2012 Fiscal Year Research-status Report
内分泌攪乱物質のクリティカルウインドウ曝露による発生影響の精査
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24710072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ariake National College of Technology |
Principal Investigator |
山口 明美 有明工業高等専門学校, その他部局等, その他 (90399262)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 該当なし |
Research Abstract |
初年度はまずパルス波形を改良した.これまで物質導入のモデルとして用いていたタンパク合成阻害剤シクロヘキシミド(CX)を各種濃度に希釈し導入を試みたところ,これまでの2分の1の濃度のCXで,ほぼ100%のメダカ卵に成長の遅延が見られた.また,成長遅延の度合いも改良前よりも大きくなっており,改良前パルスによりCX導入したものは成長遅延が見られながらも7日以上生存するものが多かったが,改良パルスを用いるとCX導入後3,4時間後にほとんどのものが死亡したことからCX導入量効率が大幅に高くなったと考えられる.さらに,この改良後パルスを用いてメダカ卵のビスフェノールA(BPA)暴露を行った.受精直後のメダカ卵にBPAまたはE2をパルス印加により導入し,最小限の数のメダカ卵で解析を行うためにパルス印加後6日目まで培養した.メダカ卵6個をn=1とし,初期発生段階に発現している遺伝子を搭載したDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った.その結果,E2, BPAに共通して発現変動している遺伝子があり,これらは化学物質のE2様作用のマーカーとなると考えられる.また,E2またはBPA暴露でそれぞれ特有に発現変動している遺伝子があることが分かった.各遺伝子の機能および各遺伝子群の関連については現在調査中であるが,これらを手掛かりに今後BPAの初期発生影響を行うことを計画している.さらに研究協力者の研究により,改良パルスによりBPAを導入したメダカ卵400個からBPAの抽出を行い, LC-MSによりメダカ卵内に導入されたBPAの定量を行ったところ,非常に効率的にBPAがメダカ卵内に導入されていることが確認されており,導入を試みる物質の親水性,疎水性,電荷の状態等によりメダカ卵内への取り込み量が異なることも考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は当初の計画にはなかったが,最初に本研究課題の要となる部分である物質導入の際のパルス波形の改良を行った.物質導入を大幅に高効率化できたことから,以降の実験をより効果的に行うことができるようになった.24年度の計画ではメダカ受精卵のエストロゲン受容体(ER)サブタイプの分布の経時変化を調査することを計画し,プライマーの設計,測定条件の検討などを行っていたが,リアルタイムPCRの不調から修理が必要な状態となり当初の計画を変更せざるをえなかった.また,研究協力者によりメダカ受精卵へのBPA導入量の定量が行われているので,本来は25年度以降に行う計画であったBPA暴露を前倒しして行うこととし,改良パルスによりメダカ受精卵へBPAまたはE2を導入し,ごく初期に暴露される影響を調査した.受精直後のBPAまたはE2暴露により多数の遺伝子の発現変動が見られ,これらは今後発生影響評価の対象となり,各遺伝子の機能を調査することで研究の新たな展開も考えられることから,当初の計画とは少し異なるが意義の高い結果が得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,現在修理が完了したリアルタイムPCRを用いてリアルタイムPCRによりERサブタイプの分布の経時変化を調査し,暴露ウインドウを定めて暴露条件を最適化する.現在使用可能なERαまたはβサブタイプ特異的リガンドをメダカ卵内に導入し,マイクロアレイにより遺伝子発現変動を調査し,各サブタイプについて比較する.これらに加えBPAなど各種物質の影響を精査する.また,改良パルスによりメダカ受精卵へBPAまたはE2を導入し,孵化するまで顕微鏡観察を行い,形態異常の発生の有無等を確認する.孵化後のメダカを一定期間飼育し,行動異常の有無を観察し,状況によっては神経組織の免疫染色などを行うことを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時の計画とは少し予定を変更し,次年度以降に行う予定の実験を前倒しして行ったが,概ね順調に研究を進めることができた.計画の変更に伴い次年度に使用する研究費が生じたが,翌年度請求分の研究費と合わせて使用したほうが有意義に使用できると判断したことから,次年度の予算として使用する.
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Research Products
(2 results)