2012 Fiscal Year Research-status Report
堤防自主決壊による洪水氾濫水の早期排水支援システムの構築
Project/Area Number |
24710207
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
佐藤 裕和 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (90609364)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 治水 / 自主決壊 / 氾濫水の河道還元 |
Research Abstract |
平成24年度は、自主決壊に関する文献や資史料調査を行い、過去の自主決壊事例の現地調査と地形測量を実施した。現地調査は、昭和41年水害の阿賀野川・新井郷川、平成7年水害の鳥居川、同じく平成7年水害の旧矢代川、平成16年水害時に中之島川で実施された自主決壊について行い、その経緯や実態などを把握できた。また、平成23年9月に紀伊半島で発生した激甚水害のうち、新宮川左支川相野谷川での水害形態に着目して現地調査を実施した。相野谷川は、新宮川からの逆流が著しく、セミバック堤による治水方式が採用されており、洪水中の排水がポンプによるしかなく、3集落に輪中堤が整備されている。このとき、輪中内が冠水した高野地区で堤防が逆破堤し、輪中内の氾濫水が河道還元され、自主決壊の氾濫水還元と同等の効果を得たと考えられた。そのため、ここではRTK-GPS測量システムを用いた地形測量を実施した。このデータは内外水氾濫解析と破堤シミュレーションのための基礎資料として活用する。さらに、地形測量は氾濫水の排水手段に乏しい相野谷川流域全体に拡張して行っており、既往最大水位を観測したとされる明治22年水害時からの河川整備の効果を把握することができた。すなわち、相野谷川のセミバック堤により下流域では氾濫水位が明治22年水害時よりも低かったが、上流域では明治22年の氾濫水位と同程度で、洪水の外力としては明治22年に相当するものであったことがわかった。このような激甚水害時には、例えば、新宮川の洪水中はセミバック堤方式を前提にしながら、新宮川水位の低下とともに合流部の鮒田水門を切って、ポンプ排水と併用することで相野谷川流域全体の排水時間を短縮できるのではないかと考えられた。これは、地形測量データの解析とともに数値シミュレーションを行い、氾濫水の早期排水支援システムの構築のためのシナリオ分析のひとつに利用できうる成果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで過去の自主決壊に関する現地調査および地形測量は順調に実施しているが、取得データの解析と数値シミュレーションモデルの構築については未完のため。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去の自主決壊事例の現地調査と地形測量を必要に応じて追加するとともに、取得済みの地形データの解析と数値シミュレーションモデル構築する。そして、洪水氾濫水の早期排水支援システムを完成させ、水害の軽減に対する貢献をはかっていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、前年度から約10万円の繰越があるが、この理由は、地形測量時の通信費が特定の時間内であれば無償であり、この時間内での測量を積極的に利用したことによるところが大きいことと、若干の現地調査の未完了があったためである。 この繰越分については、現地調査費、また当該研究に関連するような水害が生じればそのための現地調査にあてる計画である。 平成25年度の当初予算90万円については、上記繰越分で不足分の現地調査や地形測量(40万円)、解析ソフトの導入(20万円)、またこれらのデータ整理や解析の補助作業人件費(5万円)、データ保存用媒体購入や通信費などの雑費(25万円)のように使用する計画である。
|