2012 Fiscal Year Research-status Report
53BP1を介したアポトーシス細胞表層へのヌクレオソーム露出の機構と意義の解明
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24710064
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
砂谷 優実 金沢医科大学, 医学部, 助教 (70581057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 53BP1 / アポトーシス / 自己免疫疾患 |
Research Abstract |
p53結合タンパク質として見出された核タンパク質53BP1は、DNA二本鎖切断部位に出現するメチル化ヒストンH3およびH4との結合を介してDNA二本鎖切断部位に集積し、DNAの修復に携わる。申請者は、53BP1が結合するp53はアポトーシス誘導因子であることに注目し、これまでに53BP1がDNAと共にアポトーシス細胞表層へ露出することを見出した。本研究では、アポトーシス細胞内で生じたヌクレオソーム断片を細胞表層へ露出する分子機構とその生理学的意義を明らかにすることを目的としている。 平成24年度は、アポトーシス細胞表層への53BP1依存的なヌクレオソーム露出機構の解明に着手した。まず、RNA干渉により53BP1の発現を抑制したJurkat細胞あるいはMolt-4細胞を、DNA非損傷ストレスとしてプロテインキナーゼC阻害剤のスタウロスポリンあるいはDNA損傷ストレスとしてX線やトポイソメラーゼII阻害剤のカンプトテシンで処理して、アポトーシスを誘導した。その結果、アポトーシス細胞表層へ53BP1依存的に露出したヌクレオソームを検出した。さらに、露出したヒストンにおいては、53BP1の結合性が報告されているジメチル化が検出できた。これらの結果から、ヒストンH3およびH4に結合した53BP1が、アポトーシス細胞内に生じたそのヌクレオソーム断片を細胞表層へ運ぶ役割を担う機構が示唆された。 平成25年度では、アポトーシス細胞表層へのヌクレオソームの露出に働く53BP1の機能部位を、各種機能ドメイン変異53BP1発現細胞を作製して調べる予定である。また、本機構の生理学的意義を明らかにするため、アポトーシス細胞貪食時の食細胞の免疫応答の53BP1依存性を調べる。本研究成果により、抗DNA抗体および抗ヒストン抗体陽性となる自己免疫疾患の発症機構の解明に繋がると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の研究計画では、野生型および変異型53BP1安定発現ヒト白血病細胞株を樹立し、研究材料として用いる予定であった。しかし、研究実施中に53BP1全長の過剰発現状態での維持が困難であることが判明したため、当該研究における53BP1安定発現細胞株の樹立方法について、計画の変更を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
53BP1 shRNA発現プラスミドDNAを作製し各種変異型53BP1発現プラスミドDNAと共導入した細胞株を樹立する方針に変更する。この方針策により、内在性53BP1の発現が常に抑制されるため、53BP1外来発現させても過剰発現状態を防ぐことが可能であると考えている。 53BP1 shRNA配列は当初使用を予定していた53BP1 siRNA配列をそのまま使用できることを既に検証済みであり、平成24年度中に構築した各種53BP1発現ベクターに53BP1 shRNA耐性のための変異を導入する作業は不要である。そのため、計画が大幅に遅れることはない。 また、予備的実験の結果より、53BP1C末端領域のみの発現を導入した時には、53BP1全長タンパク質と比べて比較的安定に53BP1が核内に発現することを確認している。このC末端領域には、ヒストンへの結合領域が含まれていることから、ヌクレオソーム露出機構における53BP1の機能解析には十分な領域と考えられる。そこで、53BP1 shRNAにより内在性53BP1の発現を抑制しても53BP1全長の安定発現細胞株の樹立が困難な場合に備え、各種53BP1C末端領域発現ベクターの作製も行う。その作業は、上記53BP1 shRNA発現ベクターの作製と同様の手技で行うため同時進行が可能であり、計画の大幅な遅れは見込まれない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究計画に加えて、53BP1 shRNA安定発現細胞株の樹立を追加する。発現ベクターの作製および細胞株の樹立に係る分子生物学的実験・細胞培養の試薬・器具購入費として、平成24年度分研究費のうち繰り越した研究費を使用する予定である。 それに加えて、当初予定していた平成25年度研究計画である53BP1を介したヌクレオソーム露出の生理的意義の解明も予定通り実施する。その計画中のアポトーシス細胞貪食解析、および貪食細胞による補体抑制因子や炎症誘導因子産生量の測定で係る分子生物学実験・生化学実験・細胞培養の試薬および器具購入費として、平成25年度分の研究費を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)