2012 Fiscal Year Research-status Report
大強度パルス中性子によるミリ秒オーダー構造観測技術の開発と蓄電池研究への応用
Project/Area Number |
24710093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 一広 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (40362412)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中性子回折 / イオン伝導体 / 蓄電池 / 構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大強度陽子加速器施設/物質生命科学実験施設(J-PARC/MLF、東海村)に設置されている中性子回折装置を利用して、40ms毎に発生する大強度パルス中性子の特徴を活かしたミリ秒オーダー時分割構造観測技術の開発を行い、蓄電池研究(例えば、正極材や固体電解質中のリチウム位置の時間変化の観測)等へ応用することである。中性子は、物質中の軽元素(水素やリチウム)の位置(構造)や動的挙動(ダイナミクス)の観測に優れていることから、本研究で開発したミリ秒オーダー時分割構造観測技術とダイナミクス観測を併用することで、リチウムイオン電池の電池反応のような軽元素に関連する非平衡状態の解明が期待される。 平成24年度は、J-PARC/MLFの中性子回折装置に対して、ミリ秒オーダー時分割構造観測を行うための中性子検出器を設置し、中性子データ積算システムを構築した。また、標準試料を用いて中性子回折データを取得し、各検出器の性能評価(回折強度および装置分解能、等)を行った。同時に、充放電時中性子回折実験の実現に向けて、予備実験用の充放電実験環境を整備した。さらに今後、ミリ秒オーダー時分割構造観測技術によって得られた中性子回折データから軽元素に関する構造情報を抽出するため、これに関する予備実験を実施した。具体的には、リチウムイオン伝導体(Li2S-P2S5系およびLi-La-Ti-O系)を作製し、中性子回折実験を行い、リバースモンテカルロ(RMC)モデリングによる3次元構造およびリチウムイオン分布の観測技術を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
J-PARC/MLFの中性子回折装置に対して中性子検出器を設置し、中性子データ積算システムを構築したことで、ミリ秒オーダー時分割構造観測を実施するための準備が整った。また、標準試料による中性子回折データから、装置分解能も設計通りであることが確認できた。さらに、予備実験用の充放電実験環境を整備したことで、充放電時中性子回折実験用の蓄電池セルの評価を行うことが可能となった。構造解析環境については、リバースモンテカルロ(RMC)モデリングによってリチウムイオン伝導体(Li2S-P2S5系およびLi-La-Ti-O系)の3次元構造およびリチウムイオン分布を視覚化することに成功したので、これによりミリ秒オーダー時分割構造観測によって取得した中性子回折データを解析するための構造解析環境が整った。尚、新規蓄電池材料の物質探索については、メカニカルアロイング法等による試料作製、交流インピーダンス測定およびX線回折実験を現在も継続して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)充放電時中性子回折実験用蓄電池セルの作製およびミリ秒オーダー時分割構造観測の予備実験・・・充放電時中性子回折実験用蓄電池セル(単セル)を開発し、ミリ秒オーダー時分割構造観測の予備実験を行う。例えば、「LiCoO2|電解質|Li」の単セルを構築し、電解質の構造変化について調べる。 (2)新規蓄電池材料の探索および構造・電気伝導度の評価(継続)・・・平成24年度と同様、継続して物質探索および評価を行う。 (3)本研究で開発したミリ秒オーダー時分割構造観測技術を様々な機能性材料にも適用し、これらの非平衡状態について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する研究費は平成25年度以降の研究費と合わせて、充放電時中性子回折実験用蓄電池セルの材料購入および製作のために使用する予定である。また、新規蓄電池材料探索についても継続して行うため、試薬および消耗品の購入費用としても使用する。 ミリ秒オーダー時分割構造観測実験はJ-PARC/MLF(東海村)で実施するため、平成25年度も引き続き研究および打合せ旅費として使用する。また、本研究に関する成果を論文および学会等で報告するため、成果報告費としても使用する。
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