2012 Fiscal Year Research-status Report
扇状地の構造物が土石流の氾濫・堆積に及ぼす影響-効果的な整備による防災対策検討-
Project/Area Number |
24710206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中谷 加奈 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80613801)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 土石流 / 扇状地 / 構造物 |
Research Abstract |
扇状地は上流で発生した土石流が流下した際に氾濫・堆積が起きやすい領域であるが、家屋などの構造物が存在すると影響を及ぼすと考えられる。精度よく被害状況を予測するには構造物の影響を確認する必要があるが、既往研究ではほとんど検討されていない。本研究では、土石流災害事例での構造物の影響の検討、実験、数値シミュレーションで、構造物が扇状地での土石流挙動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 具体的な被災事例として、平成24年に熊本県阿蘇市で発生した土石流災害について、氾濫範囲と家屋の破壊状況について構造物の影響を検討した。結果から堆積が集中している範囲の外縁がおおよそ破壊家屋で、構造物が土石流の土砂堆積に影響していることが判った。 また、構造物の影響を確認するために実験を行った。想定縮尺を1/50として、一般的と考えられる扇状地模型上で、家屋や塀の有無による水位・堆積厚変化を検討した。結果から、構造物によって氾濫範囲が横断方向に広がること、堆積が構造物の直上付近に集中することが確認された。実験と同様の条件で、土石流シミュレーションを実施した。結果から、構造物が存在することで氾濫範囲は流れに対して横断方向に広がり、堆積は構造物の直上付近に集中する傾向が確認され、実験結果と同じ傾向を示すことが確認できた。 以上より、構造物の存在が土石流挙動に影響を及ぼすことは明らかである。また、土石流の進路上に存在する構造物では土石流との接触面で土石流の氾濫範囲が横断方向に広がり、土砂堆積が局所的に大きくなる。更に、扇状地の上流側の家屋の塀の有無で氾濫の横断方向への広がりに違いが見られ、塀のある方がより広がることが判った。また、実験や計算結果から、塀が存在する条件では、塀と塀に囲まれた領域が土石流の流路となるため、対策には構造物の配置を考慮することが重要であることが分かる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、扇状地における構造物の存在が土石流の氾濫・堆積過程に与える影響について、次の三項目を検討することを予定していた。 1.既往の扇状地での土石流災害の航空写真や災害前後の河床位・水深変動のデータ収集 2.家屋などの面的に存在する構造物高さの影響による氾濫・堆積過程の変化 3.塀や道路側溝などの線構造物が存在することによる流動・堆積方向の変化 1.では、熊本県阿蘇市で発生した土石流災害について、災害後の航空写真や氾濫・堆積結果のデータを収集し、災害状況やの構造物の影響を確認した。特に、家屋の存在による堆積厚分布や土石流の流動方向の変化を確認することができた。2.ならびに3.では、地形模型実験や土石流数値シミュレーションによって、家屋や塀などの構造物の有無による氾濫・流動・堆積過程の差を検討した。特に、これまで検討例がほとんどなかった塀の影響による扇状地での水位・堆積厚変化についてのデータを実験で取得することができた。特に、塀が存在する条件では、塀と塀に囲まれた領域が土石流の流路となり、より下流の方まで土石流が流下することがあるのが確認された。実災害事例においても、土石流が道路や流路に沿って流下する現象は見られており、被害を軽減するためには構造物の配置を考慮することが重要であることが示された。また、構造物の存在によって、土石流の扇状地での流動や堆積過程が変化することが数値シミュレーションにおいても確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
大きな流体力による構造物の破壊が土石流の氾濫・堆積過程に与える影響について、次の三項目を検討する。 1.構造物の破壊が生じる限界の流体力の検証 2.構造物の破壊で生じる地形変化が流動・堆積に及ぼす影響 3.破壊された構造物の流出・堆積過程での影響 1.では、既往研究や災害事例から、家屋の破壊限界となる流体力を検証する。土石流災害事例だけでなく、異なる分野の自然災害(地震、津波、風害など)による家屋破壊限界についても参考とするために情報収集を行う。一方で、これまで研究対象とされたのは木造家屋が中心であり、近年増加した鉄筋・鉄骨の家屋は、木造家屋よりも大きな流体力に耐えられる。しかし、破壊された場合は、重量や密度が大きいことや、より大きな流体力によって破壊されたことで、残骸の流出過程や地形変化による流動・堆積過程は、木造家屋よりも大きく影響すると考えられる。そこで、構造物の材料や構造による強度の違いについて情報収集して、地形模型実験を行うことで、目安となる流体力を評価する。また、破壊された際の流出過程や再び堆積する過程を記録する。2.では、1.で得た破壊限界となる流体力を閾値として、数値シミュレーションを実施する。家屋等の面構造物だけでなく、塀などの線構造物についても、一定の流体力がかかったときには、構造物が破壊されて地形変化が生じたと考える。閾値となる流体力の違いによる、扇状地での影響についても評価して、1.から得られた限界流体力の妥当性を検証する。3.では、実験で得られた知見を元に、数値シミュレーションモデルに簡易的な巨礫の発生等として、構造物の流出・堆積過程をシミュレーションモデルに反映する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Presentation] Study on influence of houses existence on debris flow flooding and deposition2012
Author(s)
Nakatani, K., Okuyama, Y., Hasegawa, Y., Satofuka, Y., Mizuyama, T.
Organizer
2012 International Debris-Flow Workshop
Place of Presentation
Celebrity Ruicheng Hotel, Chengdu, China
Year and Date
20120811-20120812
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