に向け、建物主用途や商業データ、工業データ等のデータを収集・整理した。 2. 水環境への影響評価について;無降雨期間、降雨強度を複数設定し、その組合せによるシミュレーションから、無降雨期間が長く、降雨強度が増すと、雨天時の総放流負荷量が増大することを定量的に推定した。その結果を基に、無降雨期間と降雨強度の2変数と単位面積当たりの汚濁負荷の関係を図化し、汚濁負荷量増大の判定図を作成した。 3. 評価指標の類型化について;適応策に関する施策・技術・制度の類型化と評価指標の検討のために、ロンドンおよびニューヨークの(Climate change adaptation)を中心に、評価指標の整理を行った。評価指標は100以上の指標をピックアップし、指標群として整理、類型化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
都市水害モデルの高度化、評価指標の類型化のそれぞれにおいて、開発と研究が進展しており、当初計画の目標を達成している。 1) 適応策に関する施策・技術・制度の類型化と評価指標の検討について;指標群のピックアップ、大項目の整理は行った。今後、中項目以下の具体的な指標の類型化を行う。 2)都市水害・水環境影響推定モデルの構築について;都市水害モデル、水環境影響推定モデルとも構築することができた。都市水害モデルについては、平成24年度末に査読付き論文として掲載され、当初の目的である解析精度の向上が行えた。 以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に平成24年度に引き続き,評価指標の類型化を行い,それらの評価指標を算定するパフォーマンスモデルの構築ならびにGISによるデータベースの作成を行う。また,水理モデルとGIS-データベースを関連づけるサブモデルを構築し,水理計算結果を視覚的に表現できるものへとモデルを改善していく。平成25年度は,GISによるデータベースの構築と高精度の評価指標の算定ができるモデルを構築する。 第二にIPCCが示す温暖化シナリオのうち,特にA2(経済重視,地域主義),B2(環境重視,地域主義)シナリオを軸に,2050年までの外力の推定を行う。外力の推定には,シミュレータの利用あるいは統計的手法,数種類のダウンサイジング手法等があり,気候変動適応戦略イニシアチブ(RECCA)が中心となり開発中であるため,その技術を援用する。外力は2010年~2050年までを5年ごとに推定し,各シナリオに基づく外力により想定される2050年の社会への影響を推定モデルにて定量化し,社会的意味づけをリスク論的思考に基づき考察する。また,適応シナリオとして,現状の社会インフラ,制度による対応を行った場合(BaUシナリオ)ならびに類型化した政策,技術等の組み合わせによる対策シナリオを複数設定(CM1,CM2・・・)し,効果について考察を行う。 以上の研究を精力的に取り組むと共に,平成24年度の研究成果を9月に開催される国際学会にて発表を行い,海外の研究者とも意見交換を行いつつ,より良い研究へと導く。また,国内の学会においても成果を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度,計算サーバを購入予定であったが,在外研究中につき,英国にて本研究を遂行していたことから,購入できていないため,計算サーバを購入する。これにより,計算速度の向上,GIS解析の速度向上が図られ,研究効率が向上する。さらに,より詳細な被害算定,脆弱性評価を実施するために大阪市北区の建物・地図データ(GISデータ)を購入する。 平成24年度の研究成果を英国で開催される国際会議(ICFR2013)にて発表するため,海外旅費を計上する。また,研究遂行にあたり必要となる解析補助,GISデータ作成補助のために関西大学大学院生,学部生に対して謝金が必要である。気候変動に関する最新の統計書あるいは図書を購入する。また,研究遂行に必要となるプリンタのトナー等の文具・OAサプライ商品の消耗品を購入する。
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