2012 Fiscal Year Research-status Report
集積化NEMS-LSI技術による高光効率・低消費電力可変カラーフィルタ
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24710143
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
高橋 一浩 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90549346)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | MEMS/NEMS / 導波モード共鳴 / 集積化CMOS-MEMS / 可変フィルタ |
Research Abstract |
H24年度は、低電圧駆動NEMS可変フィルタの製作、透過型フィルタの製作、および積層構造による光学特性向上の3点について研究を行った。各課題について以下にまとめる。 NEMSフィルタの低電圧化に向け、問題となっていた静電引力のクロストークを除去する構造の試作を行った。すなわち、従来は隣り合うサブ波長格子静電アクチュエータが異なる電位を持つ構造であったため、ユニット毎の可動電極をグラウンド接続するアクチュエータ構造を新たに提案した。このアクチュエータをサブ波長格子状に並べ動作させると隣接する可動格子は全て同電位であるため静電引力のクロストークは働かず、低電圧駆動とフィルタ全面での反射光変化の均一性を得ることができ、実験的に3.3 Vで動作するフィルタの開発に成功した。この駆動電圧は標準のCMOSの電源電圧と同じであるため、高電圧のプロセスを用いずに素子を動作することが可能となる。 前年度までに作製を行ってきたカラーフィルタは反射型であったが、より簡易な光学系を組めるよう、透過型フィルタの試作を行った。試作プロセスでは深堀りエッチングによる貫通孔を追加形成することによって光を透過させる方式を提案した。この構造をとることにより、アクチュエータ作製後に両面に金属薄膜を積層できるので、アクチュエータ作製後に新たな膜を追加することが可能となる。作製した透過型デバイスにおいて、800 nm付近の波長が3.2 Vで15%の透過率の変化を起こすことを確認した。 フィルタの光学特性向上に向けて、シリコンのアクチュエータ上に異種材料としてパリレンを積層する構造の試作を行った。低屈折率材料を用いることによって、スペクトルの半値幅を6 nm程度まで鋭くできることを解析的に確認した。また、パリレンは従来、異方性エッチングが困難であったが、サブ波長格子構造として形成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低消費電力、高光効率、高速動作のNEMS可変フィルタの作製を目的として、このうち動作電圧の低電圧化に成功している。3.3 Vで動作するフィルタの開発に成功したことにより、今後標準CMOS回路での動作が可能になる。機械的動作を行うデバイスでは高電圧駆動がボトルネックとなって、これまで標準CMOS回路との整合が取れなかった。一方本研究では、昨年度の成果により制御回路を含めたシステム全体の低消費電力化に向けた見通しを立てることができた。 光学特性の向上に向けて、機械的特性に優れるシリコンのアクチュエータ上に異種材料を積層するアプローチによって改善を試みている。一例として、波長選択性向上に有利な低屈折率材料のパリレンとシリコンを組み合わせた積層型サブ波長構造の作製に成功しており、鋭いスペクトルのフィルタが期待できる。また、基板貫通孔を形成した透過型フィルタの試作にも成功したため、追加の成膜によってサブ波長構造の裏面に異種材料を積層することも可能となり光学設計の拡張性を高めることができた。 高速動作に向けては、解析によって500 kHz程度の動作が可能であることが示唆されている。ただし、ナノ構造の変位を評価するための測定系を現在構築中で、H25年度中に試作したフィルタの高速動作を実証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、(1)金属・誘電体材料の積層デバイスによる光学特性向上と、(2)標準CMOS制御回路とNEMS可変フィルタの一体化を中心に研究を進める予定である。 (1)では、前年度に検討を行った低屈折率材料の積層により、半値幅10 nm以下のフィルタ開発を行う。また、変調帯域の拡大に向けては金属薄膜を追加することにより、光と電子の相互作用による光出力の増強を検討する。特に、高い表面プラズマ周波数を持つアルミニウムは短波長の光との共鳴が可能であることが知られており、アクチュエータと一体にすることにより、可変プラズモンフィルタの検討を行う。 (2)システムの低消費電力化に向けて、前年度までに用意した、0.35 umCMOSの パルス幅変調(PWM)制御回路とNEMSフィルタの一体化を行う。PWM回路の機能ブロックは、鋸波発生回路、低電流源回路、コンパレータ、バッファ回路が必要である。第一試作の回路には、コンパレータとバッファ回路を用意してあり、NEMSフィルタとの集積化プロセス手法の確立を優先する。また、PWM回路のフルモノリシック化に向けた検討も並行して行い、鋸波発生回路、低電流源回路、コンパレータ、バッファ回路の設計・試作を行う。回路の試作は、前年度と同様にウェハ支給が行われるNTT-ATの試作サービスを利用する。駆動回路の高精度化とNEMSデバイスの高機能化の2つのアプローチにより、超低消費電力・高速駆動ディスプレイ実現を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
NEMS可変フィルタの製作には、豊橋技術科学大学が所有する製造設備を利用する。したがって、プロセスに必要となる消耗品として、SOI基板と電子線レジストを購入予定である。SOI基板とは、犠牲層を埋め込んだサブ波長格子を製作する基板材料である。電子線レジストはNEMSの微細パタン描画用に塗布するマスク材である。また、駆動回路の試作費として、NTT-ATの集積化CMOS-MEMS用0.35 um CMOS相乗り試作費を計上している。この試作はウェハによる支給が可能なため、追加工によってNEMSフィルタを集積化することができる。
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