2012 Fiscal Year Research-status Report
天蚕由来生理活性ペプチドの細胞増殖抑制活性の分子基盤の解明と応用
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24710240
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
神谷 昌克 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (30399810)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞増殖抑制活性 / 機能性ペプチド / NMR / 相互作用解析 |
Research Abstract |
NMR解析には大量の同位体ラベル化試料が必要なため、NMR解析で用いる蛋白質フィブリラリンの大量調製法の検討を行った。高等生物由来のフィブリラリンは、N末端側にグリシン残基が多く存在しこの部分は特定の構造を取らないことが予想されるため、その部分を削除したコンストラクトを作製した。N末端領域を除き、精製用のHisタグおよびタグ切断のためのプロテアーゼ認識配列を付加した塩基配列を大腸菌発現用ベクターに組み込んだ。大腸菌発現系によるフィブリラリンの発現において発現量が少なく、一部が不溶性顆粒として沈殿してしまった。そのため培養および精製の条件検討を行った。培養温度を下げ、レアコドンをカバーするロゼッタ株を用いることで発現量の増加が確認された。また、切断プロテアーゼを変えることでHisタグ配列の分解が抑えられることがわかり、最終的にフィブリラリンのほとんどを可溶化状態で発現させることに成功した。また、フィブリラリンの配列中央部分を認識する抗体でウェスタンブロットを行ったところバンドを確認でき、フィブリラリンが発現および精製できていることがわかった。しかしながら、培養条件や発現コンストラクトの確立に当初の想定より時間がかかってしまい、残念ながらNMRおよびITCによる相互作用解析を行うまでには至らなかった。 そこで、コンピュータによる相互作用解析を検討した。ヒトフィブリラリンはすでに結晶構造が決定されているため、この結晶構造と上述した環状型ヤママリンの構造の相互作用解析をドッキングソフトウェアAutoDockを用いて行った。ドッキング計算の結果、環状型ヤママリンは有意にフィブリラリン中央のポケットに結合することが明らかになった。このポケットは基質結合部位であり、ヤママリンおよびその類似体はフィブリラリンへの基質の結合を阻害する可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
24年度の研究実施計画では、フィブリラリンの大量発現系を確立し、ヤママリンとの相互作用解析をITCおよびSPR等で行う予定であったが、現段階では発現および精製の系が確立できたところまでであり、当初の計画より遅れている。しかしながら、実験の代わりにコンピュータを用いたドッキングシミュレーションにより、フィブリラリン表面上の有力な相互作用部位が推定することができた。このことは、今後、解析を円滑に進める上で重要な情報となる。総合的に判断し、24年度の達成度をやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に確立したフィブリラリンの発現・精製法を用いてNMR解析のためのM9最小培地での試料調製法の組成を検討する。また、フィブリラリンとヤママリンの相互作用の様式を明らかにするためにSPRおよびITCを用いたヤママリン・フィブリラリンの相互作用解析を行う。NMRによるヤママリンとフィブリラリンの相互作用を解析するための基盤となるフィブリラリンのNMR信号の帰属を行う。15Nラベル化フィブリラリンの15N-HSQCを測定し、スペクトルのピーク同士の分離の程度をモニターしながら、解析可能なスペクトルを得るための試料および測定条件を検討する。CBCANHやCC(CO)NHなど主鎖および側鎖のピークを帰属するための一連の測定を行い、相互作用解析に必要なフィブリラリンの主鎖および側鎖に由来する原子の化学シフト情報を収集する。 15Nラベル化フィブリラリンに対してヤママリンを滴定し、フィブリラリンの15N-HSQCスペクトルのピークの化学シフトの変化から結合に関わる残基を同定し、ヤママリンのフィブリラリン結合部位を明らかにする。また、同位体フィルターNOESYを測定し、ヤママリンとフィブリラリンの分子間の原子間距離の情報を収集する。分子間の距離情報を用いて構造計算を行い、複合体状態でのヤママリンの構造を決定する。以上の解析からヤママリン・フィブリラリン複合体構造を決定する。 NMRによる解析結果を基に、ヤママリンおよびフィブリラリンのそれぞれにおいて結合に関与するアミノ酸残基に変異を導入し、上記と同様な相互作用解析を行うことで、複合体形成のより詳細な機構を明らかにする。これまでの実験結果から明らかになった知見を基に、より強く結合するヤママリンのデザインを検討および予備的な実験を行い、本研究後のさらなる研究の発展に向けた基盤を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の予算はフィブリラリンの試料調製のための試薬や消耗品が主である。試薬では、高額なNMR用同位体ラベル化試薬の購入を予定している。また、Hisタグの切断に用いるTEVプロテアーゼも試料が大量であるため予算に占める割合が大きくなると予想される。
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