2013 Fiscal Year Research-status Report
新概念パルス中性子CT法による3D応力ひずみイメージング
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24710099
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 博隆 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30610779)
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Keywords | パルス中性子イメージング / 透過分光 / ブラッグエッジ / ひずみ / テンソルCT |
Research Abstract |
本研究課題は、新概念CT法の開発により、中性子透過法をベースとするひずみトモグラフィの実現を目指すものである。これは、現在開発を進めている新しい量子ビーム技術「パルス中性子イメージング」を更に発展させることにより、量子ビーム科学・画像工学・材料工学という広範な分野に資する研究テーマである。前年度までに、各種データ解析プログラム群の整備と、中性子回折ひずみ解析国際標準サンプル「VAMAS」を用いた原理実証実験を実施した。特に新概念CT法「テンソルCT法」の開発において、修正最尤推定期待値最大化法を用いたテンソルCT法の開発が、前年度における最大の成果であった。これにより、これまでのCT画像再構成技術では取り扱うことのできなかった物理量(ひずみ)をCT画像再構成することが可能となった。しかし、大強度陽子加速器施設J-PARCにおける原理検証実験の結果、周方向ひずみ成分のCT画像再構成には成功したが、径方向ひずみ成分のCT画像再構成において誤差が大きくなることがわかった。そこで本年度は、この問題の解決を中心に研究を進めた。 多方面からの検討の結果、テンソルCT法は非常に難解な非線形問題であることが改めて示された。また、この理由から、同時に逐次解析を行う周方向ひずみと径方向ひずみの内、径方向ひずみが真値から外れやすい傾向にあることがわかった。さらに、第1回目の逐次解析をいかに制御するかが重要であることもわかった。そこで、再構成の精度を更に向上させるため、修正最尤推定期待値最大化法の中に含まれている「逆投影」という解析過程を「フィルター補正逆投影」という高度な解析過程に変更することにより、改善を行えないかを検討した。その結果、この新しいテンソルCT法は、周方向ひずみだけでなく、径方向ひずみもCT画像再構成できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、テンソルCT法の開発ならびに高度化、国際標準サンプルVAMASを用いたJ-PARCにおける原理実証実験までは実施することができた。しかし、当初の予定の内、進捗状況が好調な場合に実施を計画していた社会問題への直接適用「自動車用クランクシャフトへの応用」については、研究を進展させることができなかった。これは、平成25年5月にJ-PARCにて発生した放射線事故により、J-PARC施設の稼働が1年近く停止してしまったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、遅延が生じてしまった研究課題について取り組む。既に当初計画の最低目標は達成しているが、最高目標の達成に向けてデータ解析を進めていく。また、併せて研究成果発表も続けていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題は、大強度陽子加速器施設「J-PARC」(茨城県東海村)の運用を前提にしたものである。しかしJ-PARCは、平成25年5月に発生した放射線事故により、1年近い施設の停止を余儀なくされた。本研究課題の進捗状況としては、初年度の内に最低目標を達成している。しかし、最低目標を超えて最終年度に実施する予定であった計画が、施設の停止に伴い大幅に遅延してしまった。そのため、次年度使用額が生じた。 遅延により、J-PARC実験や研究成果発表に関わる旅費を最終年度内に使用することができなかった。そこで次年度は、次年度使用額を、その経費に充てることとしたい。
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Research Products
(5 results)