2013 Fiscal Year Research-status Report
被災自治体における防災・防犯コミュニティ構築とローカルナレッジ形成に関する研究
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24710176
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 行真 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60455110)
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Keywords | コミュニティ / ローカルナレッジ / 防災 / 減災 / ソリューション |
Research Abstract |
本年度も引き続き被災コミュニティの実態に関する調査を実施した。昨年度から続くいわき市内沿岸部の薄磯・豊間区、隣接する双葉郡富岡町と楢葉町に加えて、いわき市内沿岸部の四倉地区である。四倉地区では2014年2月に地域住民組織の四倉町区長会といわき市四倉支所の協力を得て、全世帯対象のアンケート調査を実施した。調査項目はこれまでのものを踏襲し、「被災前の人づきあい、情報発信・共有、自治会活動」「避難した経緯、避難時の人づきあい」「現在の人づきあい、情報発信・共有、自治会活動」「今後の情報発信・共有に何を望んでいるか」「地域の伝承・言い伝え」、新たに「地域のレジリエンスに関する意識」を加えた。その他の地域については経年による変化を把握するために2回目以上の聞き取りを行いつつ、あらたなインフォーマントへのインタビュー調査も行った。以下、現段階の帰結を示す(詳細はhttp://tohokuurban.web.fc2.com/を参照)。 ローカルナレッジ形成と蓄積を「属人的」な取り組みにすることが厳しい結果をもたらすことは昨年度に明らかにした。それを「組織的」に行うためにはその土地に住まう人びとがつくりだしてきた意思決定や統治構造などの「かたち」に依拠すべきであり、避難方法などのあり方もそれに従うことを、いわき市沿岸部の取り組みから明らかにしつつある。 もう一つはコミュニティ・リーダーの発生経緯にはいくつか存在し、「震災前にリーダーだった人は震災後もリーダーである」ことが多く、少なくともリーダーという視点によるコミュニティの震災前後の断絶は見うけられないことを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における主なフィールドをいわき市沿岸部(主に薄磯区・豊間区、四倉町)、双葉郡富岡町・楢葉町に定めており、基礎的な文献調査やアンケート調査が完了している。インタビュー調査については延べ80名以上実施しており、予定をほぼ達成していると考える。具体的には申請書にある「避難やその後の生活の困難さの要因を主に「ローカルナレッジ」の消失や未形成によるコミュニティの弱体化に求め、定量/定性調査の両面により現状の諸課題を明らかにする」ことは現段階で一定の成果を得ている。 NPOや市民会議との関係については調査対象地を四倉町に絞り、区長会やNPO関係者への聞き取りのほか、住民に対するアンケート調査を実施し、新旧住民組織の復興への関与や評価を意思決定者(リーダー)だけでなく、一般住民からの視点も加えた集計・分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き福島県いわき市、双葉郡(富岡町、楢葉町等)出身で仮設住宅や借り上げ住宅入居者、更にいわき市内に臨時的な拠点を置く自治体を調査対象にする。 今年度は(1)ローカルナレッジ、コミュニティ、避難の関係、(2)避難者コミュニティの実態と変容、(3)地域の復興を推進する地域住民組織の比較の3つを軸に研究を展開するために、以下の方法で推進する。 (1)については津波被災地の薄磯区・豊間区(必要に応じて楢葉町・富岡町)に定め、意思決定者、一般住民などへのインタビュー調査を実施し、災害を含めた言い伝えやコミュニティ活動の津波避難に与える影響をこれまでに得られた仮説の検証も含めて明らかにする。(2)は25年度に実施した楢葉町や富岡町の仮設住宅、富岡町の広域自治会関係者やいわき市を含む一般の避難生活者へのインタビューを継続的かつ広範にすすめていくことで、コミュニティの実態と変容そして課題を明らかにするとともに、被災コミュニティのデザインとソリューションの方向を検討する。(3)については主にいわき市内沿岸部の四倉、豊間地区などにおける復興に関する住民組織(NPOよつくらぶ、海まち豊間市民会議)にフィールドを定め、地域の復興に向けた組織の役割と一般住民との関係、更には組織内の実態と(震災による)変容などを明らかにすることを通じて、旧来の「血縁・地縁型」とは異なる地域を牽引する組織のあり方を探求する。 上記の(1)~(3)をクロスオーバーさせることにより、被災コミュニティにおける防災・減災更には防犯に向けたローカルナレッジの役割とこれからのコミュニティの再構築をデザインとソリューションの視点で明らかにすることが可能であると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「旅費」については仙台~いわき往復の旅費が減ったためである。 「その他」については四倉町アンケート調査の発送(4,600部)が区長会の協力を得たことにより、想定より郵送費がかからなかったため。 物品費については調査データ保存のための記録媒体(HDDやフラッシュメモリ)やアンケート調査のための用紙や封筒や印刷のための用紙・インクなどに用いる。旅費については、学会発表のための旅費に充当する。人件費・謝金については、福島工業高等専門学校学生が行うアンケート調査回収後の入力や集計作業、更にはインタビュー調査などのとりまとめの際の学生への謝金等に充当する。その他についてはアンケート調査郵送料や年次報告書作成・印刷のために用いる。
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