2012 Fiscal Year Research-status Report
原子分解能を有するHR-TEMによるカーボン及び金属複合体の充放電機構の解明
Project/Area Number |
24710122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
瓜田 幸幾 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40567666)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リチウムイオン二次電池 / キャパシタ / ナノカーボン / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
充放電過程を直接視覚的に捉えることで蓄電デバイスの理想的な電極構造の設計が可能であるという考えから,本研究ではゲストイオンとの反応に伴うホスト材料の構造変化,電極反応に寄与するホスト材料のサイズ効果,電極細孔(特に,マイクロ孔)内のゲストイオンの振る舞いを高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM)によって精緻に解明する事を目的としている。本年度は,次年度以降の超高分解能透過型電子顕微鏡によるSTEM-分析測定を遂行するために,1)ナノカーボン電極材料の創製と細孔構造及び電気化学特性評価,2)高分子結着剤を用いない電極材の検討,3) Sn, Siナノ粒子のカーボン材料への担持法の検討,4)HR-TEM測定環境の設定の達成を目指した。1)の内,グラファイトのLiイオン挿入脱離過程の解明に向けた薄層グラファイト創製方法については層状粘度鉱物を鋳型とし,数層からなる薄層グラファイトの合成を試みその可能性を見出せた。2)通常用いられる高分子結着剤ではHR-TEMによる微細構造評価を阻害する。そこで,単層カーボンナノチューブを結着剤として活物質との混合比及び集電体への圧着条件を検討し,電気化学測定及びHR-TEM観察を可能とした。3)コンバージョン反応による高容量化が期待できるSnO2のナノ粒子担持を液相・気相法の両面から検討を行った。液相法ではカーボン細孔内への担持,粒径の制御が困難であったが,気相法により直径2–3 nmのSnO2ナノ粒子の細孔内担持の手法を確立した。本手法は,硫黄/カーボンなどの他の複合体創製へ応用が期待できる。4)について,当初,冷却ホルダの使用を検討していたが,試料ドリフト,電子線損傷の面から今後の測定では用いないこととした。さらに,試料安定性の面から加速電圧及びホルダ,試料セッティング条件を精査し,既存のTEM内での測定が可能な条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要中の1)–4)の進行状況から上記のように評価を行った。 1)市販のカーボンナノチューブの細孔構造評価及びミクロ-マクロ細孔性カーボンの作製と細孔構造評価については達成することが出来た。欠陥構造を導入したカーボンナノチューブ及び薄層グラファイトは,さらに創製条件の精査と細孔構造評価評価が必要であり今後も継続して行う。2)単層カーボンナノチューブの使用により達成できた。3)Sn(申請時に検討)からより高容量化が期待できるSnO2へ変更したが,ナノ粒子の担持方法を確立出来た。Siについては,担持条件の十分な検討が出来ていないため今後も継続して行う。4)既存のTEM内での測定条件を見出すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度(初年度)の未達成部分のうち,層状粘度鉱物を鋳型とした薄層グラファイトの創製は創製メカニズムが十分に解明されていない新規手法であり,今後のLi挿入脱離反応を捉える上で重要であることから重点的に取り組む。組成の異なる層状粘度鉱物,炭素源の種類及び鋳型への導入方法について他の手法も検討し,グラフェン層数の制御を目指す。SnO2/ナノカーボン複合体電極は,任意の充電状態にした試料に対してXRD,TEM観察を行う。各電位状態にある電極材料に対してSn-Li合金化状態を明らかにし,ホスト材料のナノサイズ効果や充放電過程の考察を行う。 既存のTEMにおいて冷却ホルダの使用を検討していたが,試料の安定性の面から低温での測定は行わず通常のホルダを用いて充放電試料の観察を行う。また,次年度にSTEM-分析機器搭載のHR-STEM及びin-situ測定用試料ホルダの導入が予定されている。それらの設置完了後,即座に測定環境条件の検討を行う。当研究目的の一つである電極細孔内のゲストイオンの振る舞いについては,TEMによる直接観察に先立ち,マイクロ細孔径分布の異なるナノカーボン電極材料に電解液を含浸しLi-NMR測定及びRaman分光測定から細孔サイズと細孔内溶媒和状態の関係を調べる。さらに,次年度のin-situ測定用試料ホルダの使用をスムーズに行うため,フローキャパシタセルによる電気化学測定の予備実験を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
単層カーボンナノチューブがホスト材料及び結着材として必要である。安価な単層カーボンナノチューブでは,単層以外のカーボン物質が多量に含まれ十分な結着性能を示さず,電気化学特性結果に大きな振れ幅があるため使用出来ない。そこで,本研究では高価ではあるが確実に結果の出せる高純度単層カーボンナノチューブを用いる。さらに,電気化学測定に必要な電解液なども再生利用が出来ず高価である。他に電子顕微鏡観察用グリッド,NMR観察試料セルなどを多量に用いることから申請の通り物品費を計上してある。また,電子顕微鏡などの大型機器は共用設備であり,それらの利用費を計上し設備をスムーズに利用出来るようにしている。
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Research Products
(1 results)