2012 Fiscal Year Research-status Report
揮発性有機ガス吸着剤への応用に向けた貝殻の超微粉砕と結晶構造制御
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24710074
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
山中 真也 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30596854)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 乾式ナノ粉砕 / ホタテ貝殻 / ナノ粒子 / 廃棄物利用 / ホルムアルデヒド / 非晶質化 |
Research Abstract |
本年度は、(1)通常の乾式粉砕では得られない大きな比表面積(40~50 m2/g)を持つホタテ貝殻ナノ粒子を得るとともに、ホタテ貝殻原料から高比表面積を有する活性ホタテ貝殻ナノ粒子に至る粉砕機構を明らかにした。また、(2)ホタテ貝殻の主成分である炭酸カルシウムの結晶構造を制御して、モルフォロジーとホルムアルデヒドの吸着特性との関係を調べた。さらに(3)精度高くホルムアルデヒド吸着量を定量する方法を確立した。具体的には、 (1)粉砕により非晶質化したホタテ貝殻粉末は、水との反応性・溶解性が高く、粉砕後の粉末に水を添加すると、比表面積が大幅に増加した。非晶質部はカルサイト晶よりも溶解度が高いため、水添加によって溶出した結果、一次粒子サイズまで分散して、比表面積が増加したと考えられた。 (2)ホタテ貝殻粉体の結晶性とホルムアルデヒド吸着量の関係を調べた結果、結晶子サイズの小さい粉体は大きな粉体より単位面積当たりの吸着量が2~5倍増加した。ホタテ貝殻粒子の表面構造は、ホルムアルデヒド吸着に大きな影響を及ぼし、結晶性が低く、かつ比表面積の大きな粉体がホルムアルデヒド吸着剤に適していることを明らかにした。 (3)ホルムアルデヒドは極性溶媒であるため、気相の質量(モル)比は液相の質量比と一致しない。そこでアセチルアセトン法(JIS A 1460)を用いて、測定装置内の蒸気について、圧力とホルムアルデヒド濃度の関係を調べた。その結果、1600 Paと1866 Paでのホルムアルデヒド濃度はそれぞれ1370±10、1560±20 mg/m3であった。どちらの濃度も、液相と気相のホルムアルデヒドのモル濃度が等しいと仮定して理想気体の状態方程式から計算した濃度の27%であった。実質吸着量は、理想気体の状態方程式に補正係数0.27を加えて計算できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、大量廃棄されているホタテ貝殻を、揮発性有機化合物の吸着剤として有効利用するための研究基盤を確立することであり、初年度に計画した研究項目は、(1)高比表面積かつ結晶構造を制御したホタテ貝殻を得るための粉砕法を確立するとともに、その粉砕機構を明らかにする。(2)ホタテ貝殻の主成分であるホタテ貝殻粉体の結晶構造が揮発性有機化合物の吸着量に及ぼす影響を明らかにする。の2点である。 これらの計画は、研究実績の概要で述べたとおり、予定どおり進めた。また、上述の研究項目を進める中で出てきた課題を解決した。具体的には、吸着量測定装置内のホルムアルデヒド蒸気濃度を精密に測定して、定量性の高いホルムアルデヒド吸着量測定技術を確立した。この技術は、今後、他の揮発性有機化合物種の吸着量を定量する際、利用・応用可能である。 さらに、本申請研究で提案する乾式ナノ粉砕法を基盤技術として、ホタテ貝殻粉体を合板用接着剤および化粧品として有効利用する応用研究を進めている。 以上の理由により、当初の計画以上に本研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は主として(1)ホタテ貝殻ナノ粒子について、吸着種とその吸着量の関係を明らかにする。(2)実際的なホタテ貝殻有効利用法を提案する。の2つの研究項目を実施する。 (1)これまでに代表的な揮発性有機化合物であるホルムアルデヒドやn-ブタノールについては、ホタテ貝殻粉体の吸着性能を確認してきた。今後は、トルエン、ベンゼンなど厚生労働省が揮発性有機化合物において室内濃度指針値を定めた物質の吸着量を調べる。また、ホタテ貝殻粉体の有用性を明らかにするため、石灰石(主成分はホタテ貝殻と同様にカルサイト晶)や試薬炭酸カルシウム、および一般的な吸着剤(活性炭、ゼオライト、シリカゲル)とコスト、ハンドリング性を比較する。 (2)家屋壁材等への有効利用法を提案できる段階まで研究を発展させることにより、海産資源の廃棄物の有効利用を実現する。これまでに確立した揮発性有機化合物の吸着量測定技術を利用して、ホタテ貝殻ナノ粒子に吸着した化合物の化学的安定性、吸着・分解能力を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでは、ホタテ貝殻ナノ粒子に至る粉砕機構やナノ粒子の吸着特性に関する基礎研究を進めていたため、容量の小さな(45cc)遊星ボールミル用ポットを使用していた。そのため、一度の操作で得られる粉体は数グラムであり、今後の推進方策で述べた研究項目を効率よく実施するためには、一度の粉砕操作で多くのホタテ貝殻粉体を作製する必要がある。そこで、次年度は容量の大きな500ccのジルコニア製ポットを導入して、次年度全体の研究費の半分程度をその購入費に充てる。残りの研究費は、消耗品の購入と成果報告用の旅費に充てる。
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