2012 Fiscal Year Research-status Report
孤立地域対応データベースの構築と孤立自治体対応マニュアル作成必要項目の抽出
Project/Area Number |
24710158
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 伸也 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (50426532)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 広域災害 / 中山間地 / ソーシャルメディア / 孤立集落 / 豪雨災害 |
Research Abstract |
本年度では、平成23年台風12号豪雨災害において孤立した事象と自治体をはじめとした組織の対応に関する記録や調査結果を時間や空間、サービス内容など様々な入力項目を設定した孤立地域対応データベース構築の第一段階として、ウェブで公開された情報を元データとしたデータベース構築を行った。具体的には、この豪雨災害で孤立した地域の一つである奈良県十津川村を対象地域として、ソーシャルメディアの一つであるtwitterの運用体制とアカウントに記載された地域の状況を収集し、様々な視点から分析を行った。 はじめに十津川村役場において役場としての対応と住民や外部との情報伝達手段の実態について調査した。十津川村役場では豪雨の時点で固定電話と携帯電話とインターネットが利用できなかったが、防災行政無線は利用できた。役場は無線機を用いて現地にいる消防隊員を経由して地域への情報伝達を行った。また奈良県との情報のやり取りもこの無線を用いて行った。twitterの運用も検討したが、職員の不足により運用する余裕がなかった。 そして村出身者が運用者となって村の被害/復旧状況と必要な支援に関する情報を発信したtwitterの個人アカウントで掲載された情報が他のユーザーに認知された量を拡散値として、情報発信経路と情報の種別の視点から分析した。その結果、口コミ情報より公的組織やマスメディアによる発信の方が拡散値が高いこと、被災地のガソリン不足や被災者の物資の要望についての話題について拡散値が高いこと等が明らかとなった。 そして大規模災害時において中山間地域にある複数の情報伝達手段の一つとしてのソーシャルメディアの位置づけに関する提案を行った。 また台風12号豪雨災害の概要についてはモンゴル国で開催されたUSMCA2012で発表し、都市の安全、とくに気候変動の研究者から意見があった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画にあるウェブで公開された情報を元データとしたデータベースの構築は、twitterで公開された情報によって行われている。データベースに設定する項目も計画にあるサービス内容に従っている。資料では読み取れない被災地での活動状況については現地でのインタビュー調査で補った。分析によって得られた成果は、今後の災害対応のうち特に孤立した地域からの情報発信に必要となるものであることから、データベースの元データがtwitterのものに限定されたものの、研究実施計画の想定を上回るものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
孤立地域対応データベースを地域で発生した事象と組織の対応の2つに分類し、それぞれ関連した組織、時間や空間など様々な視点からの分析を目的としたウェブベースのシステムのプロトタイプを構築する。既往の研究で、組織の対応について様々な視点からの分析が可能なシステムを構築しているが、今回はそのシステムをもとに地域で発生した事象と組織の対応の関連ができる機能を設定する。これにより、被災地で起こっている状況に対する対応の位置づけを評価できる。 地方自治体をはじめとした組織の対応を地域で発生した事象と比較しながら、役割分担と調整(組織デザイン)、業務内容とその段取り(業務プロセス)、および情報の取り扱い(情報マネージメント)の視点から分析し、孤立した地方自治体での対応マニュアルの作成に必要な項目を抽出することをねらいとしている。 はじめに対象地域の地域防災計画および防災マニュアルを孤立地域対応データベースと同じ入力項目でデータベース化する。そして孤立地域対応データベースの内容と比較しながら、組織デザイン、業務プロセス、情報マネージメントの視点から、地域防災計画の内容に不足している部分を抽出する。また、実際の組織の対応についても、先述の3つの視点から分析することによって、業務のボトルネックとなっている部分を把握でき、その改善点を抽出する。 そして上記の2段階から得られた内容について、実際に対応した職員にヒアリング調査、もしくは図上訓練をはじめとした演習を行い、現実の対応に適用できるかについて評価する。これら一連の手順を踏まえて抽出された内容が。孤立した地方自治体での対応マニュアルの作成に必要な項目である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はデータベースの元データをtwitterのみとしたこと、物品費として予定していたパソコンを研究機関にあるもので代用したことから、当初の研究費の使用計画より減少した。 次年度では、被災地域に本年度の成果を示すことをねらいとした携帯端末の購入と、被災地の状況に関する紙媒体の資料をデータベース化するために人件費・謝金として使用する予定である。
|