2012 Fiscal Year Research-status Report
口コミに関する脳情報を用いた購買意思決定支援システムの開発
Project/Area Number |
24710164
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
参沢 匡将 富山大学, その他の研究科, 准教授 (90398991)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ニューロマーケティング / Brain-computer Interface / 意思決定 |
Research Abstract |
本研究では,近年急速に発展している非侵襲的脳機能計測技術をニューロマーケティングに応用することを主目的とし,その1つとして口コミが脳活動に与える影響に関する基礎研究を行った. 本年度は口コミ閲覧時の脳活動をNIRS(OEG-16)を用いて計測する実験を行った.本実験で用いたNIRSは小型であり,この小型計測機器で十分な精度を得ることができれば,システムの小型化にも貢献することができると考えられる.まず,実験タスクに関して検討を行った.実験を行う際には商品に関する口コミ閲覧時に口コミ以外の要因(例えば、選好や価格)を排除しなければならない.そこで,実験用の商品として,映画を対象とした.映画はすべて価格が統一されているため,価格に関する影響が少なくなると考えられる.また,選好を排除するために,最初に映画のポスターを提示することで,予めどのような映画であるかを提示し,この時に選好に関する脳活動が現れるように工夫した. まず,予備実験として被験者は5名に対して実験を行った.この際口コミに関する評価を6段階にしたが,分析の結果,このような細かい評価では脳活動への影響がわかりにくいことが分かった.そこで,本実験では評価は「悪い(ネガティブ)」,「どちらでもない」,「良い(ポジティブ)」の3段階とした.被験者30名に対して実験を行い分析を行った.分析では,時間領域ではローパスフィルタによりノイズ除去を行った.また,周波数領域では低周波成分に着目した.評価が「良い」と「悪い」,「良い」「悪い」と「どちらでもない」の脳活動データ群に対してt検定を用いて分析した結果,個人差はあるものの有意な差がある部位があることが分かった.次年度はさらに,これらを判別することができるかの検討を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,口コミ閲覧時の脳活動を測定し,ポジティブな感情とネガティブな感情がどの部位に現れるかを特定することを主目的として研究を行った. 実験計画では,商品として映画を対象とすることで,価格に関する要因を排除することができたと考えられる.また,商品の提示方法を工夫することで,選好に関する要因を排除することができたと考えられる.また,口コミも1,2文程度を対象とするように要約を作成した.以上より,実験タスクとしては十分な検討を行い,実験用のプログラムを作成することができたと考えられる. 実験に関しては,まず予備実験によって,上記で作成した実験計画の検討を行った.その結果,口コミの評価を多くすると分析が難しくなる可能性があることが分かったため,口コミの評価を6段階から3段階に減らした.3段階の口コミ評価に対して被験者30名に対して実験を行った.当初の予定では50名であったが,予備実験をいれると35名に対して実験を行うことができたため,十分なデータが取得できたと考えられる. 分析に関しては,時間領域,周波数領域の2つの領域に関して分析を行った.どちらの領域もノイズと考えられる高周波成分を除去した.分析では良い口コミと悪い口コミなどに対してt検定を行った.その結果,有意な差がある部位があることが分かった.しかし,個人差などがあり,共通する特定の部位があるかについては十分な検討を行うことができなかった. 以上より,本年度の研究は研究目的に対して,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として,本年度の研究により,良い口コミと悪い口コミを閲覧している時には脳活動に違いがある可能性があることが分かったため,システムとして構築するためには,これらをシステムが自動で判別する必要があると考えられる.そのため,今後は脳活動から,口コミを閲覧した時に被験者が口コミに対してポジティブに感じているか,ネガティブに感じているかを判別するシステムを構築することを目的とする. まず,判別するためには,脳活動から特徴量を抽出する必要があるが,本年度に行ったt検定のほかに,主成分分析や感覚概念の導入など複数の特徴量について検討する予定である.さらに,時間領域,周波数領域の両方の領域について検討する.また,判別手法として,Support Vector Machine,隠れマルコフモデル,線形判別モデルなど複数のモデルにより検討する予定である.さらに,口コミに対する評価の度合いと脳活動に関する関係を再度検証し,ニューラルネットワークを用いて,評価の度合いも推定できるかを検討する予定である. 以上の検討に基づき,口コミ閲覧時の評価から,その被験者に対して他の商品を推薦したり,閲覧した商品群に対して順位づけを行うようなBrain-computer Interfaceの開発を行うことを最終的な目標として研究を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は実験被験者が予定より15名少なかったため,今後はできる限り多くの被験者に対して実験を行いたいと考えている.多くの実験を行うに伴い,NIRSの頭部につけるヘッドバンドやセンサの劣化が考えられるため,ヘッドバンドやセンサを新たに購入することを検討したいと考えている.また,研究成果をより多くの学会で発表したいと考えている. 以上の項目に対して研究費を使用する予定である.
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