2012 Fiscal Year Research-status Report
DNAの自己組織能を高分子材料のナノ構造の精密な制御・機能化に活かす
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24710125
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
田代 竜 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (00402785)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | DNA / ナノテクノロジー / 核酸化学 / 分子デバイス |
Research Abstract |
本研究では、π共役系化合物連結型DNAの合成を初年度に確立することを当初の目的としており、実際に次のような合成手法により、この目標を達成することができた。 修飾DNAであるウラシルに修飾を施したDNAと、ポリフェニレンエチニレン化合物などのπ共役系化合物とを薗頭カップリングを利用して連結させるという手法で研究を遂行した。初年度の研究で分かったことは、DNAの固相上でのカップリング反応が、この合成に有用であることが分かった。また、今回合成したπ共役系化合物-DNA複合体は青色の蛍光を発することが分かった。蛍光強度による電子移動の観測や、電極表面へ固定化することで直接的な電子移動の観測について検討を行う予定である。 この反応によりDNA塩基とπ共役系化合物とがアセチレンで直接接続したDNAの合成が可能となり、今後はπ共役系化合物-DNA間で電子の授受、立体的にπ共役系化合物を配位させることを次年度の目標とする。今回は、π共役系化合物空間配置およびπ共役系化合物-DNAによるナノネットワークの設計可能な長さをもつπ共役系化合物連結型DNAが合成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、π共役系化合物連結型DNAの合成を、まず確立した。芳香族をアセチレン基で結合したポリフェニレンエチニレン化合物などのπ共役系化合物をDNAのウラシル部分に連結させたDNAを合成した。具体的には、ポリフェニレンエチニレン化合物とDNAオリゴマーを、それぞれ薗頭カップリングを利用することで合成を行った。修飾DNAであるヨードウラシルを原料とし、DNAの配列で、リンカーとなるアセチレンと連結できるようあらかじめアセチレンをDNA鎖に導入しておくことが重要であることが分かった。DNAは固相合成法により合成を行い、カラスビーズから切り出す前に修飾DNA部位に連結しているπ共役系化合物間をグラーゼルカップリングにより、連結させる手法を開発した。反応後に問題なくガラスビーズからπ共役系化合物連結型DNAを切り出すことができた。この化合物は、申請者が合成するまでに報告されておらず新規化合物あり、その特性を詳細に検討していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したπ共役系化合物連結型DNAを用いて、DNAデバイスの機能化への応用について検討を行う予定である。π共役系化合物-DNAを用いて、特殊なナノ構造を形成させる。π共役系化合物-DNAのナノ構造が設計したとおりに形成されるのかを、DNAのTm(融解温度)を調べることで熱力学的な観測結果から判断する。また、π共役系化合物-DNAによるナノ構造形成はAFMなどを利用して、直接的に観測する。疎水的なπ共役系化合物を凝集せずにネットワーク化することが重要であり、そのためにπ共役系化合物の側鎖に親水性の官能基の導入をも検討していきたい。また、本研究において必要な電子移動の観測する実験系の確立についても同時に行う予定である。電子供与体と電子受容体をπ共役系化合物-DNAに導入し、電子移動の結果起こる蛍光の変化などを観測する。また、電極の表面に作成したナノ構造体を固定し、電子移動を直接的に観測することなども検討したい。異なるDNAの二次構造内では、塩基の重なりも著しく異なる場合が多いため、DNA構造の転移と共に高分子の空間配置も変化させることが可能となると考えられる。この際に、電子移動能に著しい違いが示されるのであれば、電子輸送の効率を変えるスイッチとして利用する。塩基の重なりが乱れると電子移動の効率が下がるので、タンパクなどの結合により起こるDNAの折れ曲がり構造により電子移動能を低下させることができると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
π共役化合物連結DNAを利用し、さまざまなDNAナノ構造体を合成するために、π共役化合物を修飾したDNAが大量に必要となる。特に、DNAの固相合成では収率を向上させるため、試薬を過剰に使用する必要が生じてくる。このため、材料を合成するためにDNA合成を中心とした試薬類の購入のために科研費を使用する。また、合成したDNAや化合物の精製にHPLCを使用する必要があるので、HPLCのカラムやHPLC観測のための流出溶媒(主にアセトニトリル)などの消耗品も必要となるため、これに予算を使用する予定である。初年度はDNAの固相合成のための試薬を購入したが、これらも十分であるとはいえないことが分かったので追加購入する。また、25年度にはゲル電気泳動のための試薬類が必要になる。これは、DNAのナノ構造体形成の確認をするために必要である。そこで、電気泳動に必要な装置一式と試薬類などを購入する予定である。また、25年度には、DNA切断酵素などの分析に必要な蛋白・酵素類を購入する。
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[Journal Article]2013
Author(s)
Morinaga, H.; Kizaki, S.; Takenaka, T.; Kanesato, S.; Sannohe, Y.; Tashiro, R.; Sugiyama, H.
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Journal Title
Bioorg. Med. Chem
Volume: 21
Pages: 466-469
DOI