2013 Fiscal Year Annual Research Report
冬季の南岸低気圧に伴う層状性降水システム内の降雪と降雨の判別に関する研究
Project/Area Number |
24710204
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
佐野 哲也 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (90533589)
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Keywords | 南岸低気圧 / 層状性降水システム / 降雪と降雨 / X-バンドマルチパラメータレーダー / 甲府盆地 / 駿河湾 |
Research Abstract |
冬季の日本列島の太平洋沿岸では,温帯低気圧(南岸低気圧)に伴う層状性降水システムにより,降雪と降雨,それらの混在が広く分布する.そこで本研究では、南岸低気圧に伴う層状性降水システムの雲微物理学的構造の解明とそれに基づいた降雪と降雨を簡潔に判別する手法の提案を目的としている. 2012年度と2013年度の冬季(12月~翌年2月)に,山梨大学により甲府盆地内に,国土交通省により駿河湾沿岸に設置されたX-バンドマルチパラメータレーダー(X-MPR)により,駿河湾から甲府盆地を覆う南岸低気圧に伴う層状性降水システムが複数回観測された. 2013年1月14日に駿河湾沿岸に降雨を、甲府に最大積雪深10cmの降雪をもたらした降水システムについて,ブライトバンド(融解層)の駿河湾の上空高度1km付近での存在と,甲府盆地内の地表付近での出現と消滅が,X-MPRで観測された反射強度(ZH)と偏波間相互相関(ρHV)により示された. 甲府盆地内で降雨から降雪に変化するときの降水システムの構造と,気象官署甲府の地上気温(T)と水蒸気混合比(qv)の時間変化を解析した.盆地内へのブライトバンドより上層の降水の落下に伴い,甲府ではTが約5℃から降下し,qvは約3g/kg(相対湿度(RH)約60%)から増加し,降雨となった.その後ブライトバンドより上層からの降水は盆地内を満たし,Tは0℃付近まで降下し,qvは約4g/kg(RH 約95%)を維持して降雪となった.雪片の融解,その融解により形成した雨滴の蒸発による盆地内の冷却の加湿に伴って,盆地内の大気場が降雪を維持できる場に変化し,雪片が融解せずに盆地内に落下できたと考えられた. X-MPRの3次元観測によるブライトバンドの高度とそれを基にした地表にもたらされる降水の推定,そして降水システム通過前の地上の気温と水蒸気場の監視が,南岸低気圧に伴う層状性降水システム内の降雪と降雨の判別の簡易化に寄与すると考えられる.
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