2012 Fiscal Year Research-status Report
未熟及び成熟甲状腺濾胞上皮の放射線感受性とオートファジーの関与
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24710062
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松山 睦美(松鵜睦美) 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (00274639)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 放射線 / ラット / 甲状腺濾胞上皮 / 細胞死 / オートファジー / 年齢依存性 |
Research Abstract |
小児期の放射線被ばくは甲状腺発がんの危険因子で40歳以上でリスクは消失する。甲状腺濾胞上皮の放射線被ばくによる感受性の年齢影響を調べることを目的に、週齢の異なるラットに放射線照射後急性期の組織変化、DNA損傷応答分子53BP1とオートファジー(AP)の発現を比較検討した。4週齢(4W)、7週齢(7W), 8ヶ月齢(8M)の雄性ウィスターラットに8GyX線全身照射後0, 3, 6, 24, 48, 72時間の甲状腺組織を採取し、濾胞上皮細胞におけるKi67陽性細胞数、TUNEL陽性細胞数、53BP1 核内フォーカス数を解析した。Western blotにてp53, Ser15リン酸化p53, p21, cleaved caspase-3(CC3)の発現と、AP関連蛋白であるLC3-IIとp62の発現を継時的に解析した。電子顕微鏡によるAP像の観察を行った。Ki67陽性細胞数は照射後72時間で4W群では11%から1%, 7W群では4%から0.3%に減少したのに対し、8M群は0.2%のままだった。いずれの群でも放射線誘発アポトーシスは確認されなかった。53BP1核内フォーカス数とSer15リン酸化p53の発現は3, 6時間後に増加したが、週齢による差は認められなかった。p21とCC3の発現増加は見られなかった。4W群では照射後細胞質膨化が多数観察され、電顕観察では6時間から小胞体の拡張と分泌物の貯留が認められた。さらに4Wと7W群において、AP像が72時間後まで観察されたが、8M群ではほとんど見られなかった。4W群においてLC3-II/LC3-I比とp62の有意な発現増加が24時間後に見られたが、8M群では確認できなかった。照射後急性期でのDNA損傷応答とp53の活性化に年齢影響は見られなかったが、若齢群は放射線誘発APに高感受性で、今後晩発性発がんに関与しているかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の目的は、甲状腺濾胞上皮の放射線感受性に対する年齢の影響を評価するために、放射線外照射後の未熟及び成熟ラットの甲状腺の分子病理解析をオートファジーの関与を中心に行うことである。今年度の計画では、未熟及び成熟ウィスターラットに8Gy X線全身照射後、1.電子顕微鏡によるオートファジーの形態変化の観察、2.増殖停止、細胞死、細胞老化の関与、3.オートファジー関連タンパクの発現解析を行うことであった。4週齢(4W)、7週齢(7W)、8ヶ月齢(8M)のラットに照射後、0から72時間までの甲状腺組織を採取し、1-3までの解析をおおむね計画通りに実施することができた。その結果は、1.電顕により、4W、7Wではオートファジー像の増加が照射後72時間まで観察されたが、8Mではオートファジー像の増加は見られなかった。2. 4W, 7Wで照射後増殖停止が起きるが、8Mでは起きなかった。放射線誘発アポトーシスはどの週齢でも誘導されなかった。細胞老化については現在検討中である。3.オートファジー関連蛋白のLC3-IIとp62の発現増加が4Wで24時間後に見られたが、8Mでは見られなかった。TFEBの発現に関しては未実施である。 2012年度は研究結果を国内での学会で3回発表を行い、和文雑誌にも2報掲載し、本研究結果を国内に発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
若週齢の放射線誘導オートファジーの高感受性に、どのような遺伝子が関与しているか調べるため、4週齢、8カ月齢ラットに非照射及び8Gy全身照射した甲状腺からRNAを抽出し、Autophagy PCR Array (SA Biosciences)を用いて、定量PCRに供する予定である。Autophagy PCR Array は、オートファジー経路に関与する51遺伝子のmRNAレベルを解析することができ、照射後どのようなオートファジー関連遺伝子が変化しているか、若週齢と高週齢で違うかどうか比較検討を行う予定である。 若週齢と高週齢に8Gy局所照射後1ヶ月以降の甲状腺組織変化を調べ、慢性期の組織変化とオートファジーの関与、さらに発がんへの影響を調べたい。 これらの結果を英文論文にまとめ、研究結果を海外に発信する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)