2012 Fiscal Year Research-status Report
走査電子顕微鏡法における二次電子像表面ポテンシャルコントラスト原理の解明
Project/Area Number |
24710130
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
熊谷 和博 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (20582042)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 走査電子顕微鏡 / 二次電子像 / 薄膜 / 表面ポテンシャル |
Research Abstract |
近年,半導体基板上に置かれた厚み数nmの薄膜試料のSEM二次電子像では,薄膜の形状ではなく,表面ポテンシャルを反映したコントラストが観察されるという報告がなされている.これに関して,半導体-薄膜接合を考慮したモデルが提唱されているが,充分な検証はなされていない.そこで,本課題では,走査電子顕微鏡(SEM)よる薄膜の二次電子像形成原理の解明を目的とした研究を行っている.平成24年度には,(1)SEM装置における二次電子検出特性測定の高度化,(2)組成傾斜をもったモデル薄膜試料の作製,(3)モデル試料の評価,(4)モデル試料のSEM観察を実施した. 以上の結果より,今回作製したモデル薄膜試料 (2 nm厚)においては,表面ポテンシャルよりもバルクとしての性質が強調された二次電子像が得られた.これは当初の予想に反するものであり,像形成モデルの妥当性について疑問が示された.今後系を変えながら類似試料を作製し,検討を進めていく必要がある.また,バルクと薄膜との境界がSEM観察においてどこに存在するのか,という研究課題も見いだされた.以下,各研究ステップの概要を記す. (1)金属多層膜の二次電子像コントラストの加速電圧依存性を調べ,参照スペクトルのデータと比較することで,二次電子検出器に捕らえられる二次電子エネルギー評価を行った.(2)コンビナトリアル・イオンビームスパッタデポジション法により,平面方向に組成傾斜をもった金属薄膜をp-およびn-Si基板上に製膜した.金属種はPt, Crである.SEM観察をおこなうため,膜の大きさは組成傾斜方向に対して2 mmとした.(3)上の通り調製した薄膜の厚さ分布をAFM,組成分布をXPSにて評価し,設計通り製膜がなされていることを確認した.(4)通常真空のSEM装置を用いて,二次電子検出条件の異なる複数の二次電子検出器で像観察を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モデル試料作製およびモデル試料評価については概ね計画通りであるが,SEM観察について遅れが生じている.当初利用を予定していた超高真空SEM装置が長期間の故障が生じたためである.代替装SEM置による観察も行ったが,二次電子検出系の特性が明らかでない為,参考データとしての位置づけにとどまっている.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に生じた超高真空SEM装置の故障により,一時研究が中断した.その期間中,研究費使用を見合わせていた為,研究費の繰り越しが生じている.超高真空SEM装置の修理の目処がついた為, 平成25年度はSEM観察の遅れを取り戻しつつ,実施計画に沿って研究を進めていく.また,研究代表者の所属機関が物質・材料研究機構から産業技術総合研究所に異動になったが,引き続き物質・材料研究機構には客員研究者として研究環境を確保している.産業技術総合研究所の研究環境と併せて,柔軟に自由度の高い実験を進めていく予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に発生した超高真空SEM装置故障による研究中断により,平成24年度に使用予定であった設備費を中心に繰り越しが生じている.超高真空SEM装置は平成25年5月には復旧する見通しがたったので,本年度はこれらの物品を早急に配備した上で,当初の計画に沿って研究費を使用する予定である.
|
Research Products
(3 results)