2013 Fiscal Year Research-status Report
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24710105
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業センター(利用研究促進部)) |
Principal Investigator |
吉良 弘 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業, その他部局等, その他 (50400239)
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Keywords | 核偏極 / 偏極中性子 / デバイス開発 / 磁気シールド |
Research Abstract |
今年度はヘリウム3ガスとアルカリ金属を円筒形状のガラスセルに封入した核偏極試験セルを製作した。また、実際にレーザーを照射して光ポンピング実験を行いヘリウム3ガスの核偏極を確認した。 次に中性子スピンフィルターとして効率的に利用するためのガラスセルの開発を行った。核偏極ヘリウム3ガスを効率的に利用するには、セルに充填するガス圧を6気圧に高める必要がある。円筒形ガラスセルで高圧に耐えられるようにするには、ガラスを非常に厚くする必要がある。ガラスが厚くなれば中性子の透過度が低下し不都合である。この問題を解決するために、薄いガラスで高い充填圧力に耐えられる偏極ヘリウム3ガス用ガラスセルの設計を行った。有限要素法による応力計算で形状最適化を行い、従来の1/3の厚さのガラスで6気圧に耐えられるガラスセルの開発に成功した。これにより中性子透過度を高く保ちつつ、高い充填圧力のセルを作製する事が可能となった。これはin-situ方式偏極ヘリウム3ガス中性子スピンフィルター用としては世界初の成果でり、2014年に開催される国際会議「PNCMI2014(偏極中性子を用いた物性研究に関する国際会議)」にて発表を予定している。 次いで、偏極ヘリウム3ガス用磁気シールドの設計を行った。中性子実験では、偏極ヘリウム3ガスは強磁場環境装置と組み合わせて使用されることが想定されている。しかし、偏極ヘリウム3ガスは不均一磁場に非常に弱く、強磁場試料環境装置の近くでは数分程度で核偏極が失われ実用的ではないという課題があった。この問題解決に取り組み、最終的に7Tの強磁場環境装置のそばでも偏極ヘリウム3ガス中性子スピンフィルターを使用可能とする、小型で高性能な磁気シールドの開発に成功した。この磁気シールドにより、従来は数分で核偏極が失われるところを、100時間以上にのばすことが可能となった。この成果については、2013年度の日本中性子科学会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
偏極ヘリウム3ガス封入セルの製作を行い、ヘリウム3ガスの核偏極実験に成功したことで一定の成果を上げた。また、偏極ヘリウム3ガスを中性使用スピンフィルターとして効率的に利用するための高性能なガラスセルの開発に成功した。この成果は国際会議で発表する予定である。 また、偏極ヘリウム3ガス用の高性能磁気シールドを開発し、強磁場環境下での使用を可能とした。この成果は2013年日本中性子科学会で発表した。 このように一定の成果を上げた一方で、平成25年度は中性子利用実験を計画していたJ-PARCでハドロン事故が発生し、またJRR-3が停止しており、計画していた実験を行うことが出来なかった。これにより計画全体に無視できない遅延が発生した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、最終目標である循環型の高効率ヘリウム3ガス核スピン偏極システムの実機製作・性能評価を行う。昨年度開発した高圧対応のガラスセルと、磁場環境下での使用を可能とする磁気シールドと組み合わせ、高い偏極率で効率よく使用可能な偏極ヘリウム3ガス中性子スピンフィルターシステムを開発する。従来型のヘリウム3ガス偏極システムではアルカリ金属ガスの電子スピンを媒介してヘリウム3ガスの核スピンを偏極させるため、アルカリ金属を気化させる為にガスを高温にする必要があった。しかし、アルカリ金属ガスは反応性が高く取扱いが困難である。また、加熱のためシステムも大型化してしまう。そこで、本研究ではゼオライト中に形成されたアルカリ金属クラスターを媒介してリウム3ガスの核スピンを偏極させることとする。この方法ではアルカリ金属をガス化する必要がないので取扱いが容易で、シンプルなシステムの構築が可能となる計画である。 一方、これまではシステムの性能評価に中性子ビームを必要としていた。これが昨年度計画に遅延が発生した大きな原因である。しかし、JRR-3は年度内の再稼働が厳しい情勢であり、またJ-PARCのビームタイムは現時点では確保出来ていない。そこで、中性子ビームを使わずにヘリウム3ガスの核スピン偏極率を評価できるシステムの開発も併せて行う。本システムは核磁気共鳴(NMR)法によりヘリウム3ガスの核スピンを反転させ、その際に生ずる高周波信号を検波し、その振幅から偏極率を評価するものである。基本設計は既に完了しているので、急ぎ製作を行う。 製作したNMRシステムを利用し、製作した循環型ヘリウム3ガス核スピン偏極システムの評価を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で製作するヘリウム3ガス核スピン偏極システムは中性子ビームの効率的な偏極を目指しており、性能評価には中性子ビームの利用が不可欠である。しかし、研究用原子炉JRR-3は震災の影響で運転を停止しており、またJ-PARCはハドロン事故の影響で停止していた。このため、中性子ビームを利用したシステムの性能評価試験を予定通り実施することが出来ず、計画に無視できない遅延が発生したのが原因である。 今年度は、昨年度に施設側の事故により中性子ビームが利用でき無かったことが原因となり製作できなかった最終目標である循環型の高効率ヘリウム3ガス核スピン偏極システムの実機製作・性能評価を行う予定である。この製作に50万円を支出する。 従来、システムの性能評価には中性子ビームの利用が不可欠であったが、、JRR-3は年度内の再稼働が厳しい情勢であり、またJ-PARCのビームタイムは現時点では確保出来ていない。そこで、中性子ビームを使わずにヘリウム3ガスの核スピン偏極率を評価できるシステムの開発も併せて行う。本システムは核磁気共鳴(NMR)法によりヘリウム3ガスの核スピン偏極率を決定するものであり、既に電子回路、回路基板、DC電源など基本要素の設計は既に完了している。今年度はこのシステムを製作し、循環型ヘリウム3ガス核スピン偏極システムの評価を行う計画である。このNMRシステムシステムの製作に25万円を支出する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] In-situ SEOP型偏極3He中性子スピンフィルターの実用化に関する研究2014
Author(s)
吉良弘, 坂口佳史, 奥隆之, 酒井健二, 林田洋寿, 篠原武尚, 猪野隆, 有本靖, 大山研司, 中村充孝, 鈴木淳市, 清水裕彦, 新井正敏, 遠藤康夫, 加倉井和久
Organizer
物構研サイエンスフェスタ2013/第5回MLFシンポジウム/第31回PFシンポジウム
Place of Presentation
茨城県つくば市
Year and Date
20140318-20140319
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[Presentation] In-situ SEOP方式偏極3He中性子スピンフィルターの応用と磁気シールドの開発2014
Author(s)
吉良弘, 坂口佳史, 鈴木淳市, 奥隆之, 林田洋寿, 酒井健二, 中村充孝, 新井正敏, 遠藤康夫, 加倉井和久, 有本靖, 猪野隆, 大河原学, 大山研司, 清水裕彦
Organizer
物構研サイエンスフェスタ2013/第5回MLFシンポジウム/第31回PFシンポジウム
Place of Presentation
茨城県つくば市
Year and Date
20140318-20140319
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[Presentation] In-situ SEOP方式偏極3He中性子スピンフィルターの応用と磁気シールドの開発2013
Author(s)
吉良弘, 坂口佳史, 鈴木淳市, 奥隆之, 林田洋寿, 酒井健二, 中村充孝, 新井正敏, 遠藤康夫, 加倉井和久, 有本靖, 猪野隆, 大河原学, 大山研司, 清水裕彦
Organizer
日本中性子科学会第13回年会
Place of Presentation
千葉県柏市
Year and Date
20131212-20131213
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[Presentation] In-situ SEOP型偏極3He中性子スピンフィルターの実用化に関する研究2013
Author(s)
吉良弘, 坂口佳史, 奥隆之, 酒井健二, 林田洋寿, 篠原武尚、猪野隆, 有本靖, 大山研司, L-J Chang, 中村充孝, 鈴木淳市, 清水裕彦, 新井正敏, 遠藤康夫, 加倉井和久
Organizer
金研ワークショップ「偏極中性子非弾性散乱の新展開」
Place of Presentation
宮城県仙台市
Year and Date
20130612-20130613