2013 Fiscal Year Research-status Report
浄化槽放流水の遺伝子毒性の解明と塩素処理等による削減効果
Project/Area Number |
24710079
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
久保 隆 長崎大学, 産学官連携戦略本部, 助教 (40397089)
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Keywords | 遺伝子毒性 / 浄化槽 / umu試験 / バイオアッセイ / 固相抽出 |
Research Abstract |
前年度に前処理方法を検討したところ、濃縮時の水試料のpHによって遺伝子毒性強度が異なる傾向が示唆された。そのため、本年度はまずpH等の影響の確認を行うために、昨年度よりも採水地点を増やし、実排水の遺伝子毒性試験を行った。また、様々な種類の水試料を得るために、可能な限り単独浄化槽、合併浄化槽、コミュニティプラント、汲み取り槽の中の1種類の処理方式の住宅が集まった地域をモデル地域として選出し、これらの家庭排水を河川に放流される前の側溝で採水した。水試料は、昨年同様に前処理を行い、umu試験に供した。 その結果、pHによる遺伝子毒性の変化については昨年度と同様の傾向が得られたため、原則として最も遺伝子毒性が強く検出されるpH2の条件で通水することにした。試験した放流水の遺伝子毒性試験結果はN.D.~13ng-4NQO/mlとなり、処理方式によって10倍以上も異なることが明らかになった。ここで、この値を一般的な日本の水道水の値と比べると、試験した浄化槽放流水の遺伝子毒性は水道水よりも数十倍程度高いと考えられた。これまで、水道水の遺伝子毒性は良く研究されてきたが、浄化槽放流水の遺伝子毒性についても更なる研究の必要性が示されたと考えられる。今回の実験の中では合併浄化槽の遺伝子損傷性が最も高かった。この結果から個別の合併浄化槽はコミュニティプラントよりも強い遺伝子損傷性物質を河川等へ放出していることが示唆された。また、主に生活雑排水が流入していた汲み取り槽では遺伝子損傷性はほぼ未検出であった。このことは、家庭排水の遺伝子毒性の大部分がし尿由来であることを示唆しているが、汲み取り槽地域でもコミュニティプラントとほぼ同程度の遺伝子毒性が検出されることがあったため、周辺地域からの化学物質の混入も含めて、更なる研究が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、遺伝子毒性物質が浄化槽から放出される実態を明らかにし、効果的な遺伝子毒性削減対策について検討する予定である。これまでに、前処理条件を検討、確定した上で、各種の浄化槽放流水の遺伝子毒性を定量的に評価し、日本の水道水との定量的な比較を行った。しかし、単独浄化槽についての調査がやや不足しており、早急に追加調査を実施する必要がある。河川への影響については、浄化槽放流水の流量変動が非常に大きいことを考慮する必要もある。また、今年度1件の学会発表を行ったが、研究成果の発信についても充分とは言いきれない。これらの理由により、「やや遅れている」状況と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は単独浄化槽地域での採水と遺伝子毒性試験を追加していくと同時に、遺伝子毒性の削減対策を目指した研究を進める。削減対策のためには、遺伝子毒性の原因となる物質の類推が必要となるため、まずは極性等で試料水を分画し、umu試験に供する。これにより、遺伝子毒性に大きく寄与している物質(群)、あるいはその性質を明らかにしたい。その上で、削減対策に有効と考えられる処理方法を探索し、処理前後の遺伝子毒性を比較することにより、その効果を検証する予定である。研究成果は学会発表や論文投稿等により、国内外に発信する予定である。
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