2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24710228
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
津留 三良 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (80594506)
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Keywords | 一細胞観察 / 遺伝子発現の確率性 / マイクロ流路 |
Research Abstract |
遺伝子の転写や翻訳などの生化学反応は、熱ゆらぎによって確率的に進行することが知られている。その結果、全く同じ遺伝情報を持つ姉妹細胞間でも転写量・翻訳量が異なり、多様な性質や機能が生じている。近年の研究から、生物はこの分散する性質を巧みに調節し、様々な周期で変動する環境へも迅速に適応していると考えられており、その検証実験が求められている。しかしながら、従来の細胞培養技術では、環境となる培地の交換速度に制限があるとともに、一細胞の時系列観測が困難であった。そこで本研究では、顕微鏡下でリアルタイムに観測可能で、交換速度が早い微細な培養装置を開発し、この問題点の克服を目的とした。 H24年度は、微細な集積回路の開発・製造に用いられるフォトリソグラフィ技術を用いて、高速な培地交換が可能なpL(ピコリットル)スケールの培養装置を開発した。この培養装置は、細胞をトラップするための小部屋と、培地成分濃度を様々な周波数で供給する発振流路から構成される。培地中に混ぜた蛍光色素や蛍光ビーズを用いて、小部屋へ供給・排出される蛍光強度から交換速度を計測した。その結果、当初目標とした交換時間の半分以下である十秒程度で培地交換が可能な微細な培養装置を完成させた。 H25年度は、微細な培養装置を用いて大腸菌を培養・観察した。大腸菌の染色体上に緑色蛍光タンパク質と赤色蛍光タンパク質をコードする遺伝子をそれぞれ組み込み、微細培養装置で培養した。その結果、細胞ごとに蛍光色・蛍光強度が異なり、個々の蛍光タンパク質の合成量に大きな確率性があることが分かった。 本研究の結果、高速な培地交換可能な微小培養装置を作成することによって、常に新鮮な培地に置換され、定常環境実現することができた。さらに、環境で蛍光タンパク質の合成量を調べた結果、時々刻々と変化し、細胞ごとに多様性が現れることが確認できた。
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Research Products
(4 results)