2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24710055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松永 光平 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任講師 (80548214)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 中国 |
Research Abstract |
中国の「退耕還林」政策は、食料増産のために森林を破壊してきた人類史において、耕地面積を縮小しながら森林を回復させようとする挑戦的な試みであり、その規模において類をみない。本研究は、黄土高原の陝西省北部を主な対象として、(A)退耕還林期間に育成された森林が住民の収入・生活に与えた影響、(B)森林の利用が環境に与えた影響、(C)森林の利用開始前後における人口年齢構成等の変化、(D)ポスト「退耕還林」の代替産業と生活に対する住民意識、を現地調査で明らかにする。「退耕還林」政策終了後(以下、ポスト「退耕還林」と称す)に住民が森林の質を高めながら持続的な生活を営む可能性(未来可能性)を評価することによって、食料生産と環境破壊・貧困問題をめぐる中国ひいては世界諸地域の問題解決に貢献しようとするものである。 今年度は、黄土高原農村部の未来可能性の評価基準を設けるため、中国全体の農業・農村の未来可能性に関して統計資料と既往研究をサーベイした。その結果、(A)森林育成の収入増加への影響は限られていること、(B)2000年代の中国各河川の流量は1950~2000年までの流量より減少しておりその原因の一つとして造林の影響が考えられること、(C)中国の高齢化は30年くらいのタイムラグをもって日本を追いかける趨勢にあること、(D)一次産業以外への産業の転換が進んでおり自給作物中心の農業の維持は困難と考えられること、がわかった。これらのことから、中国全体の農村の未来可能性の担保には、(1)政策的に森林育成や農業生産のインセンティブを高め、(2)森林育成と農業生産との省力・省資源化を進める必要があると考えられた。 一方、調査対象の農村を絞り込むため、陝西省延安・洛川・楡林周辺の電子統計資料を収集・分析した。その結果、延安の北宋塔村、洛川の東村・橋頭川村、楡林の紅柳灘村などが候補となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査対象農村の絞込みに加えて中国全体の農村の持続可能性の把握を行えたため、当初の計画以上に進展がみられた。また、研究成果の一部をもとに著書(単著、共著)を執筆し、平成25年度に出版を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に現地調査はできなかったため、平成25年度は複数回、調査実施を行う。まず調査対象候補の農村を広くまわる。また、楡林周辺における森林回復状況と収入・環境・人口の変化に関して重点的に調査する。 平成26年度は洛川での調査を行い、最終年の平成27年度にはこれまでの調査のフォローアップと、研究成果の取りまとめ、ならびに公刊を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
より良い成果が期待できることから研究計画の軽微な変更を行い、平成24年度に予定していた現地調査時期を変更して平成25年度に実施することとしたため、調査費用として予定していた研究費を、次年度の広域現地調査実施のため使用する。加えて、平成25年度の研究費を用いて楡林付近における重点的な現地調査を行う。その他、関連資料を購入しながら、調査結果を論文としてまとめる予定である。
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