2012 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射後の染色体転座形成および形成抑制の分子機構の解明
Project/Area Number |
24710063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
山内 基弘 一般財団法人電力中央研究所, 原子力技術研究所, 特別契約研究員 (60437910)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 染色体転座 |
Research Abstract |
今年度は放射線照射後の染色体転座頻度に対する53BP1蛋白質の影響を検討した。転座頻度を簡便に見積もるため、転座と同じ機構・頻度で形成される二動原体染色体をセントロメア・テロメアFISHにより検出した。53BP1 shRNAを発現する正常ヒト線維芽細胞BJ-hTERTを接触阻害によりG0/G1期に同調し、2 Gyのγ線照射後、すぐに低密度にまき直すことにより同調を解除し、第一分裂期における二動原体染色体を検出した。なお実験は、細胞周期チェックポイントの影響を排除するため、G1チェックポイントに働くp53に対するshRNAおよびS/G2チェックポイントに働くChk1/2に対する阻害剤の存在下で行った。その結果、コントロールshRNA発現細胞と比べ、53BP1 shRNA発現細胞では2 Gy照射後の二動原体染色体の頻度が有意に低下することが分かった。次に53BP1蛋白質のDNA二本鎖切断部位への集積に必須のMDC1に対するshRNAを発現する細胞で同様の検討を行った。本実験もp53 shRNAおよびChk1/2阻害剤存在下で行った。その結果、コントロールshRNA発現細胞と比べ、MDC1 shRNA発現細胞も2 Gy照射後の二動原体染色体の頻度が有意に低下し、しかもその低下の度合いは53BP1 shRNA発現細胞と同程度であることが分かった。以上の結果から53BP1蛋白質は転座形成に関与していること、また53BP1のDNA二本鎖切断部位への集積が転座形成に重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、MMEJ(Microhomology-Mediated End-Joining)関連因子群と53BP1蛋白質が「転座形成分子経路」を構成していること、およびその経路がATM蛋白質やDNA-PKcs蛋白質により抑制を受けていることを証明することであった。「おおむね順調に進展している」と評価した理由は、今年度の研究により、53BP1蛋白質が「転座形成分子経路」を構成していることを証明できたためである。この成果は「p53 shRNAおよびChk1/2阻害剤により細胞周期チェックポイントを阻害した条件下でG0/G1期に同調した細胞に放射線を照射後、同調解除して第一分裂期で二動原体染色体頻度を検討する」という実験系がうまく機能していることも証明しており、非常に意義が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はMMEJ関連因子群であるMRE11、CtIP、BRCA1、PARP-1、XRCC1、Ligase III、Ligase Iの発現を抑制した細胞における、放射線照射後の二動原体染色体頻度を検討する。CtIP、BRCA1、XRCC1、Ligase III、Ligase Iについては平成24年度にshRNAを発現するレンチウイルスベクターを複数クローン購入し、発現抑制効率を調べたが、高効率に発現抑制するクローンがなかった。またレンチウイルスの感染、発現抑制細胞の樹立に予想以上に時間がかかった。一方で最近、高い確率で遺伝子発現を抑制するsiRNAおよび高い効率でsiRNAを細胞に導入できるトランスフェクション試薬が市販されはじめた。また目的の遺伝子を特異的に高い確率でノックアウトできるTALENという技術も汎用されはじめた。そこでこれらも本研究に導入し、染色体実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、すでに樹立済みであった53BP1およびMDC1のshRNA発現細胞を用いて放射線照射後の二動原体染色体頻度を検討したとともに、CtIP、BRCA1、XRCC1、Ligase III、Ligase IのshRNAを発現するレンチウイルスベクターを複数クローン購入し、発現抑制効率を検討した。この際レンチウイルスの感染、レンチウイルスベクター導入細胞の樹立、および発現抑制効率の検討に予想以上に時間がかかり、年度内に使用する予定であった研究費を次年度に繰り越すこととした。今後はshRNAよりも高い確率で目的遺伝子の発現抑制あるいはノックアウトができるsiRNAやTALENを用いるので、平成25年度以降に請求する研究費と合わせ、主にsiRNAとTALEN、およびそれらの細胞導入試薬に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)