2012 Fiscal Year Research-status Report
生体侵襲を伴う医療業務の構造的可視化にもとづいた問題分析方法の開発
Project/Area Number |
24710159
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下野 僚子 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60609361)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 医療業務プロセス / 問題分析 / 標準化 / 医療の質保証 / 生体侵襲 |
Research Abstract |
医療の安全・質保証のため,医療業務における問題分析・対策立案を行うための様々な問題分析手法が提案されている.しかし,医療業務特有の複雑性を考慮した分析方法は確立しておらず,分析・対策の内容が,各医療機関の担当者の力量に依存しているのが現状である.本研究では,医療業務プロセスの構造的可視化に基づいて分析の観点を与えることで,従来よりも問題の発生状況を的確に把握し,問題分析を行う方法の開発を目的とする. 平成24年度は,医療機関との共同研究体制のもと,以下内容を実施した. ①全体像の把握:一般的な問題分析の手順である「問題発生状況の把握」「原因構造の解明」「対応の検討」に従い,各手順で用いる観点を検討した.「問題状況の把握」では,当該の医療業務プロセスが本来果たすべき機能を構造的に把握した上で,本来機能を果たしている状況と問題が発生した状況の差異を把握した.これにより,「原因構造の解明」では,当該の医療業務プロセスの機能達成を困難にする因子と,その因子が問題の発生・派生に至る因果連鎖を明らかにし,「対応の検討」では,因果連鎖を断ち切ることで対応できる. ②代表的な事例の選択・コンテンツの構築:生体侵襲性を伴う医療業務プロセスとして,「中心静脈カテーテル(CVC)挿入プロセス」を選択した.コンテンツの構築にあたって,下野らが提案する「病院業務プロセス記述モデル」による医療業務プロセスの構造的記述によるコンテンツの構築を行った. ③妥当性の検証:CVC挿入プロセスにおける不具合事例として,CVC誤挿入による不整脈を取り上げた.提案する観点を用いた分析により,問題発生時に機能不全に陥っていた構成要素を特定できたことから,「問題状況の把握」を的確かつ迅速に実施できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,平成24,25年度の2年間での実施を計画している.平成24年度は,問題分析方法の開発と妥当性の確認を,平成25年度は,問題分析ツールの開発と有用性の検証を行う. 平成24年度は,CVC挿入という生体侵襲性の高い医療処置について,本研究で提案する観点を用いることで,「問題状況の把握」を的確かつ迅速に行えることを確認できた.「問題状況の把握」の後の手順である「原因構造の解明」と「対応の検討」についても,業務プロセスの構造的記述による観点をもつことで,容易になると考えられる.方法全体としての妥当性の検証は今後行うため,「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,取り組むべき課題として,提案する問題分析の方法をプロスペクティブに検証できるよう,ツールの開発を行う必要がある.医療従事者の多くにとって,提案する方法が示す観点について理解は容易ではないとみられ,実装するには,事前教育などが必要となる.本研究では,今後の1年間で,提案方法の有用性の検証を目指すため,実現可能性の観点から,検証に用いる不具合事例を絞り込む方策をとる.事例の絞り込みにあたっては,生体侵襲を伴う・患者状態が変化するといった,医療業務の特徴を持つ業務プロセスを対象とし,不具合発生時に複雑な経緯をたどった事例を対象とする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に,医療機関訪問のための旅費と,成果を提示する学会発表・論文発表のための費用として使用する計画である.さらにデータの収集・分析のための作業補助者に対する作業謝金,必要に応じて作業補助者のノートPC購入のために,研究費を使用する計画である.
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Research Products
(9 results)