2012 Fiscal Year Research-status Report
ボトムアップ的手法による細胞集積型バイオマイクロデバイスの構築
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24710142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 伸彦 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (90342956)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 膵島 / 自己組織化 / バイオマイクロデバイス |
Research Abstract |
平成24年度は、研究計画に示した計画1、および計画2のそれぞれについて研究を進めた。 計画1は「メチルセルロースによる細胞・粒子迅速凝集法を用いてマルチコアーシェル構造を初期状態とした異種細胞凝集体を作製し、自己組織化の制御を試みる」となっている。種々の異種細胞の組み合わせを試した結果、特に膵α細胞株(α-TC1.6)と膵β細胞株(MIN6m9)に関しては、マウスの膵島の構造、すなわちβ細胞をコアとして、α細胞が断続的な一層のシェルをつくる構造に自発的に変化することを見出した。この自己組織化パターンに興味を覚えたため、グルコース応答性のインスリン分泌能を測定したところ、α細胞の存在によってインスリン分泌能が高まることが判明した。高いインスリン分泌能を有する膵島をつくることができれば、糖尿病治療における膵島ドナー不足を解決できる可能性がある。したがって、計画1については膵島再構築の制御に集中して研究を進めた。さらにインスリン分泌能を向上させるために、アルギン酸ハイドロゲルビーズを埋め込むことにより、多数のビーズを抱え込むマルチコアーシェル構造の構築を試みた。その結果、組織構造の変化と物質交換の改善によって、グルコース応答性インスリン分泌能が向上した。種々の改善を組み合わせると、細胞あたりのインスリン分泌能は20倍程度にまで活性化されており、バイオマイクロデバイスとして疑似膵島構築法を示せたと考えている。成果の一部は第12回日本再生医療学会総会で報告を行った。 計画2は「自己組織化簡易評価システムを利用して、自己組織化に関与する分子を同定し、この分子を操作することで自己組織化の制御を試みる」となっている。RhoやRacの野生型、構成的活性型あるいは優性阻害型の遺伝子の準備と、細胞への導入条件等を立ち上げることができたため、現在これらの分子の影響の調査を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画1については、異種細胞の自己組織化、マルチコアーシェル構造を持つ組織等の作製については達成できており、各種条件の変化によって構造の制御も可能になっているといえる。また、具体的な応用方法として、膵島の再構築という展開がみえており、構造だけでなくインスリン分泌能という機能の変化が生じることも明らかとした。論文はまだ投稿できていないが、データはほぼ揃っており準備を進めている。膵島再構築という、社会的にも注目度が高い研究へと進展している部分は高く評価できるが、当初目標では平成24年度中に投稿する予定であった論文がまだ準備中である。以上をあわせて判断し、計画は概ね順調に進展していると判断した。 計画2について、本格的な展開は計画1の後、つまり平成25年度と考えていたが、細胞への遺伝子導入方法の確立など、準備に時間がかかるものは、平成24年度に取り掛かる計画であった。この点についてはしっかりと事前検討ができ、また実際に遺伝子導入を行った実験に関して、プレリミナリな結果も得られている。したがって、当初の計画通りに進行している。 以上、計画1と計画2を総合して、「(2)おおむね順調に進展している」、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画1について論文を投稿する。また、国際学会で発表を行う。国際学会についてはすでに1件の申し込みが完了している。 計画2について、遺伝子導入実験を行い、予想する遺伝子の自己組織化への関与を調べる。現在、RhoとRac遺伝子について、各種変異体を用意して検討を行っている。また、申請書には記述していないが、RhoやRac遺伝子の関与がないと思われる場合は、インテグリン中和抗体などを用いる方法も計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に購入を予定していたインクジェットノズル制御装置について、信頼性などの評価のためにデモ使用などを行っていたが、平成25年度に購入することとする。 平成25年度は所属が変わることになったため、その他の購入予定も多少変化させざるをえない状況となり、現段階でも備品等より緊急で必要なものが生じる可能性があるが、状況を判断しながら購入を検討する。国際学会旅費は平成24年度は結果的に使用しなかったが、平成25年度に2件を予定している。
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