2013 Fiscal Year Research-status Report
気候変動に伴う全球洪水氾濫リスクの標準化及びリスク評価システム構築
Project/Area Number |
24710211
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
郭 栄珠 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (60586642)
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Keywords | 洪水リスク / 洪水浸水深モデル / 気候変動 / WEB-GIS |
Research Abstract |
1.全球洪水リスク評価標準モデルの開発 (1)洪水リスク評価に必要なハザード要素(洪水浸水深モデル=FID)改善:全球規模での洪水リスクを簡便に評価できるシステム構築のため、FID (水平分解能;約500m) 計算は、空間解像度を高め、堤防・ダム等河川管理施設を反映する改良の後、アジア大陸に適用した。FIDモデルによるバングラデシュでの既往最大規模(50年確率流量)の洪水氾濫域と衛星画像から抽出した浸水域(MODIS:2004年、2007年、ALOS AVNIR:2007年、水平分解能;約15m)との一致の有無を測定した。特にシラジゴンジ地区内で、2007年最も水害が大きかった2箇所の水害調査(分光器+GPS観測、聞き取り調査)を9月に行い、FID計算を見直すことになった。 (2)大規模洪水による時・空間的な浸水範囲の抽出精度向上:MODIS画像からMLSWIを用いて一次浸水域を抽出した上、DEMと組み合わせて二次浸水域を抽出する新たな手法を開発し、三次元的な浸水域の判読精度を改善した。また、時系列データを用いて200km以上の広範囲にわたる大洪水に対して、最大洪水浸水域の全体像も1日遅れで把握できた。 2.全球浸水深指標と洪水リスクの変化予測 (1) 洪水リスク評価システムに利用する因子データを構築:因子分析により、社会的・経済的脆弱性指数として、人口比率、早期警戒制度、森林変化率、政治の安定化指数が代表的となった。事例研究として、フィリピン共和国とネパールとのリスクを比較し、洪水災害リスクが最も高かったバングラデシュの洪水ハザードから農業被害まで評価した。 (2) WEB-GIS環境をつくるため情報収集:米国地質調査局USGSが開発した米国国内の洪水ウェブマッピングシステムFIM;高度なWEB-GIS技術による氾濫シミュレーションシステムについて情報交換および開発現況を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気象庁モデルによる降水量と河川流出モデル(BTOPモデル)の計算が多少遅れているが、現在のところ、(1)洪水リスク評価標準モデルの改善およびアジア域である洪水事例に基づいて検証、(2)アジア域の浸水深変化の増加傾向の結果まで達成できた。 (1.1)洪水リスク評価標準モデルの改善および氾濫源における洪水の検証:社会の被害の脆弱性を示す特定因子を求め、アジアの15カ国にこのモデルを適用した。アジアの15カ国の洪水氾濫域検証は、平成25年度まで2010年のパキスタン・インダス川流域、2011年タイ国・チャオプラヤ川流域、2011年フィリピン共和国・パンパンガ川流域、ネパール全国、2011年メコン川・カンボジア氾濫源、2007年バングラデシュ・ブラマプトラ川の大洪水のように、全球スケールの大規模な洪水災害の実態把握(観測水文データ)・氾濫域比較分析・MOIDS(準リアルタイム) やALOS AVNIRなど衛星画像を用いる実例研究を行った。 (2.1)全球浸水位指標と洪水リスクの変化予測:気候変動を考慮した計算が多少遅れているが、MRI-AGCM3S(SRES A1B)シナリオのみで適用し、浸水ポテンシャルモデル(FID)によりアジア域の浸水深変化が21世紀末に増加する傾向が確認できた。洪水リスクやDRMの最新の動きやリスク指標などについて世界銀行防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)のリスク担当者三宅氏らと情報を交換した。 (2.2)全球洪水リスク評価システム構築:WEB-GIS環境をつくるため情報収集:米国地質調査局(USGS)が開発した米国国内の洪水ウェブマッピングシステム(FIM) について情報交換および開発現況を把握した。今まで高度なWEB-GIS技術の氾濫シミュレーションシステムである。 平成25年度達成結果の一部を国際論文(査読有り)で2件掲載、1件掲載確定、1件発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)全球洪水リスク評価標準モデルの改善と検証(アジアの主要河川を中心に):平成26年度も引き続き、洪水リスク評価標準モデルを修正しながら現在の洪水氾濫脆弱性の現実性を確かめる。特に、浸水解析の再現性(洪水氾濫条件と状況)を検証することにより未来予測も可能で、アジアの主要河川が流れる15カ国において地域の洪水特徴を考慮しながら洪水予測を進める。その検証のため、多時期の地球観測衛星データも同様に有効に使いながら氾濫範囲と浸水状況を把握し、必要な時、現地水害調査も実施する。このように事例検証データを蓄積し、洪水リスクの妥当性を明らかにする。 (2)アジアの氾濫源における洪水氾濫から被害まで一体的に変化予測:気候変動の再現性を表すMRI-AGCM3S(SRES A1B)による予測降雨およびCMIP5の複数モデルのRCP8.5およびRCP4.5実験にアジア主要河川を適用し、現在気候から将来気候(21世紀末)について三つのシナリオに基づいて、全球スケールの流量変化による最大洪水氾濫域の変化を推定する。さらに、氾濫域変化による危険に曝される影響人口(現在と未来変化率)や資産(都市化率、GDP成長率などExposure)、及びその洪水リスク変化も評価する。 (3)洪水リスク評価Web-GISシステム構築案の検討(アジアの主要河川を中心に):気候変動を考慮した三つのシナリオを採択した洪水リスク予測情報をオンラインで提供できる、ウェブGISシステム構築案を検討する。 (4)国際論文投稿・国際会議発表:IEEE、Natural Hazards、AGU(アメリカ地球物理学連合), AOGS(アジアオセアニア地球科学会)など世界へ研究成果を発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月旅費 4月旅費精算
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Research Products
(6 results)