2012 Fiscal Year Research-status Report
新規水処理剤の創製およびそのリン吸・脱着能に関する基礎研究
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24710083
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
緒方 文彦 近畿大学, 薬学部, 助教 (10581754)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境技術 |
Research Abstract |
本研究の目的は,アルミニウム系化合物を用いた,枯渇かつ有限資源であるリンの回収および再資源化である。平成24年度における研究計画は①新規造粒アルミニウム系化合物の創製条件の評価,②新規造粒アルミニウム系化合物の諸物性評価,③新規造粒アルミニウム系化合物のリン吸着能評価,④新規造粒アルミニウム系化合物によるリン吸脱着能評価の4点である。 研究の遂行に当たり,アルミニウム系化合物の一種である酸化水酸化アルミニウム(ベーマイト,BE)に着目し,新規造粒アルミニウム系化合物の創製条件について検討を行った。粉末状吸着剤の造粒には溶媒や結合剤などが必要となることが多い。しかし,これらの造粒方法は,コストや処理時間だけでなく,粉末状吸着剤の吸着能に影響を与える。したがって,本来,結合剤を使用しない造粒方法が必要であると考えられる。 (I)そこで,新規造粒アルミニウム系化合物の創製の基礎的検討として,結合剤を使用しない,圧縮法による造粒を試みた。圧縮法により創製した新規造粒アルミニウムの諸物性(示差熱分析,比表面積,表面pH,表面水酸基量,電子顕微鏡写真)について評価した。さらに,そのリン酸吸着能について評価した。 (II)また,吸着剤の粒子径および強度の確保から,結合剤を使用し造粒を行った。これらについても諸物性(X線回折分析,示差熱分析,比表面積,表面pH,表面水酸基量,電子顕微鏡写真)を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先の研究実績より,本年度は①新規造粒アルミニウム系化合物の創製条件の評価,②新規造粒アルミニウム系化合物の諸物性評価の2点について検討を行った。 (I)圧縮法による検討:圧縮法により創製した新規造粒アルミニウム系化合物について,諸物性(示差熱分析,比表面積,表面pH,表面水酸基量,電子顕微鏡写真)およびそのリン酸吸着能について明らかとした。電子顕微鏡写真からも粉末状BEが造粒可能であることが明らかとなった。また,新規造粒アルミニウム系化合物は,リン酸吸着能を有しており,吸着速度および吸着等温線の結果からも有用なリン酸吸着剤となりうる知見を得た。 (II)結合剤を使用した検討:結合剤には熱可塑性樹脂に着目し,検討を行った。①の創製条件の検討として結合剤3種(ポリエチレンテレフタラート,ポリスチレン,ポリプロリレン)を使用し,結合剤含有率および粒子径の異なる吸着剤の創製に成功した。また,②の吸着剤の諸物性評価としてX線回折分析,示差熱分析,比表面積,表面pH,表面水酸基量,電子顕微鏡写真について評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,結合剤を使用した新規造粒アルミニウム系化合物の創製に成功し,さらに,その諸物性を明らかとした。今後(来年度)は,①創製した新規造粒アルミニウム系化合物のリン酸吸着能評価,②新規造粒アルミニウム系化合物とリン酸との詳細な吸着機構の解明,また,③実用化を指向したカラムを用いた流通法によるリン吸着能評価,④環境水を用いた流通法によるリン吸着能評価を実施予定である。 ①創製した新規造粒アルミニウム系化合物のリン酸吸着能評価は,本年度創製した吸着剤のリン酸吸着能を,飽和吸着量,吸着等温線,吸着速度,吸着時における温度およびpHの影響について基礎的検討を実施する。 ②吸着機構の解明は,①で算出した基礎的データを基に先行研究との比較により検討する。現段階においては,新規造粒アルミニウム系化合物の表面水酸基とリン酸イオンとのイオン交換が主な吸着機構であると考えられる。 ③カラムによる流通法においては,実用化を指向し,カラム,線速度,空間速度などを総合的に判断し,ラボスケールでの検討を実施予定である。 ④実環境水を使用することにより,環境水中に含有されている様々な物質の影響評価を同時に検討することが可能となり,本検討で得られたデータは,実環境水中でも起こりえる基礎的データとなりうると考えられる。以上のことより,今後は本年度得られた基礎的データを基に実用化を指向した検討を実施予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該なし
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