2013 Fiscal Year Research-status Report
オントロジーを用いた地域づくりにおける知識継承・移転支援システムの構築
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24710054
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
熊澤 輝一 総合地球環境学研究所, 研究高度化支援センター, 助教 (90464239)
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Keywords | 地域づくり / 知識移転 / 知識継承 / 知識共有 / オントロジー |
Research Abstract |
本研究は、オントロジーを用いた地域づくりにおける知識継承・移転支援システムを構築することを目的としている。この目的を果たすために、平成25年度は以下の四項目を計画し、実施した。 1.フィールド調査とコード化作業:石川県能登半島地域へのフィールド調査を継続した。また、大阪府高槻市での聞き取り調査から抽出されたテキスト情報をグラウンデッド・セオリー・アプローチによりコード化し、結果を人工知能学会全国大会にて発表した。さらに、京都府木津川市での連続ワークショップ事例から、地域づくり活動にかかわるテキスト情報を抽出することができた。 2.オントロジーの構築(続き)、再利用可能知識と地域個性知識の明示:サステイナビリティ・サイエンス(SS)・オントロジー(平成26年度Sustainability Science誌に掲載確定)を基本構造としながら、コモンズの持続可能性を捉えるための分析枠組である「社会-生態システムの存在論的枠組み」を反映したオントロジーの設計を終えた。この進捗を第14回国際コモンズ学会 (IASC2013)にて報告し,設計結果については、平成26年度の人工知能学会全国大会での報告が確定した。一方、再利用可能知識(概念)と地域個性知識(個物)の抽出と両者の連携については、手順を日本地域学会年次大会にて報告し、さらに、同学会誌の「研究ノート」として投稿した段階にある。 3.データベース構築、オントロジーの接続の実装: テキスト情報をRDF(Resource Description Framework)形式に変換したものを、Web上で提供しているRDFストア機能を用いて登録しSPARQL検索する方法を取ることとし、その試験構築を行った。 4.Web 上での試験実装・実現性評価:RDFをSPARQL検索した結果を記載する機能をもつWebページの試験構築を行った。 なお、本研究課題の枠組み等を扱った総説論文が、人工知能学会誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. オントロジーの構築手順の変更、再利用可能知識と地域特性知識の抽出方法の変更:人工知能学会で発表し議論した結果、グラウンデッド・セオリー・アプローチからに基づいたオントロジー構築の効果と作業負荷バランスを指摘された。また、国際コモンズ学会では、個物で満ちている地域の持続可能性の領域を組織化することは可能なのか、との指摘を受けた。これらの指摘を受けて、オントロジーの構築手順及び再利用可能知識と地域特性知識の抽出方法の変更を行った。具体的には、グラウンデッド・セオリー・アプローチによる概念化を通して、再利用可能知識(概念)と地域特性知識(個物)を区分する方法から、既存の理論をオントロジーで記述することで再利用可能知識(概念)を示し、個々の個物については、まず個物として記述する方法を取った。そして、オントロジーと個物を接続する際に、両者の間に一般性のある集合が見出された場合には、これを概念として扱うこととした。以上のような、再利用可能知識と地域個性知識の抽出と両者の連携手順については、「研究ノート」への投稿した段階まで達した。しかし、これを優先した結果、オントロジーの設計結果の扱いについては、口頭発表での報告が決まった段階にとどまり、学術誌に投稿する段階には至っていない。 2. データベース機能のクラウド利用: Linked Open Dataの取り組みの普及に伴った、Web上で提供されるRDFストア機能の充実化を受けて、SQL(Structured Query Language)サーバを立ててSPARQLエンドポイントを作成する方針から、既存のRDFストアにRDFデータを登録して、SPARQLエンドポイントを作成する方針に変更した。これにより、サーバ構築の作業を経ずに、Webサイトを介したSPARQL検索システムを試験実装することができた。しかしながら、地域づくりにおける知識継承・移転支援システムのプロトタイプ構築の段階には達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
1. オントロジー研究の成果公開:設計を終えたオントロジーを社会-生態システムを専門に扱う学術誌へ査読付き論文として投稿する。 2. 関連するWebサイト等のURIの収集・RDFモデル構築:関連するWebサイトのURL等のURIをRDF形式で記述し、データ化する。石川県能登半島の地域資源を扱った収集文献等より語彙を抽出しURIを付した後、RDF化し、RDFモデルを構築する。 3. RDFモデルとオントロジーの統合作業:RDFとオントロジーをつなぐクラスを定義し、再利用可能知識とする(概念化する)。構築したオントロジーをRDFスキーマに変換し、現段階でWeb上での実装が可能な形式とする。 4. Webサイト構築・SPARQL検索システムの作成・実現性評価:2のRDFと 3のRDFスキーマを既存のSPARQLエンドポイントに格納し、2, 3を統合的に運用できるLinked Dataとする。実現性評価では、用意した複数の例題から、本研究課題で構築した知識継承・移転支援システムの導入による効果と課題を示す。最後に地域づくり支援への提言を行う。なお、今回は、プロトタイプを構築することを通じて、支援システムの全体スキームを提示することに主眼を置いている。このため、オントロジー及び支援システムの評価実験は、プロトタイプとしての提示を許容できるかどうかを判断するのに必要な作業にとどめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.地域づくりにおける知識継承・移転支援システムを構成するオントロジーの構築と、構築の準備段階としての試験実装の段階に達するまでに平成25年度末までの期間を要し、同年度内でのシステムのプロトタイプの完成に向けた意見交換に係る経費支出、並びに成果公開に係る経費支出に至らなかったため。 2.本助成が決定した後に、他の科学研究費補助事業の研究分担者、民間財団による研究助成の研究代表者を担うこととなり、地域づくりやオントロジー構築に係る物品費、旅費等のうち目的・用途が共通するものについて、これらの補助金・助成金での支出をした結果、研究の進捗に比して多くの未使用額が生じたため。 1.地域づくりにおける知識継承・移転支援システムのプロトタイプの完成に向け、国内外の専門家と意見交換を行う。そのための必要経費として、これらに係る国内旅費、外国旅費、学会参加費、国際会議参加費等を支出する。 2.本研究課題の成果を国内外で発表する。まず、査読付き論文や「研究ノート」として、SS(特に社会-生態システム関連)や地域開発系の学会に投稿する。そのための必要経費として、学会投稿料、英文校閲謝金、論文別刷代等を支出する。また、SS領域のワークショップや知識工学系学会の年次大会での発表を行う。そのための必要経費として、これらに係る国内旅費、外国旅費、学会参加費、国際会議参加費等を支出する。
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