2012 Fiscal Year Research-status Report
ロバストパラメータ設計における統計数理的方法論の開発
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24710177
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
河村 敏彦 統計数理研究所, データ科学研究系, 助教 (70435494)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本年度は統計的モデリングアプローチによるロバストパラメータ設計において3つの研究を行った。1つ目は、誤差因子に繰り返しがある場合の望目特性に対するパラメータ設計を行った。通常、SN比解析では制御因子の幅を技術的に意味のある範囲で広くとり常に1次モデルに限定して解析が行われてきた。このためにモデルのあてはまりの悪さなどによる影響で再現性の確保が困難になってしまう場合がある。そこで、本研究では積項や2次項を有する2次モデルを仮定し、平均・乖離・純誤差に分離した統計モデルを提案した。モデル選択後の設計は数理計画法に基づく探索的な最適設計を試みた。さらに「リーフスプリングス実験」の事例を用いて、その有効性を検証した。 2つ目は、動特性のパラメータ設計に対する統計モデルアプローチおよび設計による最適化手法を提案した。特性に対し制御因子と誤差因子の2次モデルを想定し、それぞれ切片のある比例式における統計モデルを構築した。これにより従来の動特性に対するSN比解析を拡張する。さらに降雪地域用タイヤの発泡ゴムの実験の事例を用いて、その方法論の有効性を検証した。3つ目は、特性が平均に効果の因子やバラツキの低減効果のある因子を選択するだけでなく、制御因子と誤差因子がどのような関係にあるのかを定量的に評価を行う方法論として応答モデリングが知られている。本研究では、制御因子の積項および誤差因子間の交互作用を考慮したモデルに拡張する。これら提案した方法論を用いて「レイヤーグロース実験」を用いて検証する。最後に、一般にシステムは複数の機能を持っている。SN比解析では、それをサブシステムに分解しそれらが独立に最適化が行われることが多い。しかし、実際には特性間のトレードオフの関係が多く存在する。このような多特性最適化に関して上記の3つの統計的モデリングに探索的設計を組み合わせた方法論が有効性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
得られた研究成果を論文にまとめ積極的に論文投稿および学会発表を行った。また、社会還元のため、学部・大学院向けのロバストパラメータ設計の専門書、産業界の技術者に向けた教科書の執筆を行った。また提案した方法論を実装するため統計解析および最適化のためのソフトウェアを開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
バラツキ低減化のアプローチの一つとして、平均とバラツキによる(L&D)モデルを想定し、有効な制御因子と誤差因子の交互作用を探索する方法論を提案する。これは応答曲面法を用いた平均とバラツキに対する同時に最適にするためのアプローチとほとんど同じ方法論である。しかしながら、L&Dモデルはいくつか問題点ある。その1つとして誤差因子を単なる繰り返しとみなし、バラツキとして純誤差を分離していないことがあげられる。本研究では、L&Dモデルを拡張しバラツキを乖離と純誤差に分離した平均・乖離・純誤差(LDE:Location-Divergence-Error)モデルを提案する。これにより乖離および純誤差を個別に扱うので統計的推測による特徴付けが可能となる。特に誤差因子の水準で純誤差の大きさが極端に異なる場合には個別に扱わなければならない。LDEモデルは複数の誤差因子がある場合にそれを1誤差因子多水準ではなく多元配置実験とみなす。これにより各誤差因子の主効果や因子間の交互作用を認識することが可能となる。なおLDEモデルでは制御因子が質的因子は主効果と交互作用を、量的因子では1次項のみならず積項や2次項(2次モデル)も対象とし変数選択によりモデルを決定する。SN比解析で用いられるSN比は、制御因子の水準間に優劣を与えるパフォーマンス測度として知られている。しかしながら、SN比を要約統計量として用いたときの情報縮約による損失、また誤差因子を繰り返しとみなすため複数の誤差因子が存在する場合には、どの因子がどの程度効果があるのかわからない。そこで、SN比ではなく特性そのものに対して、分散分析を用いて十分に交互作用パターンを吟味した上で、制御因子と誤差因子の間にどのような関係があるのかに興味がある。これにより、SN比解析に比べ情報損失することなく詳細な解析を行うことができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
統計的品質管理およびロバストパラメータ設計は、研究分野の性質上,理論と実践の両側面からの研究が必須である。旅費は国内外の研究打合せ、国際会議やシンポジウムの研究成果発表に必要となる(国内外旅費)。 また、産業界からのパラメータ設計による技術改善の取り組み、活動報告等を通じて両者の活発な意見交換の場が必要となる(国内旅費・研究協力)。経費の明細において「旅費」等が多いのはこのためである。「設備備品費」に関しては特に必要としない。 最終年度は、本研究に関する入門書・専門書および研究論文の執筆、関連するソフトウェアの開発を行い研究者や企業技術者等に配布し研究成果の普及を行う。
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