2012 Fiscal Year Research-status Report
家族性IgA腎症で例示されるエクソーム解析による原因遺伝子同定プロトコールの確立
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24710223
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
細道 一善 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 助教 (50420948)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 疾患関連遺伝子 |
Research Abstract |
本研究課題は、家族性IgA腎症を対象とし、全エクソンシーケンスによる疾患原因変異の同定、疾患発症機序の解明、ならびにこれら一連の原因遺伝子同定から情報解析技術を駆使したプロトコールを確立することを目指している。これまでに家族性IgA腎症罹患者4名を含む1家系の全エクソンシーケンスによってIgAのトランスサイトーシスに関わり、腎臓で発現するEEA1に原因候補となる変異を同定した。この変異(rs144833802)はIgA腎症孤発例228名のうち高血中IgA患者1名に認められた。よって同定した変異は極めてRareな変異であり、ごく一部のIgA腎症のみを説明することが示唆された一方で、血中のIgA濃度と関連する変異によりIgA腎症発症に至る可能性も考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家族性IgA腎症1家系における全エクソンシーケンスを実施したこと、疾患の原因候補変異を同定したこと、ならびに候補変異の一般集団における頻度の調査から疾患原因候補変異についての評価が完了していることから、本研究課題の目的である、”一連の原因遺伝子同定から情報解析技術を駆使したプロトコールを確立する” という内容の達成度は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに家族性IgA腎症罹患者4名を含む1家系の全エクソンシーケンスによって原因候補となる変異を同定した。同定した変異は極めてRareな変異であり、ごく一部のIgA腎症のみを説明することが示唆された。このような事例は今後、別の疾患における全エクソンシーケンスでも起こりうることであり、本研究課題の目的である、”一連の原因遺伝子同定から情報解析技術を駆使したプロトコールを確立する” という内容の遂行の為には、家系ごとに原因遺伝子が異なる、すなわちLocus Heterogeneityの問題を解決する必要がある。解決する戦略の一つとして孤発例30サンプルの全エクソンシーケンスを進めている。一方でIgA腎症と関連するpIgRの多型がIgAのトランスサイトーシスを低下させることが報告され、トランスサイトーシスの低下が血中のIgAに影響する可能性が示唆された。IgAの分泌量は多量であるが、代謝速度などの特殊性が関係している可能性があり、IgA腎症の中でも血中IgA濃度の高い患者群によりIgAのトランスサイトーシスに注目した解析を進める戦略がIgA腎症とIgA濃度の関連を理解するのに有効であると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行するにあたり、設備備品については申請者の所属機関に現有設備として、すでに保有しているので、研究経費は消耗品、旅費、印刷に用いる。消耗品は、シークエンシングに必要な試薬、PCRプライマー、プラスチック器具の購入に充当する。次世代シーケンサーで全エクソン塩基配列を決定するための1サンプルあたりの単価は約12万円であり、20サンプルを処理するために、合計240万円が必要である。この単価は受注業者と比べて安価であり妥当な金額であると考える。国内旅費と国外旅費は研究成果発表や研究打ち合わせに充当する。印刷費は、研究成果発表費用に充当する。
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