2012 Fiscal Year Research-status Report
金属ナノロッドを活用した電気化学キャパシタの高エネルギー密度化
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24710128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
中西 英行 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (20619655)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノワイヤー / 陽極酸化アルミナ / 電気化学キャパシタ / ナノ材料化学 |
Research Abstract |
電気化学キャパシタ(ECs)は、大きな比表面積を有する電極と電解質溶液の界面に電気二重層を形成させて、電気エネルギーを貯蔵する。蓄電池と比較すると、ECsはイオンの物理的な吸着と脱着を利用して充電と放電を行うので、半永久的な動作寿命を持ち、大きな電力を摂取・供給することができる。しかし、ECsから取り出せるエネルギーの総量は蓄電池よりも低い。ECsの電極内部には様々な抵抗が存在し、貯蔵した電気エネルギーの一部は抵抗によって熱エネルギーとして失活してしまう。また、充放電速度が大きくなると、電極-電解質界面へのキャリア輸送が遅れ、電気二重層を形成することができなくなり、電力密度とエネルギー密度(静電容量)は減衰する問題がある。 本研究では、電荷キャリアの輸送に係る内部抵抗を抑制するために、陽極酸化アルミナと電解析出法を活用して、集電極表面から垂直に配向した金属ナノワイヤー電極を合成した。金属ナノワイヤーを電極に用いる事によって、金属固有の高い電気伝導率を活かしつつ、電気二重層を形成する界面に最短の距離で電荷キャリアを輸送する経路を構築した。その結果、金ナノワイヤー電極(直径:~180 nm;長さ:~25 um)から成るECsは、高い比静電容量・電力密度・エネルギー密度を有することが分かった。これらの値は、同一の評価方法を用いて公正な比較を行った結果、先行研究で得られているグラフェン電極から成るECsと同等かそれ以上の値であった。今後、ワイヤーの細線化を行い、電気二重層を形成する有効な界面の面積を増加させることによって、特性の向上を行う。その上で、可逆的な酸化還元反応を示すポリピロールなどをワイヤー上で電解重合して擬似的に静電容量を大きくし、エネルギー損失の少ない大容量のECsを創成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
陽極酸化アルミナをテンプレートに用いて、電解析出法を利用し、金ナノワイヤーの合成を行った。当初の計画通り、電析時の電荷量を制御することによって、長さが3umから25umの金ナノワイヤーを合成することができた。ナノワイヤー電極から成る電気化学キャパシタ(ECs)の特性は、サイクリックボルタンメトリーと定電流充放電測定を利用して、測定した。その結果、サイクリックボルタンメトリーでは、非常に速い電位の変化(~500V/s)に対して、矩形型のCV曲線を保持することが分かった。また、定電流充放電測定では、大きな電流密度においても、三角型の充放電曲線を示した。これらの結果は、金ナノワイヤーから成るECsの電極内部では、効率良く電荷キャリアが界面へ輸送されて、電気二重層を形成していることを示唆している。また、定電流充放電測定から得た比静電容量・電力密度・エネルギー密度は、先行研究で得られているデータと比較して、それ以上の値を示しており、金属ナノワイヤーがECsの電極に有用であると考えられた。以上の実験で用いたナノワイヤーは、直径が180nm程度であることがSEM観察から明らかになっているが、細孔サイズの小さい陽極酸化アルミナの開発によって、ワイヤーを細線化(直径:~20nm)することに成功しており、今後さらに特性の向上が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度は、細孔サイズの小さい陽極酸化アルミナの開発を行い、金属ナノワイヤーの細線化に取り組む。陽極酸化アルミナは種々の電解溶液中でアルミを陽極酸化して得ることができるが、ここでは、硫酸を用いて、電解電圧等を制御し、細孔径の小さいアルミナの創成に取り組む。アルミナの片方の面では、細孔が塞がっている(バリア層が存在する)ので、合成したアルミナをそのまま用いてナノワイヤーを電析することはできない。従って、先行研究を鑑みながら、バリア層の選択的なエッチングを行い、ナノワイヤーの電解析出を行っていく。以上の手法を用いて、様々な電極・細孔構造を有する金属ナノワイヤー電極を合成し、サイクリックボルタンメトリーと定電流充放電測定を行ってECsの特性を評価・比較し、内部抵抗を最小に抑制する電極・細孔の構造について検討する。具体的に、電流密度を変化させて定電流充放電測定を行い、充放電速度に対する静電容量の変化について調べる。一方、ナノワイヤーの表面積はCV曲線やBET測定によって求め、これらの実測の表面積とECsの特性から求められた表面積を比較し、すべての界面で電気二重層を形成する電極・細孔の構造を明らかにする。また同時に、IRドロップ測定とインピーダンス測定を行い、内部抵抗を定量的に評価する。以上の計測を行いながら、電極・細孔の構造が最適化された金属ナノワイヤーを構築していく。該当年度は、ナノワイヤーの細線化とECsの特性評価を行い、両者を比較することによって、内部抵抗が低く容量の大きいECsの電極・細孔の構造について検討する。当初、実験に必要なポテンショスタットとマイクロバランスを購入予定であったが、申請額よりも受領額が少なかったため、現在はこれらの装置を外部研究機関よりレンタルしている。当該年度と次年度の予算を合算してこれらの装置の購入を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請額よりも受領額が少なかったため、現在、外部研究機関よりレンタルした装置を用いて実験を行っている。当該年度と次年度の予算を合算して、当初購入を予定していたポテンショスタット/ガルバノスタットとマイクロバランスの購入を考えている。装置以外に、研究を行う上で、消耗品などの諸経費が必要になるので、研究の進捗状況を見極めながらこれらの装置の購入時期を検討する。
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