2013 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎治療を指向したカーボンナノチューブによる経口投与薬物送達
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24710133
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 真紀 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究員 (00568925)
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Keywords | ナノ材料 / ナノホーン / 経口投与 / 潰瘍性大腸炎 / 薬物送達 |
Research Abstract |
本研究では、潰瘍性大腸炎の治療を目指して、カーボンナノホーン(CNH)による治療薬の経口投与薬物送達を行う。昨年度はまず、薬物キャリアとして従来法で開孔したCNHを用い、動物実験による検討を行った。その結果、構造修飾などを施した新たな薬剤キャリアの開発が必要であると判断した。今年度は、それを受けて、過酸化水素を用いたCNHの構造修飾(CNHへの酸化型官能基の導入)について、詳細な検討を行った。また、CNHキャリアの細胞実験による評価について予備的な検討を行った。 1.過酸化水素を用いたCNHの構造修飾…レーザーアブレーション法により生成させたCNH集合体には、ホーン型のCNHに加えて、層数の少ないグラファイト様シート(Graphite-Like Thin Sheet, GLS)が含まれる。このCNH集合体を室温で一定時間(1時間~28日)過酸化水素に浸漬させた。その結果、カルボキシル基、カルボニル基、キノン基などの酸化型官能基が、GLS端部、GLS平面部、CNH開孔縁部、CNH壁などに生じた。また、酸化型官能基の種類や量は浸漬時間により変化した。特に1時間という短時間の浸漬では、GLS端部が選択的にカルボキシル化することが判明した。今後、この酸化型官能基を反応部位として利用し、構造修飾を試みる予定である。 2.CNHキャリアの細胞内取込量の評価…大腸におけるCNHキャリアの腸管壁への取込の指標として、ヒト結腸癌由来細胞であるCaco-2に対するCNHの取込量を用いることとした。この取込量の定量について、PEG修飾を施したCNHを用いて予備的な検討を行った。具体的には、Caco-2を培養した培養皿に、CNHを添加し、一定時間経過後に細胞を回収、破砕した。この細胞破砕液に含まれるCNHの量をUV測定により算出した。今後、この定量法を新たなCNHキャリアの評価に用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の所内における所属部門の変更により、当初の計画に対して材料開発により重点を置く方針へと転換した。その中で、過酸化水素を用いたCNHの構造修飾に関する検討を重点的に行い、学会(第46回 フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム)にてその成果を発表し、学術論文(Carbon, 2014, 71, 70)への掲載も決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度より、研究代表者の所内における所属部門が変更したため、当初の計画に対して材料開発により重点を置く方針へと転換した。そのため、来年度は引き続き、「CNHの構造修飾による新しい薬剤キャリアの開発」を中心に検討を進める。単純な構造の化学修飾だけでなく、高分子やその他材料との複合材料についても検討する予定である。 作製したCNHキャリアに対しては、細胞(Caco-2)を用いて取込量の評価を行う。今年度、CNHキャリアのモデルとして、PEG修飾を施したCNHを用いて定量法を確立したが、構造修飾の違いにより定量が上手くいかない場合には、その都度再検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が任期付の職員に採用されたため、所属機関よりスタートアップ資金が支給され、それでまかなえる支出が多かった。 一方で、学生の配属される大学と異なり、産業技術総合研究所では、研究を迅速かつ効果的に進めるために実験補助者の雇用が不可欠となってきており、平成26年度以降に実験補助者の雇用を検討するため、支出は最低限に抑えた。 元々計上していた消耗品、旅費、役務の他に、人件費での使用を考えている。 ルーティーン作業の一部を委託するための実験補助者の雇用を予定しており、その雇用費として使用する予定である。
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