2012 Fiscal Year Research-status Report
真菌類における二次代謝産物を多く産生するテンプレート培養条件の設計
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24710234
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
梅村 舞子 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (00552259)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 二次代謝経路 / 大規模遺伝子情報 / 真菌類 / 代謝パターン / 培養条件 |
Research Abstract |
真菌類が産生する二次代謝物質は構造的に多岐にわたり、多様な生理活性を持つことで知られる。ペニシリンやシクロスポリンを始めとして、薬剤として有効なものも多い。代表的な生合成経路として、ポリケチド、非リボソームペプチド、テルペノイドの系統に分かれるが、物質によって生産する培養条件が大きく異なり、また生産性も安定しないことが多い。したがって、望む二次代謝物質の産生に適した培養系をデザインすることは研究上意義が高いが、これまでの多くの研究にもかかわらず、総合的な知見は現在のところほとんど存在せず、研究者の経験と勘に任せられている部分が大きい。本研究では、糸状菌Aspergillus oryzaeについて様々な培養条件下で取得した190を超える大規模遺伝子発現(アレイ)情報を用いて、個々の二次代謝物質の産生に適した培養系をデザインすることを目的としている。 初年度である平成24年度は、大規模アレイ情報を74の代謝経路毎にまとめて、独自の手法を交えながらクラスター分析および相関分析を行った。その結果、A.oryzaeにおいて、二次代謝経路の種類に応じた遺伝子発現パターンが存在することを見出した。すなわち二次代謝経路は大きく炭化水素系とアミノ酸系に分かれ、一次代謝経路の中にも、それらと連動して動く一団のグループが各々存在する。これは、ある種類の二次代謝物質が産生される際に特徴的な遺伝子発現パターンが存在することを示唆するもので、生合成遺伝子の不明な二次代謝物質の産生を遺伝子発現情報から判断することにつながる、重要な知見である。さらに、二次代謝経路の各グループは、飢餓状態や低窒素といったそれぞれ特徴的な培養条件の下で発現することも明らかになった。これにより、二次代謝物質を高生産させる培養条件を、種類に応じてデザインできる可能性を裏付けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二次代謝経路は発現パターンから少数のグループに分かれること、およびそれぞれに特徴的な培養条件があることを、大規模アレイデータ解析から明らかにすることで、本研究の目的である、二次代謝物質の種類に応じた培養系のデザインに向けた理論的基礎データを導出することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
大規模情報解析から明らかになった二次代謝経路グループの大きな2つについて、特徴的な培養条件を組み合わせて5つ程度の培養条件をデザインする。各々の培養条件を用いて、A.oryzaeと、その近縁菌であり二次代謝物質産生能が旺盛なAspergillus flavusを培養し、DNAマイクロアレイ実験を行なって、その全遺伝子発現情報を取得する。また、LC-MS解析によって代謝プロファイルを取得する。得られた網羅的な遺伝子発現情報および代謝物情報から、前年度に導出した理論結果を実証する。研究成果は、大規模情報解析から得られた知見を中心にまとめて、誌上発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実証実験であるDNAマイクロアレイ実験を行うのに必要な試薬類を購入する(150千円)。大規模データ解析や代謝プロファイルの取得および抽出等に関する最先端の情報収集を行うため、学会に参加する(350千円)。誌上発表を行うにあたり、英文校閲費(60千円)および投稿費(40千円)の使用が見込まれる。
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