2012 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎治療を指向したカーボンナノチューブによる経口投与薬物送達
Project/Area Number |
24710133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 真紀 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 産総研特別研究員 (00568925)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ材料 / ナノホーン / 経口投与 / 潰瘍性大腸炎 / 薬物送達 |
Research Abstract |
本研究では、潰瘍性大腸炎の治療を目指して、カーボンナノチューブによる治療薬の経口投与薬物送達を行う。今年度はまず、薬物キャリアとして従来法で開孔したカーボンナノホーン(CNH)を、潰瘍性大腸炎の治療薬としてプレドニゾロン(PSL)を用いた。また、大腸炎モデルとして、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の自由飲水により大腸炎を惹起させたDSSマウスを用いた。 ①PSL担持CNH(PSL-CNH)の作製…既報に従い、slow combustion法、light assisted oxidation法の2種類の方法でCNHを開孔した。それぞれの開孔CNHにPSLを担持させてPSL-CNHを得た。 ②DSSマウスへのPSL投与量の検討・投与効果評価法の決定…PSL単体をDSSマウスへ経口投与し、効果が現れる投与量について検討すると共に、投与効果評価法についても検討した。PSLの投与量を、1, 5, 25 mg/kg/dayとし、マウスに飲水させるDSS溶液の濃度と投与期間を、既報に多い5%, 7日間に設定した結果、効果がほとんど見られず、死亡例も見られた。原因の1つとして、大腸炎を惹起するDSSの投与量が過量であったことが考えられ、今後、DSSの投与量(濃度、投与期間)も検討項目として必要であることが判明した。また、投与量の検討は、PSL単体とPSL-CNHでは薬物の動態が異なることから、今後はPSL-CNHを用いて行う方が良いと判断した。なお、投与効果の評価法として、体重・大腸長・下痢スコア・血便スコア(炎症軽減効果)、胸腺重量と体重の比(副作用軽減効果)を用いることとした。 ③PSL-CNH投与によるDSSマウスの炎症及び副作用軽減効果の検討…予備的な実験として、DSS溶液の濃度を変えて(3%, 4%, 5%)、PSL-CNHの経口投与実験を行ったが、効果は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験はほぼ計画通りに進行したが、予備的な実験でPSL-CNHの投与効果を確認することはできなかった。ただし、既報の開孔CNHは調製が容易であるものの、大腸の腸管壁に取り込まれるための仕掛けがないこと等の理由から、計画当初からこのような結果もある程度予想されていた。従って、今後は既報の開孔CNHを使用するのではなく、サイズ制御・構造修飾を施した新規薬剤キャリアの開発を進める必要があると判断した。 動物実験においては、当初検討項目に挙げていなかった、DSSの投与量(濃度、投与期間)についても検討が必要であること、また、投与量の検討においてPSL単体ではなくPSL-CNHを用いて行う方が良いことが分かり、今後の検討に時間を要することが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、来年度は、「CNHのサイズ制御・構造修飾による新規キャリアの開発と細胞実験による評価」を進め、大腸の腸管壁に取り込まれるような新しい薬剤キャリアの開発を目指す。その際、CNHのサイズ制御・構造修飾に加え、薬剤の内包量を増加させるためのCNHの表面積の向上についても検討項目に加える。また、構造修飾では、単純な構造の化学修飾だけでなく、高分子やその他材料との複合材料の導入も必要があれば検討する。さらに新規CNHキャリアの細胞実験での評価法について検討を行い、動物実験へと展開するキャリアの絞込みを行えるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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