2012 Fiscal Year Research-status Report
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24710219
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
明賀 史純 独立行政法人理化学研究所, 機能開発研究グループ, 研究員 (10342859)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 植物ゲノム / 葉緑体 / 光合成 / 強光ストレス / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
薄緑色の表現型を示すapg16変異体の原因遺伝子がコードするOHP1タンパク質の機能解析を目的として、野生型と変異体とでHPLCの溶出パターンを比較した。その結果、変異体ではクロロフィルa/b比が野生型と比べて30%程度低下していたことから、クロロフィルa/b結合蛋白質であるアンテナ蛋白質(LHC)に比べてクロロフィルaが結合する光化学系コアアンテナ蛋白質が減少していることが推測された。これを裏付けるように、変異体のチラコイド膜タンパク質の組成解析をBlue-Native PAGE を一次元目、SDSPAGE を二次元目にした二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて行ったところ、ohp1変異体では光化学系II(PSII)のモノマーとPSIIスーパーコンプレックスの蓄積量が著しく減少していることが明らかとなった。この結果は上記のHPLCによる色素分析結果と一致しており、変異体ではPSIIのコアタンパク質が欠損していると考えられた。そこでイムノブロット法で変異体に含まれる光化学系のコア蛋白質PSI, PSIIと アンテナ蛋白質LHCI, LHCIIとの増減を調べた。変異体では野生型と比較して同量のチラコイド膜に含まれるLHCIおよびLHCIIの蛋白質量は変わらないかむしろ増加していたが、PSIコア蛋白質は微減、PSIIコア蛋白質はほとんど存在しないことが分かった。本研究によりOHP1がPSIIコア蛋白質複合体形成に必須なタンパク質であることを分子レベルで明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書で記載した年度計画に則り、下記の実験を進めることができた。野生型と変異体とでのHPLCの溶出パターンを比較し、次に2次元クロロフィル蛍光測定装置により変異体の光合成の諸パラメータを測定した。野生型と変異体とのチラコイド膜を抽出し、光合成電子伝達に働く様々な蛋白質の蓄積量の比較実験を計画通りに遂行した。各種の形質転換体の作成と選抜を速やかに進め、導入遺伝子のホモライン化と発現の確認等を行い、形質転換体ラインを確立した。これには、変異体にOhp1遺伝子を導入した相補性試験のための形質転換体、遺伝子の発現を向上させた高発現体、プロモーターとGUS/LUCとの融合コンストラクトを導入した植物体、FLAG, HA、cMycタグの融合タンパク質を発現させた植物体の形質転換体、が含まれる。これらの形質転換体ラインは来年度のOHP1蛋白質の機能解析に用いる予定である。合成ペプチドを用いたOHP1蛋白質のポリクローナル抗体は本研究では作成しなかったが、共同研究先が所有してものを譲渡していただいた。しかしこの抗体は力価も低くOHP1特異抗体として機能しないことが分かった。そこでOHP1特異抗体の作成を諦め、タグ抗体を用いてOHP1蛋白質の機能解析を進めることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果からOHP1はPSIIコア蛋白質のアッセンブリーに重要であることが示された。今年度はOHP1のPSIIコア蛋白質の集合への役割を明らかにするために研究を進める。まずOHP1のチラコイド膜上での局在を明らかにするためにHAとcMycタグ融合タンパク質を発現させた形質転換体からチラコイド膜を抽出する。2次元気泳動(BN/SDS-PAGE)を行い、タグ抗体を用いたイムノブロット法でOHP1が光合成電子伝達系IあるいはIIのどちらに局在するのかを調べる。OHP1と同じLHCモチーフを1つだけ持つOHP2はショ糖密度勾配遠心法を用いた解析により光合成電子伝達系Iに局在するという報告がある。このためOHP1とOHP2との局在の違いの有無は重要な知見である。次にOHP1との相互作用因子を単離することを試みる。FLAG, HA, cMycなどのタグ融合OHP1タンパク質を発現する形質転換体を用いてタグ抗体でアフィニティー精製後、質量分析装置でOHP1の相互作用分子を明らかにする。またOHP1と質量分析で得られたタンパク質との相互作用の確認を試験管内および細胞内(酵母split ubiquitin アッセイや植物細胞内での共免疫沈降、BiFCアッセイなど)で行う。これによりOHP1の複合体形成の有無、PSIIコア蛋白質集合体の維持への役割を明らかにすることが出来ると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度にOHP1の特異抗体を作製する予定であったが、共同研究先から譲渡していただいたOHP1特異抗体の活性等を検証していたために次年度への繰越額(151,808円)が生じた。繰越金とH25年度分を合わせた研究費は、OHP1蛋白質の機能解析に必要な土やプレート培地といった植物育成用物品、DNA・RNA・蛋白質抽出試薬、電気泳動用試薬、RNAブロットやqRT-PCR用試薬・イムノブロット用試薬、酵母two-hybrid試薬、組換え蛋白質の精製に必要なアフィニティーカラム、発現ベクター、GUS染色試薬、タグラインの種子代、パーティクルガン用試薬、などの多数の消耗品の購入に充てる。その他経費は英文校閲費用や論文の投稿料に必要である。
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Research Products
(8 results)