2013 Fiscal Year Research-status Report
屋内環境におけるアンモニアの迅速な除去を可能にする光触媒材料の開発
Project/Area Number |
24710090
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
柳田 さやか 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (40579794)
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Keywords | 光触媒 / 固体酸 / アンモニア / 多孔体 / ガラス / ポリ酸 |
Research Abstract |
アンモニアは動植物の腐敗、排泄物の分解などによって生じる悪臭物質であり、動物施設や老人ホーム等ではしばしばその臭気が問題となっている。本研究ではアンモニアの迅速な除去に適した光触媒材料の開発と、分解過程の定量的評価を目標としている。 1, 固体酸性を付与した光触媒によるアンモニア分解 酸化チタン表面に固体酸性を付与し、アンモニアの吸着能を向上させる目的で、以下の2種類の粉末サンプルを作製した。①硫酸処理酸化チタン(SO42-/TiO2) ②メタタングステン酸-酸化チタン複合体(WO3/TiO2) 平成25年度は、これらのサンプルの固体酸性及び希薄なアンモニアガスに対する吸着・分解能の評価を行った。これらのサンプルは酸化チタン単体と比較してアンモニアの吸着能力には優れていたが、紫外線照射後にサンプル表面上に残留しているアンモニア及びアンモニウムイオンの量が多く、硝酸根(アンモニアの分解による生成物)が少ない傾向があった。このことから、固体酸性の付与はアンモニアから硝酸根への光触媒分解反応においては有効ではない可能性が示唆された。 2, 多孔質ガラスファイバ-酸化チタン光触媒複合体の作製 布状に織られたEガラスファイバを水熱条件下で酸処理によって多孔化し、これに酸化チタンをコーティングすることで高い吸着能を持ち、かつフレキシブルなフィルター形状の多孔質ガラスファイバ-酸化チタン光触媒を作製した。25年度は酸処理によるガラス成分の溶出と微細構造の変化について調査を行い、Eガラス中のAl2O3, B2O3, CaOといった成分が酸処理により溶出すること、酸処理時間が長いほどガラスファイバの比表面積が向上することを明らかにした。また、酸化チタンコーティングによって比表面積は30%ほど減少するものの、一定の面積は保たれることが分った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アンモニアの光触媒分解反応の評価については、反応容器中のガス種の濃度と共に光触媒上に付着している化学種の分析が重要となる。平成25年度には分解実験後のサンプル表面を蒸留水で洗浄し、イオンクロマトグラフィやイオン電極を用いて洗浄水中の各種イオンを分析することで気相に放出されない分解生成物の評価を行った。また、拡散反射赤外吸収スペクトルを測定することで、サンプル表面に付着した化学種の同定を試みた。更に、水蒸気がアンモニアの分解反応に及ぼす影響を調べるため、サンプルを湿潤雰囲気下で前処理した場合についても分解実験を行い、乾燥させた試料と比較して分解・吸着の速度に大きな違いがないことを確認した。以上のように、粉末試料を用いたアンモニア分解については分解条件や評価方法の検討が順調に進んでいるが、25年度に実施予定であった多孔質ガラスファイバ-酸化チタン光触媒複合体を用いたアンモニア分解に関しては未実施である。これはファイバの酸処理による溶出や細孔の評価に時間のかかったこと、また閉鎖循環系におけるアンモニアの分解よりも、2-プロパノールを用いたバッチ式の分解実験によって材料の基本的な光触媒活性を明らかにすることを優先させたことが理由である。これまでの検討から多孔質ガラスファイバ-酸化チタン光触媒複合体がアンモニアを吸着するのに十分な大きさの細孔容積を持っていることが明らかになったので、26年度には多孔質ガラスファイバ-酸化チタン複合体の基本的な評価を終わらせた後、アンモニアの閉鎖循環系における光触媒分解実験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
硫酸根やポリ酸での酸化チタン表面の表面修飾によってアンモニアの吸着性能を上げることはできたが、分解反応後の表面化学種の分析結果より、アンモニアの分解反応を促進することに関しては、このような表面改質は有効に働いていない可能性が示唆された。これまで固体酸を酸化チタンに付与することによってアンモニアの吸着と分解の両方を促進することを目指していたが、この方針については再検討を行う必要がある。水中でのアンモニアの光触媒分解に関しては、TiO2上へのPt微粒子担持によってN2の生成量が大幅に向上したという報告があり(Lee et al.,Environ. Sci. Technol, 2002)、金属粒子表面でのアンモニアの乖離が分解の活性化エネルギーを下げ、反応を促進するモデルが提出されている。そこで、助触媒として白金を担持した系についても分解実験を行い、気相中で効率よくアンモニアを分解する方法についてさらに検討を進める予定である。 また、平成26年度は大きな比表面積を持つ多孔質ガラスファイバ上に酸化チタンを固定化した材料を用いて低濃度のアンモニアガスの光触媒分解実験を実施する予定である。これまでの調査で多孔質ガラスファイバの細孔は0.5 nm程度と非常に小さく、かつアンモニアに対しては強い吸着点がないことが分っている。このような材料で光触媒分解実験を行い、吸着の強さがアンモニアの光触媒分解に及ぼす影響を調べ、分解に有効な光触媒の構造についての考察を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年の1月から9月まで出産・育児休暇を取得したために、当初の計画から実験の実施が遅れ物品の購入予定がずれ込んだことが主な理由である。また、子どもがいることで長期の出張や国際学会への出席が難しくなったため、当初旅費に充てるはずであった予算を次年度のに繰り越したことも理由として挙げられる。 実験に必要な設備や消耗品を中心に使用する予定である。実験に必要な光源、光触媒分解過程の分析に用いるガスクロマトグラフィ用の出力装置や標準ガス、分光器の部品などの購入を予定している。
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Research Products
(4 results)