2012 Fiscal Year Research-status Report
気候変動に伴う全球洪水氾濫リスクの標準化及びリスク評価システム構築
Project/Area Number |
24710211
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
郭 栄珠 独立行政法人土木研究所, 水災害・リスクマネジメント国際センター, 研究員 (60586642)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 洪水リスク / ハザード(Flood Hazard) / 洪水浸水深モデル / 気候変動 |
Research Abstract |
将来的に、気候変動が全球洪水リスクに及ぼす影響を明らかにすることが重要となってくる。よって平成24年度には、洪水リスク評価標準モデルを開発した。洪水によって危険に曝される領域であるハザード(H; Flood Hazard)、危険に曝される人口や資産(E; Exposure)、水災害による社会の被害の受けやすさ(SS; Social Susceptibility)を一般因子の関数として標準化した事例を試みた。同時に、河川流域での洪水被害をもたらす直接的な重要要因となる洪水ハザードを評価し、その洪水浸水深モデル(Flood Inundation Depth:FID)を開発した。次に、社会の被害の脆弱性を考慮した一般因子をER-DATとUNデータベースから選び、最も強い影響を与える因子(早期警報指数、栄養指数など)を求めた後、それをアジアの15カ国へ適用し洪水災害リスクを評価した。 本研究の洪水ハザード予測の妥当性を明らかにするため、対象地域であるアジア諸国の中から、2010年8月に発生したパキスタン・インダス川流域の大洪水と2011年10月に発生したタイ・チャオプラヤ川の下流部の大洪水を基に洪水浸水深モデルの計算を行った。さらに地球観測衛星データMODIS(水平分解能500m)とALOSPALSAR・AVNIR(水平分解能15~30m)画像から最大浸水域を抽出し、現在の洪水氾濫脆弱性の現実性を確認した。これにより、氾濫域を短時間(準リアルタイム、12時間)に計算・抽出でき、全球の洪水リスクとして十分な精度も高めることができた。洪水ハザードから洪水災害リスクまでの一連の研究の流れをつくるためには、本研究のような特定の脆弱地域研究へ連続的につながるアプローチが重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では以下のように進む予定であった。(1)世界洪水の実態把握(2)全球洪水リスク評価標準モデルの開発と検証(3)全球浸水位指標と洪水リスクの変化予測(4)全球洪水リスク評価システム構築(実用化) 現在までに、(1)洪水の実態把握と(2)全球洪水リスク評価標準モデルの開発と検証の結果を達成したが、今後はアジア域を対象地域にする。 (1)洪水リスク評価標準モデルを開発(平成24年度研究計画):気候変動を考慮した全球氾濫リスクを評価するため、初めに研究代表者が提案した単純な地形空間分布モデル、浸水ポテンシャルモデル (FID)を開発した。次に、社会の被害の脆弱性を考慮した因子を求め、アジアの15カ国へ適用した。その結果の一部を国際論文(査読有り)、国際・国内学会(査読有り)などで発表した。 (2)各国の氾濫源における洪水被災リスクの推定と検証(平成25年度研究計画):各国の検証を25年度に図る予定であったが、2010年のパキスタン・インダス川流域の大洪水とタイ国・チャオプラヤ川の大洪水など、全球スケールの大規模な洪水災害の実例があったため、予定を変更し洪水の実態把握(観測水文データ)・検証(衛星画像利用)・分析を24年度に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 全球洪水リスク評価標準モデルの改善と検証(アジアの大河川を中心に行う) (2) アジアの氾濫源における洪水災害リスクの推定と検証(実態把握) (1)25年度も引き続き、洪水リスク評価標準モデルを修正しながらリスクモデル改善を行う。アジア流域が空間的、面的な浸水範囲をカバーできるモデルであるならば、全球にも予測可能なモデルへ展開できるという仮定の基に、地域性を考慮しながら洪水予測を進める。地域性を知るため、事前に洪水関連データ(写真、Google、ICHARMが保有している水文観測データなど)と地球観測衛星データ(MODIS:水平分解能500m、比較的に高分解能画像のIKONOS:水平分解能1m、合成開口レーダ(SAR:水平分解能30m)、ALOSなど)の画像を分析し、氾濫範囲と浸水状況を把握してから現地水害調査し、必要な洪水被害情報を得る。 (2)氾濫モデルから推定した最大洪水氾濫域の成果については、研究期間中大洪水が発生した場合には現地水害調査とともに浸水域を検証する予定である。このように事例検証データを蓄積し、洪水リスクの妥当性について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データのストレジ購入-全球データベースとアジア域の氾濫シミュレーションの結果など、膨大なデータを保存するストレジ購入の費用を計上している。 衛星画像の購入-MODISはウェブからダウンロード可能な無料データであるが、高分解能の衛星画像(IKONOSやALOSやSARなど)は入手に費用が発生するため計上している。 現地水害調査(浸水範囲と被害)-洪水リスク評価標準モデルの改善と検証のため、毎年カンボジアあるいはバングラデシュの氾濫源における洪水および水害現況調査を行い、GPS(精密位置記録)、分光器(衛星画像の反射率を測定)など観測装備を用いて事例検証データを蓄積する。同様に、地球観測衛星データから抽出した浸水域も検証する。 投稿料(論文成果報告)-毎年1件以上、国際論文投稿(IEEE Journal of Selected Topics in Applied Earth Observations and Remote Sensing” (JSTARS), IEEE, SCI Journal, Impact factor=1.5 &Water Resource Management, Springer, SCI Journal, Impact factor=2.1)、国際会議発表(IGRASS)など世界へ研究成果を発信する。
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Research Products
(5 results)