2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24710208
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
地下 まゆみ 大阪大谷大学, 教育学部, 講師 (20406804)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 土砂災害 / 細粒物質の運搬 |
Research Abstract |
表層崩壊と深層崩壊のメカニズムが異なることが報告されている。いずれにおいても誘因として降雨や地震、素因として地質や地形が挙げられる。表層崩壊は急傾斜の崖で発生し、崩壊が山地にて多発すると大規模な土石流となり、甚大な被害を引き起こす。緩斜面においては深層崩壊が発生しやすく、地下水との関係が指摘されている。雨水が土中に浸透した後の地下水の挙動は非常に複雑であり、地下水面や地すべり面を把握することは難しい。本研究では地すべり地における地下水の挙動と地質・鉱物学的変化の関係を室内実験・現地調査により検討し、地すべり地評価の精度向上を目的とし研究を行うこととした。 本年度は、自然斜面における細粒物質の生成と運搬メカニズムを推定するために、疑似斜面を用いた室内実験にて使用する物質や物理的条件の検討を行うこととした。まず崩壊が発生した場所の地質・地形、物理的条件、気象条件のデータ収集を行い、主要な造岩鉱物である石英と地すべりの素因となる粘土鉱物(スメクタイト)などを用いて地すべり地の疑似斜面を作成することとした。この疑似斜面にて崩壊実験を行うが、使用する物質や物理的条件は実際の自然斜面での崩壊現場に可能なかぎり類似することが望ましいが、地すべりの疑似斜面は、崩積土や風化土から成る透水層および基盤の不透水層の2層構成を想定することとした。石英と粘土鉱物の量比を調整し透水係数を変更する、土砂災害危険情報が発令される降水量の時間雨量や積算雨量を想定するなど条件を変化・工夫し、崩壊実験後の地層の含有粘土鉱物の割合の変化、透水層と不透水層の境界部の変化、浸透水・地下水の水質の変化に着目し、鉱物粒子の観察や土壌・水質の化学分析手法について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の計画では、地すべり地の疑似斜面を作成し、崩壊実験を行い、地層の含有粘土鉱物の割合の変化、透水層と不透水層の境界部の変化、浸透水・地下水の水質の変化に着目して、他大学・他機関の設置機器を使用し、鉱物粒子の観察や土壌・水質の化学分析を行う予定であったが、計画よりやや遅れている状態である。その理由は、平成24年度4月より所属先が変更となり、前所属機関や他機関等の機器の使用手続きなどを含め、現所属機関での研究環境を新しく設置、整備しなければならず、研究環境を整えるまでに想定以上の時間を有したためである。環境整備を行う一方で、自然斜面に類似した疑似斜面の設定条件を整理し、崩壊現場の調査を行い、他の研究者からの意見を参考に、疑似斜面の作成に関して本来の計画の順番を入れ替え、まず、ある地すべりが発生した自然斜面を選定し、その斜面に類似した疑似斜面を作成する計画で進行している。そのため必要物品の購入などの時期が変更となっている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では作成した疑似斜面の模式地となる自然斜面を選定し、湧水や土壌を採取・分析し、室内実験の結果と自然斜面における地すべり現象の比較を行うことを想定していたが、ある自然斜面を先に選定し、地形・地質条件が類似した疑似斜面を検討、作成し、崩壊実験後の地層の含有粘土鉱物の割合の変化、透水層と不透水層の境界部の変化、浸透水・地下水の水質の変化に着目し、分析を行う。自然斜面における地すべり現象との比較のために、必要であれば疑似斜面の物理的条件を変更した実験を追加し、総合的な結果が得られた後、地下水面の推定方法・細粒物質の運搬メカニズムについて検討し、成果の発表を行う。これまでの地すべりの研究において粘土鉱物、特に膨潤性粘土鉱物の存在が素因として指摘されているが、自然斜面における地下水と粘土鉱物の交換性陽イオンの変化や細粒物質の運搬については明らかにされていない。疑似斜面を用いた室内実験および地すべりが発生した自然斜面において地下水と鉱物中の陽イオンの交換反応を分析することにより、地下水面の推定手法や細粒物質の地下水による運搬メカニズムについて検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は室内実験と野外調査が必要であるため、物品購入として疑似斜面の作成、および崩壊実験中の土質・水質の測定機器(硬度計やpH計など)のほか、データの保存媒体を購入し、自然斜面においても同様に測定を行う。疑似斜面を作成する際の物理的条件の項目をいくつか変化させ崩壊実験を行うため、数個の疑似斜面を同時に作成する予定である。また、疑似斜面と自然崩壊斜面での水質・土質の変化を調べるために、水質・鉱物学的分析を行わなければならない。水質・鉱物学的分析を他機関等で行う際の機器使用料、国内旅費のほか、分析に必要な薬品や標準資料等を購入する予定である。すでに他機関にて機器使用許可は得ているが、使用状況によっては分析計画を変更する必要も生じるため、分析試料の保管庫を購入し対応する予定である。
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