2012 Fiscal Year Research-status Report
光応答性ナノシート積層膜が示すフォトメカニカル機能の機構解明
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24710108
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鍋谷 悠 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任助教 (50457826)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 分子系包接環境 / 人工筋肉 / フォトクロミズム / アゾベンゼン / 層状化合物 / ニオブ酸 |
Research Abstract |
平成24年度は、本研究のアゾベンゼン/ニオブ酸層状複合体に誘起されるナノシートスライドの機構解明に関して、最も重要な課題の1つである複合体のナノ構造解析を行った。今年度の研究実施計画として大きく複合化プロセスの解析と複合体の分子レベルでの微細構造解析に分けて研究を進め、光形態変化の機構解明に関する研究成果を得た。 アゾベンゼンとニオブ酸の複合化プロセスに関しては、熱重量分析による解析に加えてX線回折測定も行ったところ、アゾベンゼンのニオブ酸層間へのインターカレーションを追跡することに成功した。特に複合化途中の試料について時間の関数としてその層間距離を解析すると、層間距離が連続的に変化せず、初期段階で層間が大きく拡大し、その後、層間距離が安定した構造へ変化することを見出した。また光反応挙動を調べると、その安定化した構造をもつ試料でのみ可逆的に伸縮可能であるという結果を得た。つまりインターカレーションで初期段階から安定化した試料の構造がフォトメカニカル機能の発現に必要であることを明らかにした。 一方、その試料の微細構造をX線回折測定等で解析すると、アゾベンゼンの二分子膜構造や配向角が42度程度であることなどに加え、アルキル鎖部分が重なった微細構造を形成していることを明らかにした。ナノシートスライドではアゾベンゼン光反応時のコンフォメーション変化がシート間でどのように伝達するかが重要な点の1つであり、アゾベンゼンとニオブ酸の複合化により形態変化を誘起できる特殊な微細構造が形成可能であることを見出した。 本研究で解明した複合体の特殊な二分子膜構造は、ナノシートスライドなどの形態変化を誘起するためには極めて重要であり、また層状化合物との組み合わせにより微細構造を制御し機能を発現出来ることを示したことは、今後の光機能材料開発における基盤的研究としても大変意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではアゾベンゼンのトランス-シス光異性化反応によってニオブ酸ナノシートがスライドするというフォトメカニカル機能の発現メカニズム解明することが目的あり、平成24年度では複合体形成プロセスの追跡と微細構造の解明を計画した。現段階で光形態変化が誘起されるアゾベンゼン/ニオブ酸の複合体の微細構造を明らかにし、ほぼ計画通り研究を遂行することが出来ていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。 アゾベンゼン/ニオブ酸の複合体形成プロセスの追跡では、インターカレーションに伴う非連続的な二段階の構造変化を見出した。当初は連続的な構造変化を想定したが、研究を進めるにつれて二段階の変化があることが明らかになり、解析すべき構造が明確になることで光誘起形態変化に必要な構造解明へ向けてスムーズに研究展開出来たことが大きな理由の1つである。 また、微細構造解析に関してはX線回折だけでなく偏光分光測定や熱重量分析など多面的に解析し、量子化学計算に基づくアゾベンゼン分子の安定構造を用いて議論することで、分子レベルでの微細構造を検討した。特にアルキル鎖の重なりのある二分子膜構造など、光反応で誘起されるニオブ酸ナノシートスライドを理解する上で大変重要な微細構造を解明できたことは大変大きな成果であり、光反応前後での解析および動的な解析へつながる形で研究が進展していることから、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
光反応による形態変化を理解する場合、分子の分光学的情報とナノ構造の情報を合わせて議論することが必要不可欠である。今後の研究推進法策としては、X線回折測定装置内の試料固定部分に試料を設置したまま、光反応および分光測定が行えるように装置を組み込み、複合膜の光反応(吸収スペクトル測定)とX線回折パターンの測定を行う。光反応と同時に連続して構造変化が誘起されるのか、誘導期間などが存在するかなどに焦点を絞り、光量依存性や偏光を用いた実験を行い、反応と構造変化の相関を明らかにする。また、複合体の微細構造解析においてIR測定もかなり有効であるという結果を得たことから、IR測定も積極的に活用しながら、反応前後の差異を予め解析した上で、動的な解析に挑戦し、形態変化メカニズムの全体像を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
複合体のX線回折測定の実験を優先させたため、アゾベンゼン合成に必要な試薬、ガラス器具類の購入のための研究費を次年度に使用する状況が生じた。複合体作製時に必要な試薬やガラス器具に加えて、AFMカンチレバーやX線回折測定と分光測定を組み合わせるための光学部品類の購入のために使用する予定である。
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[Presentation] High Pressure Effect on Photo-isomerization and Molecular Assembly in Meso Porous Micro-environment2012
Author(s)
D. Yamamoto, M. A. H. Alamiry, V. Ramakrishnan, Y. Nabetani, T. Shimada, H. Tachibana, K. Yano, A. Harriman, H. Inoue
Organizer
7th Asian Photochemistry Conference 2012
Place of Presentation
Icho Kaikan, Osaka University, Japan
Year and Date
20121112-20121115
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